BCP(事業継続計画)の策定や大規模な被災を想定したシステムの迅速な復旧、データセンター/サーバールームの消費電力管理、TCO削減、グリーンIT対策……IT管理者にとって解決すべき課題は山積している。しかしながら、BCPやDR(ディザスタリカバリ)に欠かせないセキュアなリモートアクセスを実現しようとした場合、サーバーやネットワーク機器、仮想マシンなど、ITリソースが多様化した現在、そのための方法は複雑極まるのだ。

このようなIT管理者が抱える課題解決をサポートすべく、11月21日に『【ITセミナー】実践!ラリタン サーバールーム運用効率改善ソリューション - 市場動向と最新事例に学ぶ』が開催された。セミナーでは、サーバールームの運用効率改善ソリューションやセキュアなリモートアクセスについて、実際の導入事例を交えて紹介された。

複雑化するITリソースがセキュアなリモートアクセスの障壁に

ラリタン・ジャパン セールス本部 本部長の竹永光宏氏

最初の講演を行ったのは、ラリタン・ジャパン セールス本部の本部長、竹永光宏氏だ。同氏は「ラリタンの統合ソリューションとその市場動向」をテーマに、先述のようなIT管理者が抱える課題の解決をサポートするラリタンの統合管理ソリューションについて解説した。

竹永氏は、「震災以降、電力コストの増大リスクが生じるとともに、電力の需給関係がひっ迫する懸念も出てきた。一方、データセンターの電源環境は、クラウドや仮想化などITトレンドが新たな状況に進むなかで集約・高密度化が進んでおり、ラックの電源要求が高くなっている。その結果、データセンターの最適な管理・運用に向けて、IT機器に使われる電力の効率化を高めることが強く求められるようになった」と指摘した。

そこでラリタンが提唱するのが、データセンター内のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器をリモートで管理するアクセス統合管理ソリューションと、サーバーラックなどの電源環境を監視してその情報を分析することで電源利用の改善を図るパワーソリューションの活用である。

ラリタン・ジャパン セールスエンジニアの原田雄一郎氏

竹永氏の講演を受けて、ラリタン・ジャパンのセールスエンジニア、原田雄一郎氏がラリタンのアクセス統合管理ソリューションについて解説を行った。

「ITリソースまるごと統合管理 ~仮想サーバもネットワーク機器も」と題する講演の冒頭で原田氏は、「ブレードサーバーや仮想化基盤の普及でITリソースがより多様かつ複雑になった。2000年まではITリソースも今の半分も存在しなかったのではないか」と問いかけた。

このような状況のなか、データセンターにあるサーバーをはじめとするIT機器を適切に管理するためには、リモートアクセスするためのツールを使い分ける必要があるのである。特にトラブルが発生した場合には、サーバーやルーターのOSがフリーズしたり、ウイルスに感染したり、ネットワークポートの不具合で通信障害が生じたりと、リモートプロトコルによるアクセスは困難になる。また、専門のエンジニアを現地に派遣するとなると多大な時間のロスが発生してしまう。

そこで有効となるのが、各IT機器が提供するサービスを利用しない管理アクセスを実現するKVM-over-IPスイッチの活用である。

「KVM-over-IPスイッチは、デバイス自体のリソースを使用しないので、高負荷時やサービス障害発生時でもリモートで操作できる可能性が高い」(原田氏)

さらに、ラリタンのアクセス統合管理ソリューションを用いれば、複数のユーザーのアクセスをアクセスポリシーに従って一元管理することや、リモートプロトコルを介したアクセスの管理、ネットワーク機器に複数のユーザーがアクセスしてチャットしながら問題解決を図るといったことが可能となるのである。

原田氏は、実際にラリタンのアクセス統合管理ソリューションを導入して業務改善を実現した企業の事例を紹介した後に、「セキュアなリモートアクセス環境を構築することは、オペレーションの簡素化と人的なミスの抑止にもつながる。本格的なBCPのために欠かせない備えだと言えるだろう」と訴えて講演を締めくくった。

電力の「見える化」で運用コストが半減!

ラリタン・ジャパン パワービジネスデベロップメントマネジャー 松田慎也氏

続いては、ラリタン・ジャパン パワービジネスデベロップメントマネジャー 松田慎也氏が登壇し、「スマートラックソリューションと最新事例 ~ラック環境の『見える化』と『最適化』」と題するセッションを行った。

セッションでは、電力の「見える化」によって大幅な節電を達成したユーザー事例や、電力最適化へのベストプラクティスとして注目されている米国データセンターでの導入事例とともに、グリーンIT対策を見据えた電力使用の最適化に導くラリタンのスマートラックソリューションが紹介された。

松田氏は、「昨今データセンターが抱える問題は大きく変化している」と訴える。なぜならば、データセンターの規模が拡大するとともに密度が高まり、複雑化が進んでいるからである。IDCの調査によると、IT管理者が一番の問題として挙げるのが、IT機器にかかわる電力と設置スペース、空調についてなのである。

「まずは、自社のIT環境にどのような問題があるのかを把握することが重要だ」(松田氏)

こうした問題を知るためには、IT機器の電力使用量を可視化して把握する必要性がある。その後、電力コストの増大を防ぐとともに既存のデータセンターの能力を高めるための施策を打つのである。

「IT機器の消費電力は、電源を供給する末端の部分で計測するのが最も有効。様々な問題をよりシンプルにしてスマートに解決することを心がけたい」と松田氏は強調した。

そのために真価を発揮するのが、インテリジェントPDUをはじめとするラリタンのスマートラックソリューション群である。松田氏は、米国eBay (イーベイ)での導入事例を紹介。同社はサーバーごとの消費電力を把握することで、なんと運用コストを50%削減することができたのだという。国内でも三機工業がインテリジェントPDUなどを活用してIT機器とビル設備をスマートに制御することで電力使用量の大幅な削減を実現しているのだ。

松田氏は、「グリーンIT対策は継続して取り組むのが望ましい。ぜひスマートラックソリューションを役立てていただきたい」と主張してセッションを終了した。

インテリジェントPDUの採用でコンテナ型DCの遠隔監視・運用を実現

インターネットイニシアティブ(IIJ) サービスオペレーション本部 データセンターサービス部 事業企画課の川島英明氏

最後は、インターネットイニシアティブ(IIJ) サービスオペレーション本部 データセンターサービス部 事業企画課の川島英明氏が「IIJのクラウドデータセンターへの取り組み ~ファシリティをもっとインテリジェントに!」と題してユーザー側からの講演を行った。

IIJは2011年4月、島根県松江市に商用として国内初の外気冷却方式コンテナ型データセンター「松江データセンターパーク」を開設。ここで使われているのが同社が独自に企画、開発したコンテナユニットである「IZmo(イズモ)」である。IZmoはその高い外気冷却効率により、単体でのpPUE値の実績が年間平均で1.16と非常に優れた数値を示している。

また、IZmoは法的には建築物に該当しない。そのために増設などの際に建築基準法に基づく届け出や審査といった煩雑な手続きが不要で、迅速な展開が可能になるというメリットがある。ただし、建築物に該当しないことから、機器の障害など重大な事故発生時を除き、基本的に人が内部に入ることは禁じられている。そこで高度な遠隔管理・監視システムが必要となったことから、ラリタンのインテリジェントPDUの採用に至ったわけだ。

松江データセンターパークの持つ先進性と機能性は高く評価されており、2012年グッドデザイン賞のグッドデザインベスト100やグリーンITアワード2012の商務情報政策局長賞など、数々のアワードを受賞している。

「こうした評価をいただいたことで、我々の取り組みが間違ってはいなかったと実感できた」と川島氏は笑顔で語った。

IZmo内に人が立ち入らなくても運用ができるように、IIJでは独自に「IZmo管理システム」を開発。サーバーの遠隔操作と合わせて、ラリタン製のインテリジェントPDU「PX2」シリーズによりモジュール内の温度や設置機器の消費電力の監視、電源供給の制御が行えるようになっている。

川島氏は、ラリタン側の柔軟かつ迅速な対応についても評価した。IZmoはコンテナユニットであるため既存の製品の入力ケーブルだと長すぎて邪魔になるのだが、ラリタンに相談したところ専用仕様の製品を開発することで対応したのである。

「当社は今後、インテリジェントなファシリティを目指して通常のビル型データセンターでもIZmo管理システムを導入していく計画だ」と川島氏は力強く語り、セミナーの幕を閉じた。