既報の通り、Microchip Technologyは米国時間の11月13日に、「GestIC Technology」と呼ばれる新しいジェスチャー認識用のICを発表した。この11月13日というのは、丁度横浜で「ET2012」が開催された日でもあり、そんなわけでET2012におけるMicrochipのブースには、早速このジェスチャーICが展示されていた(Photo01)が、これとは別に、担当者であるAndreas Guete氏(Photo00)にもう少し細かい話を聞くことが出来たので、その内容をご紹介したい。

Photo00:Andreas Guete氏(Marketing Manager, Asia Pacific, HMID, Advanced Input Solutions)。元々はIDENT Technologyでアジア担当地区のSales Directorを務めており、MicrochipによるIDENT Technologyの買収に伴ってMicrochipに入社した

さて、このGestIC Technologyを搭載した「MGC3130」というコントローラは何をするか? というと、電極部から電界を発生させ、その電界の中を動く導電体(例えば人間の手)の動きを検出する、というものである(Photo02)。電界の及ぶ範囲は電極から最大15cm程度となっており、また電界が拡散する関係で、広範囲に及ぶとする(Photo03)。

Photo01:ET2012におけるMicrochipブース。手前に置かれているのが電極で、この上で操作を行うとそれが認識されて、上のモニターに結果が表示されるというもの

Photo02:この図では、ノートPCのキーボードの上に電界を展開し、ここの動きを検出するという仕組み。後述するように、すでに市販のノートPCに組み込んだ動作サンプルも存在する

Photo03:もちろん、これは電極の設け方次第である。後で話が出てくるが、まだ液晶パネルを電極にするのは難しいそうで、この実装はパネル周囲のべゼルに電極を設置することを想定していると思われる(もしくは液晶パネルの裏だろうが、それが可能かどうかは不明)

この方式、つまり電界を用いたシステムのメリットは、他の方式と比較して圧倒的に低消費電力な事である。ここで比較として想定しているのは、カメラを使って動き認識を行うというケースで、常にカメラで画像撮影を行いつつ、さらにその画像をCPUで処理するKinect的なジェスチャー認識と比較すると、そもそも稼動時の消費電力が最大90mWでしかなく、待機時には150μWまで消費電力が落ちるGestICは圧倒的に有利だ、としている(Photo04)。MGC3130の場合、一定期間動作しないと自動的に待機状態になり、ところがその状態でも動きを検出すると自動的に復帰して動きを取得できるようになっているので、単にMGC3130だけでなく、ホスト側も余分な監視を行う必要がなく、これも省電力に繋がるとしている(Photo05)。

Photo04:この消費電力は、例えばMicrochipが提供する静電容量式の近接接近センサであるMTCH101)とかと比較しても十分少ない

Photo05:これは実際にセンサを動かした際の消費電力を示したもの。茶色っぽいものがトータルの消費電力である。動きを検出すると急に消費電力が跳ね上がるが、動きがなくなると自然に待機モードに入っているのが判る