12月15日、六本木ニコファーレにて第2回将棋電王戦記者発表会が開催され、日本将棋連盟理事・北島忠雄六段とドワンゴ川上会長、および三浦弘行八段をはじめとする5名のプロ棋士と6名のコンピュータ将棋開発者が登壇した。

2013年3月23日より開催される第2回「電王戦」はプロ棋士 VS コンピュータの団体戦

将棋電王戦は、公益社団法人日本将棋連盟、株式会社ドワンゴ、株式会社中央公論新社の主催で行われるプロ棋士とコンピュータ将棋による将棋棋戦。今年1月14日に第1回戦として米長邦雄永世棋聖 VS ボンクラーズ(コンピュータ)の対局が行われ、結果はボンクラーズが勝利して大きな話題となった。

今回発表となった第2回電王戦は、現役プロ棋士5名とコンピュータ将棋5チームによる団体戦。1日1組の対戦を行い、第1局から第5局までで3勝した側が勝利となる。対局場は東京将棋会館となり、全対局の模様はニコニコ生放送で中継されるほか、ニコニコ本社では大盤解説が行われる。

この日は、日本将棋連盟 理事 北島忠雄六段(中央)とドワンゴ川上会長(右)も登壇した

全対局の組み合わせと日程は以下の通り。

第1局(3/23):阿部光瑠 四段vs習甦(しゅうそ)(開発:竹内章/第22回世界コンピュータ将棋選手権5位)

第2局(3/30):佐藤慎一 四段vsponanza開発:山本一成/第22回世界コンピュータ将棋選手権4位)

第3局(4/6):船江恒平 五段vs ツツカナ開発:一丸貴則/第22回世界コンピュータ将棋選手権3位)

第4局(4/13):塚田泰明 九段vsPuella α開発:伊藤英紀/第22回世界コンピュータ将棋選手権2位)

第5局(4/20):三浦弘行 八段vs GPS将棋開発:田中哲朗・森脇大悟/第22回世界コンピュータ将棋選手権1位)

今回参戦する5人のプロ棋士

手番についてはこの日、川上会長がステージ上で振り駒を行った結果、第1局の先手をプロ棋士側がとり、以下1局ごとに手番を入れ替えていくことに決定した。

緊張の面持ちで振り駒を行うドワンゴ川上会長

そもそもなぜ今回、5対5の団体戦になったのか。川上会長によると、もともと電王戦が始まった当初は、1年に1戦ずつ計5回戦行われる予定であったが、第1回戦として行われた米長邦雄永世棋聖とボンクラーズの対局終了後、年々大きく進化するコンピュータ事情を考慮して、1年で5回対局することに急遽決まったのだという。

米長永世棋聖が敗れたことからもわかる通り、コンピュータ将棋の実力はプロを脅かすほどのレベルに達しており、これは以前では考えられなかったほどの進歩である。

米長永世棋聖もビデオメッセージで登場

前回の対局で米長永世棋聖は、初手6二玉という対コンピュータ用の奇手を採用したが、今回参加する5名のプロ棋士はそういった対コンピュータ用の特別な対策は現段階では考えていないと述べ、ビデオメッセージで応援コメントを寄せた羽生善治三冠と森内俊之名人の両名も「いつも通りの実力を発揮してほしい」と激励した。一方で、コンピュータ側にも個性豊かな面々がそろった。

6名の開発者が登壇した

第4戦で塚田九段と戦う「Puella α」は、前回米長永世棋聖に勝利したボンクラーズと同じ伊藤英紀氏が開発したソフトで、第22回世界コンピュータ将棋選手権2位という実力の持ち主。伊藤氏は「前回は初めてで不慣れなところもありましたが、今回は2回目ということで余裕があります。楽しむ気持ちで臨みたい」とコメントし、これに塚田九段は「(米長)会長が負けて悔しい思いをしたので雪辱したいです」と応じた。

その「Puella α」を上回る結果を第22回世界コンピュータ将棋選手権で示したのが、最終戦となる第5局で登場するGPS将棋である。東京大学の端末室のマシン約670台を使うことで、1台だけを使用した場合に比べて約4手深く手を読むことができるようになったという。

開発チームを代表して登壇した田中哲朗氏は「圧倒的な計算力を生かしてプロ棋士と戦うのにふさわしい棋譜を残したい」と述べ、同じく登壇した森脇大悟氏は「マシンの台数が多いので、その分マシントラブルも多いです。(対局する)三浦八段に失礼がないよう無事一局を終えたいです」とコメントした。

GPS将棋に対する三浦弘行八段は、棋聖を獲得した経験を持つA級棋士(名人への挑戦権を争う10名のトップ棋士)の一人。ニコニコ生放送にも将棋解説などで出演し、ニコニコユーザーからは「みうみう」の愛称で親しまれている。

人気・実力を兼ね備えたトップ棋士、三浦八段

コンピュータとの対局を引き受けた理由について、三浦八段は「私が引き受けなくてもA級棋士の誰かがやらなければいけない。それなら今のうちにやっておこうという気持ちがありました」と述べ、「正直、GPS将棋とはやりたくなかったです(笑)。私がやる時点で(他のメンバーが)勝ち越してくれていると思いますので……」と笑いを交えながらコメントした。

質疑応答では、記者から「コンピュータ側は対局相手の棋士の棋譜を使って研究できるが、コンピュータには棋譜がなく研究しにくいため棋士にとってハンデとなる。最新バージョンでなくとも、ソフトを事前に棋士に提供する方がフェアではないか」という意見が飛び出し、これにドワンゴ川上氏は「(棋譜の研究以外にも)コンピュータの方が体力の消耗がないなど人間よりも有利な点があります。今後、コンピュータとの対局ではフェアになるようバランスをとるルールを作るべきかもしれません」と回答。ソフトを事前に提供するかどうかという問題に関しては、この場では結論は出なかったが、今後対局がスタートするまでに調整するとした。

ついに現役トップ棋士が参戦した電王戦。来春3月23日、戦いの火蓋が切って落とされる。