心理学的には遠恋は「うまくいかない」

恋愛では、会えないと何かと不安が募るもの。遠距離恋愛は心理学的には「うまくいかない」と結論付けられる

好きな人と離ればなれになる。会えなくなることの寂しさ。浮気されないかといった不安……。

「遠距離恋愛」ってうまくいくのか、すごく不安になりますよね。ここでは、化粧心理学者の平松隆円さんに遠距離恋愛を心理学的アプローチで解説していただきます。

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結論からいえば、残念ながら遠距離恋愛はうまくいきません。それは、誰かを好きでい続ける気持ちと、その人と一緒にいることは、心理学的に深く関係しているからです。

心理学者のザイアスが、こんな実験をしました。会ったことがない人物の写真を10枚用意し、各2枚ずつ25回、10回、5回、2回、1回と実験協力者にみせます。その時間はわずか2秒です。すべてを見終わった後、その写真の人物に対する好意の程度を調べました。すると、目にした頻度が高ければ高いほど、よりその写真の人物に対する好意が高くなったのです。

これは、心理学では「接触理論」と呼ばれており、外見の良し悪しに関係なく、接触する頻度が高い人に対して好意を持つことを意味しています。つまり、通勤や通学の電車の中で、偶然いつも乗り合わせているだけでも、その人に対して好意を持ってしまうのです。

逆に言えば、顔を合わせる頻度が下がってしまえば、その人に対する好意を失ってしまいます。遠距離恋愛は、当然ながら一緒にいる時間が少なくなるため、どんなに好きでも、時間の経過とともに、その感情が弱まってしまうのです。

よくテレビドラマなどで、どんなに仲の良い夫婦でも、どちらかが単身赴任で離ればなれになってしまうと浮気をしてしまうという話があります。これは、心理学的には必然であり、仕方がないことなのです。

長続きさせるコツは?

では、少しでも遠距離恋愛をうまくいかせる良い方法はないのでしょうか。ザイアスの実験を思い出してみてください。このとき使われたのは、ただの写真でした。つまり、実際に目の前にいなくても、写真で顔を見るだけでも好意を維持することが可能であることを示唆しています。

電話しか連絡方法がなかった一昔前と異なり、今ではSkypeなどで相手の顔を見ながら話をすることが可能な時代になりました。一緒にいた頃に比べて、話をする時間もとりづらくなってしまうかも知れませんが、それでもないよりはマシ。電話やメールよりもビデオ通話などをうまく利用すれば、多少は遠距離恋愛もうまくいかせることができるかもしれません。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。大学では魅力をテーマに恋愛心理学も担当。 NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。