9月に東京都内で開催されたセミナー「BYOD時代の企業IT/ネットワーク戦略の鍵がここに!」の3つ目のセッションに登壇したのは、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門 担当課長の八田展幸氏だ。

「事例セッション ~リモート・アクセス・ソリューションと働き方改革への取り組みについて~」と題した講演において同氏は、BYODを積極的に導入し、働き方改革に取り組んでいるNTTコミュニケーションズの事例について、顧客提案事例など具体例を織り交ぜながら紹介を行った。

NTTコミュニケーションズが展開する「働き方改革」の狙いとは?

NTTコミュニケーションズがBYOD活用によって推進する「働き方改革」の目的は大きく3つある。

1つ目がモバイルワークの導入だ。営業担当者の隙間時間を利用して、会社の業務や顧客への提案に役立てようというわけだ。

2つ目は在宅勤務制度の拡大。同社では従来からある在宅勤務制度を2011年に改正して対象者を拡大。この制度を活用して家庭と仕事の両立に成功している男性社員などを社内広報で「イクメン」として紹介するなど、ワークスタイル革新に注力しているのである。

そして3つ目が、コスト削減だ。

NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門 担当課長 八田展幸氏

「直接的にはネットワークやデバイス費用の削減、間接的には残業時間の短縮、交通費の削減効果があるが、本質的な効果は社員の生産性の向上だ」と八田氏はBYODの効果について語った。

NTTコミュニケーションズでは、音声通話とデータアクセスの両方でBYODに対応しているのが特徴となっている。

音声通話については、SIPクライアントのソフトウェアフォンを利用して、業務専用に割り当てられた050の番号でも受発信できるようにした。050番号での基本料と通話料は会社が負担するという公私分計を実現しているのだ。

「ソフトフォンでの通話は時間や場所によって品質に若干の差が出るものの、業務にまったく支障がないレベルに達している」(八田氏)

データアクセスのBYODについては、社内で利用しているExchangeや決裁系システム、危機管理ポータルなどのアプリケーションにスマートフォンからアクセスできるようにした。アクセス時の認証にはクライアント証明書による端末認証とワンタイムパスワードを組み合わせた多要素認証で高いセキュリティを確保。さらに、セキュアブラウザを取り入れることで履歴やキャッシュを残さない。

「万一端末を紛失しても、情報の漏えいリスクがない」と八田氏。

また、一連の社内でのBYODへの取り組みを通じて八田氏は、BYOD活用の要点について次のように語った。

「インシデント発生の見える化や対処方法のルール化を施すのと合わせて、社員へのセキュリティ研修を盛んに行うことで、人とソリューションの両方でセキュリティを担保することが何よりも重要だと感じた。これからBYODが広がっていくためには、何と言ってもユーザーのセキュリティに対する不安を解消することが大切だろう。また、社員に対してBYODへのインセンティブを持たせることも効果的だ。通信料金を会社が一部負担することなども考えてみてもいいだろう」

MAGシリーズの高い拡張性と豊富な機能に期待

NTTコミュニケーションズがBYODを実現するためのリモートアクセス・ソリューションとして採用したのは、ジュニパーネットワークスのSSL VPN/NACアプライアンス「MAGシリーズ」と統合型マルチサービス・ネットワーク・クライアント「Junos Pulse」だ。

MAGシリーズとJunos Pulseの連携によって、管理やソフトウェア・アップデートの頻度を抑えるとともに、運用コストや設備投資の削減を実現したという。

「MAGシリーズはさまざまなアクセス手段をサポートしているので、将来的な拡張性にも優れている。さらに今後出て来るであろう新しい機能にも大いに期待している」と八田氏は強調した。

今後のリモートアクセス

NTTコミュニケーションズでは、自社のBYODの取り組みから得たノウハウを、同社が提供するセキュアリモートアクセスサービス「モバイルコネクト」にフィードバックしていく構えだ。

「当社のBYODソリューションへの引き合いはここに来て急速に増えている。お客様のBYODに対するニーズの高まりを実感している」(八田氏)

そして、八田氏は、同社のモバイルコネクトの顧客の事例をいくつか紹介した。そのうち大規模にBYODを導入したある企業では、当初BYODに申し込むユーザーが想定外に少ないという現象が起きたという。その理由を調査したところ、MDMを使ったWi-Fi基地局やアプリケーションの制限によって、私用時の不便さや私用端末への会社関与に抵抗を感じた社員が申込みに躊躇したことが原因の1つであった。

こうした教訓を受けて八田氏は、「ユーザー要望を受けて折角BYODを導入しても、会社がセキュリティを強化しすぎるとユーザー利用の拡大を阻害する場合もある。会社のセキュリティポリシーとそれを実現する機能のバランスが重要」と語った。

今後のリモートアクセスの展開について八田氏は、グローバル展開を挙げた。

「グローバルでリモートアクセスを提供できるよう努めていきたい。世界中にある弊社のデータセンターと連携してシームレスなリモートアクセス環境を構築し、お客様が世界中どこにいても、場所や時間を意識することなく快適でセキュアに利用できるサービスを目指していきたい」(八田氏)

最後に八田氏は、次のような意気込みを見せて講演を締めくくった。

「BYODのセキュリティー対策はこれからどんどん進化、発展していくだろう。また常に最新化を計る必要がある。だからこそ弊社のようなクラウド型サービスを採用し、スピーディーでタイムリーな対策を実施するのも選択肢の一つである」と纏めて講演を締めくくった。(八田氏)