NTTドコモは11月16日、LTEの取り組みについて記者説明会を行った。同説明会では同社のLTEサービス「Xi」の展開状況と今後の開発の取り組みについて説明があった。また席の冒頭、一昨日発生した通信障害についても説明と謝罪が行われた。

通信障害を謝罪

説明会に登壇したNTTドコモ代表取締役副社長の岩崎文夫氏はまず、14日に発生した同社の通信障害について謝罪した。今回の事例は一時的にspモードメールが利用しづらい状況になったというもので、270万人に影響が出たと見られている。同社では現在、スマートフォンの利用拡大にともないサーバーを増設しているが、今回はそのサーバーを監視するためのネットワーク装置を増設した過程で障害が起こったという。

登壇し通信障害について説明と謝罪を行うNTTドコモ代表取締役副社長の岩崎氏

具体的には、監視制御系の設定を誤ったために、装置を結ぶLAN内でパケットがループ状態になり、パケットの輻輳(ふくそう)が発生。ネットワーク機器のひとつが利用不可能に陥ったことで、通信障害にまで発展したとのことだった。岩崎氏は「多くのお客様にご迷惑をおかけし、申し訳なく思っています」と謝罪。詳細な原因を究明するとともに、障害が起こらないようなチェック体勢をもう一度見直し、再発防止に努めていくと話した。

Xiのエリア拡大と高速化を訴求

ドコモのXiサービスについては、エリアの拡大とさらなる高速化を両輪に展開を進めていく方針だ。その先駆けとして、ドコモでは11月16日より、下りの最大速度を100Mbpsに高速化した。

今回の高速化には、2012年冬モデル全11機種が対応しているという。また、12年度内に販売を予定している端末では、国内最速となる下り最大112.5Mbpsが利用できる見込み。岩崎氏は「是非、新しい端末で速さをご体験いただければと思います」とアピールした。

ドコモでは、エリアの拡大とさらなる高速化を両輪にLTEのサービス展開を進めていく方針

1.5GHz帯を利用し100Mbpsを実現する高速通信サービスが16日から開始した

100Mbps/112.5Mbpsサービスの拡大イメージ(写真左)

現在FOMAで使用している2GHz帯の周波数についても順次、Xiへマイグレーション(移行)していく。既に都内の23区ではXiのトラフィックが1.8倍に増え、FOMAのトラフィックが0.8倍に減少する傾向が認められるという(2012年5月と11月の比較)。これはスマートフォンのトラフィック状況を考慮しながら進めていくとのことだ。

Xiが1.8倍に増え、FOMAが0.9倍に減少(写真左)。岩崎氏は「FOMA側から見ると、トラフィックの変曲点を迎えたと言える」と説明した

人口の多い都市には特に密度濃く基地局を設置し、Xiエリアを拡大していく。同社の調べでは、東京23区および政令指定都市における基地局数は他社の1.8倍にのぼるという。「人口が多いところではエリアの広さを確保するとともに、基地局の数を多くしなければ、スループット(単位時間あたりの処理能力)が向上しない」と岩崎氏は説明した。

他社との基地局数の比較表(写真右)。auではAndroid用の800MHz帯とiPhone用の2GHzの両方を記載している

トラフィックの高いエリアや電波の弱いエリアには大容量の6セクタ基地局を設置していく

LTE/3G対応リモート設置型基地局は小型軽量化に成功。また、小規模施設に設置できるフェムトセルと呼ばれる超小型基地局も新開発した

LTE-Advancedを紹介

続いて登壇した同社取締役常務執行役員の尾上誠蔵氏からは、今後の展開について説明があった。ドコモでは2011年夏モデル以降、一部の機種で3GエリアとLTEエリアの切り替えをシームレスに行える「高速ハンドオーバー機能」の提供を開始している。これが2012年冬モデル以降、全機種で利用できるようになるという。この機能は、基地局の切り替えにより端末に届かなかった一部のデータを、移動先の基地局で補完するというもの。例えばエリアの境界線上でストリーミング動画を視聴していても、通信が中断するというような不具合が発生せずに済む。

登壇する同社取締役常務執行役員の尾上氏(写真左)。高速ハンドオーバー機能により、ユーザはデータの連続性を保つことができる

3Gを探索するタイミングを低減することで、データ通信の時間を確保してスループットを向上する取り組みなども進めている(写真右)

ドコモでは、LTEを発展させたLTE-Advancedの開発を進めている。運用開始は2015年以降になる見込みだという。LTE-Advancedでは、下り最大速度が1Gbps~3Gbpsまで高速化される。従来のLTEサービスとも互換性があり、LTEエリア、LTE-Advancedエリアの両方でLTE端末、LTE-Advanced端末の両方が利用可能になるとのことだった。

2015年を目処に、LTE-Advancedの実現を目指している

ドコモではこれまで、4Gへのスムーズな進化を提唱し実現させてきた。今後は無線アクセスシステムなどの開発を目指していく

尾上氏は最後に「増えるトラフィックの問題、新たな要求条件にいかに対応していくかを詰めて、今後とも引き続き技術開発を進めていきたい」と話し、説明を結んだ。

(記事提供: AndroWire編集部)