3Dマップに勝負をかける?

今回の発表では、NokiaがMozillaとの戦略的提携を締結し、Mozillaが開発を進めるモバイルOS「Firefox OS」向けにモバイルWeb版「HERE Maps」を提供する計画も明らかにされた。同じ「HTML5」というキーワードで括れるためか、こちらも耳目を集めているようだが、Firefox OSそのものが地図・ロケーションサービスと密接な関係にあるわけではなく、どちらかといえば話題づくりの感がある。

むしろ注目すべきは、米earthmine社の買収を発表したことだろう。同社は高度な写真計測技術で知られ、路上から見たかのような3Dマップを安価かつ効率的に制作できる。Googleが展開する「Street View」との共通点も多いが、樹木や電柱といった写真に映る物体のひとつひとつに緯度・経度などの情報を付加できるなど、精緻な3Dマップデータを構築できる特徴を持つ。この技術が、HEREの3Dマップ制作に活用されるというのだ。

Nokiaが「3D」を次の地図・ロケーションサービスの柱に考えている証拠は、もうひとつある。それが「LiveSight」で、高精度な3Dマップをもとに構築した拡張現実サービスだ。この技術を利用した最初のアプリは、NokiaのWindows Phone端末「Lumia」向けに開発された「Nokia City Lens」で、デモムービーを見ればその興味深い機能が理解できるはず。カメラで撮影するように街中へレンズを向けると、マップデータにある施設や建造物の情報と照合され、さまざまなデータが端末に表示されるというしくみだ。

Nokiaが本腰を入れてきたことからも、今後のスマートフォンにおける地図・ロケーションサービスの戦略的ポジションが一層明白になった。現状では、世界規模でムラなく展開するGoogleがリードしているように映るが、「3D」という観点からはまた別の見方もできる。企業買収や合従連衡など、各社の動向に注目していきたい。

Windows Phone端末「Lumia」向けに開発された「Nokia City Lens」のデモムービー

iOS 6のリリース直後は対応しなかった「マップ」の3D表示も、東京や大阪では閲覧できるようになった