出先でスマートフォンのバッテリがなくなったときの心細さは、誰しも経験があることと思う。日常生活においてスマートフォンが果たす役割は大きくなったが、それだけにバッテリがなくなったときの焦りも大きくなったわけだ。予備バッテリやモバイル充電器など、電池切れの対処方法はいくつか考えられる。しかしいずれも事前の準備が必要で、突然のアクシデントに対応できるものではない。

話は変わるが、東日本大震災以降、いざというときのための準備をしよう、しようと思い続けている。思い続けているだけで、たいしたことはしていないのが実情である。震災から1年半が過ぎたそんなある日、編集部から防災ラジオライト「グラピカ JF-ERL1W」(フォースメディア製)なるものが届いた。手でハンドルを巻けば自家発電でスマホが充電できるという。うまく使えばスマホの電池切れ対策になり、かつ防災にも役立つかも知れない。そんな思いに胸をときめかせながら郵便の封を開けた。さて、その実力のほどは……。本稿でじっくり検証してみたい。

グラピカ JF-ERL1W。サイズは長さ240×直径61mm、重さは約235g。オープン価格で、実勢価格は5,980円前後

グラピカは、こんな製品

グラピカ JF-ERL1Wは、懐中電灯の形状をした製品。一点を照らし続けるLEDライト機能に加え、光が広範囲に広がるランタン機能も備える。ラジオ機能も備えており、AM / FMの両方が受信可能。緊急警報放送・緊急地震速報と連動できるのが最大の特長で、放送信号を受信するとラジオとライトが自動で起動する。地震がグラっときたら、ライトがピカッと光る。グラピカとは、つまり、そういうことらしい。  

製品に同梱される内容物は本体、ACアダプタ、USB充電Yケーブル、FOMA・SoftBank 3G充電アダプタ、au CDMA/WIN充電アダプタなど

LEDライトとランタンが光る様子。緊急警報放送・緊急地震速報の放送信号を受信すると、ラジオとライトが自動で起動する

本体には1,000mAhのリチウムイオン充電池を内蔵する。ACアダプタでも手回しでも充電可能

実用最大出力は0.5W。側面に「携帯充電用 DC OUT 5.0V」のUSB出力端子を備える(写真左)

手回し充電してみた!! が……

実際に手回しで充電してみた。説明書には「ハンドルは一定の速度(2.5~3回/秒)で回すように」と注意書きがある。結構な速さが必要なようだ。グラピカの充電池を使いきってから、休み休みでトータル20分ほど手回し充電をしてみたところ、電池残量を示すアイコンが1/3の状態まで回復した。ここで手持ちのスマートフォン(電池容量1,250mAh)をつないだ。すると、最初の数分間は充電ができたものの、すぐに停止した。

スマートフォンを充電する様子。iPhone・Androidスマートフォンに給電する場合は、端末に付属のUSB充電ケーブルを使用する

なぜかしら、と思い説明書をよく読んでみると、グラピカ本体の充電が30%を切ると他の機器への充電ができなくなる場合があるという。これを先に読んでおくべきだった。しかし逆に考えれば、20分間の手回しで30%前後は蓄電できたと言えるのかも知れない。ちなみにハンドルはそれなりの手応えがあり、20分も回すと相応に腕が疲れる。電気をつくるというのは、大変な作業なのである。

次にACアダプタでグラピカを満充電にした状態から、スマートフォンを充電してみた。すると充電前には「11%」の値だったが、30分後に「28%」、さらに30分後には「41%」にまで回復。最終的に「52%」まで到達したところで、給電がストップした。もっとも、充電状況に関しては様々な条件で結果が変わってくる。本稿のデータはあくまで参考程度に考えてほしい。

使用してみて

実際に使用してみて感じたのは、スマートフォンを充電するための専用機器として持ち歩くには大きくてやや不便だということ。約235gと、重さもそこそこある。ラジオやライトに関してはスマートフォンの機能で事足りるわけで、単に充電したいだけならシンプルな「手回し充電器」を探した方が良いだろう。一方で、本製品を本来の目的である"防災対策"を兼ねて使う分には、安心感が得られそうだ。ラジオとライトが自動で起動するので、不測の事態にも慌てることがない。自分の居場所をアピールできる「サイレン機能」が搭載されているのも良心的。したがって、正しい使い方としては枕元に1本置き、会社のデスクにも1本用意しておき、地震や停電などに備える。そのようなことになると思う。蛇足ながらLEDライト、ランタン、ラジオ、充電機能はアウトドアでテント生活をする際などにも活躍してくれそうである。

防災対策として、枕元に1本あると安心

なにはともあれ、手で回せばいくらでも電気が蓄電できるというのは心強い。予備バッテリやモバイル充電器などは、たとえ事前に用意しておいても電池を使いきってしまえばそれで終わりだ。しかし本製品があれば、心にも余裕が生まれるだろう。もっともこの先、本製品が活躍するシーンはアウトドアだけであって欲しいものだが…。

(記事提供: AndroWire編集部)