英国ヒースロー空港で最も立派な免税店フロアの1つは第3ターミナルにある。その理由は、「日本便の発着ターミナルであり、日本人はたくさん買い物をしてくれるから」(旅行業界関係者)。開設当時の話なので隔世の感もあるが、「海外旅行=ショッピング」という感覚は、さほど大きく変わっていないようにも思う。そのためというわけでもないだろうが、10月末に関西空港でオープンするLCC(格安航空)専用ターミナルも、ショッピング分野には力が入っている。だが、華やかな免税店フロアとは無縁の海外旅行を強いられている人々もいる。

ヒースロー空港第3ターミナル免税店フロア

免税品が買えない空港・ターミナル

「このターミナルの"欠点"は、免税品が買えないことだ」

この言葉は、テレビ局の取材で愛知県営名古屋空港のビジネスジェット専用ターミナル(ビジネス機ターミナル)を紹介したとき、プロデューサーが真っ先に述べた感想だが、鋭くポイントを突いている。ビジネスジェット(社用ジェット)というとラグジュアリーに聞こえるが、実態は企業関係者を休みなく働かせるための道具でしかない。即座に現場に直行できる機動性、フライト中も商談や会議ができる効率性。加えて、さらなる過密スケジュールを可能にする専用インフラが存在する。

ビジネスジェット専用空港および専用ターミナルは、ビジネスジェット利用者のためだけに、パスポートチェックや税関手続き、保安検査などをおこなう施設で、定期便を使っているライバルが保安検査の列に並んでいる間に、サッとジェット機に乗り込んで飛び立ち、仕事をする(させる)ために利用される。もちろん免税店などない。以下の写真は、ロンドンのビジネスジェット専用国際空港ファンボロー空港の動線だが、

  1. 空港ゲートで身元確認

  2. 自分の車でターミナルへ

  3. ターミナル脇を素通りして駐機場へ(国際フライトの場合も)

  4. 自分の車をジェット機に横付けし、乗り込んで世界各地へ出発

という、実にシンプルな流れになっている。

空港ゲートで身元確認

自分の車でターミナルへ

ターミナル脇を素通りして駐機場へ

駐機場。奥にターミナルが見えている

大量のビジネスジェットが並ぶファンボロー空港

この空港、出国時にはパスポート・チェックや保安検査も免除されるので、「ターミナルに立ち寄る客は、ごく少数」(空港運営会社TAGファンボローのブランドン・オレイリーCEO)。ターミナル内にあるのは待ち合わせに使われるラウンジ、商談などのための会議室、ジェット機メーカーがアフターサービスの拠点にしているオフィスなどで、ショッピング施設は皆無だ。なお、ターミナルからも自由に駐機場に出入りできる。

待ち合わせラウンジ。奥のドアからも自由に駐機場に出入りできる