タレントマネジメントのSaaSベンダーとして、ワールドワイドでトップシェアを誇る米SuccessFactors。設立から10年強という若い企業だが、すでに34言語、169カ国で事業を展開しており、グローバルで3500社/1500万人、国内でも300社近いユーザーを抱えている。現在も右肩上がりで事業規模を拡大中で、同社の勢いは昨年12月にSAPが買収に踏み切ったことからもご推察いただけるだろう。

本誌は、そのSuccessFactorsの日本法人にあたるサクセスファクターズジャパン新社長の佐々木聖治氏に、大幅拡張された同社の次世代コア人事システム「Employee Central」の特徴と併せて、同社の事業方針などを伺ったので、その模様を簡単にご紹介しよう。

SAPの後ろ盾を活かし、一気に事業拡大へ

サクセスファクターズジャパン 取締役社長に就任した佐々木聖治氏

「SAPによる買収は、当社にとって大きなチャンスだと思っています。今回の買収を機に国内での認知度が大きく上がりましたし、営業面や技術面での連携も進んでいます。"鉄は熱いうちに打て"と言いますが、当社のメンバーも、SAPの後ろ盾を得たこのタイミングこそ一気呵成に事業を加速させる局面だと認識しています。」

佐々木氏は、取材の冒頭、このように語り、事業拡大に向けた意気込みを示した。

SuccessFactorsの買収後、SAPでは5つ目の事業の柱として「クラウド」を掲げた。責任者には、SuccessFactorsの創設者でCEOでもあるLars Dalgaard氏が就任。「買収前のSuccessFactorsの従業員は1500人だったが、現在のクラウド事業は5000人規模の組織」(佐々木氏)にまで拡張し、SAPの次代を担う事業に位置付けられているという。

技術面でも連携は進んでいる。例えば、「SuccessFactorsの新給与計算システムは、エンジン部分がSAPからの技術提供」(佐々木氏) である。また、クラウドプラットフォームにもSAPのインメモリデータベース「HANA」が近々導入される予定になっているなど、機能と基盤の両面からSAP技術を活用した強化が図られている。

「よく言われるフレーズではありますが、ビジネスの基本要素である、『人』、『物』、『金』のうち、いまだに見える化が進んでいないのが『人』の部分です。日本の企業もいよいよこの部分への投資が活発化すると予測しています。国内で急速に注目度がアップしているタレントマネジメントシステム『SuccessFactors Business Execution スイート』が最優先ですが、そのほかにも社内SNS『Jam』、eラーニング環境『SuccessFactors Learning』、採用管理『SuccessFactors Recruiting』、コア人事システム『Employee Central』など、さまざまなサービスを提供し、お客様の要望に広く応えていく所存です」 (佐々木氏)

日本市場でも、住友化学、日本電気、楽天といった日本有数の大企業がSuccessFactorsを導入している。同社では、そうした導入企業の業務改善効果を紹介する事例セミナーも開催する予定という。

人事システムの統合もできるEmployee Central

SuccessFactorsのプロダクトの中でも、今回特に大幅に機能拡張されたのがコア人事システム「Employee Central」である。

Employee Centralは、職歴や業務適正などの人事データ管理機能に加えて、採用や昇進/昇給などにおける人事ワークフローを自動化する機能も搭載。給与、福利厚生、勤務時間管理などを提供する一般的な人事システムや、SuccessFactorsの本分とも言えるタレントマネジメントシステムと連携することも可能だ。

「実は、サクセスファクターズジャパンでは、『Employee Profile』と呼ばれる社員プロファイル機能も提供しています。こちらをご存知の方であれば、それにさまざまな機能を追加したサービスがEmployee Centralだとお考えいただければよいかもしれません。Employee Profileは、所属や連絡先、業績、スキルなどの情報を登録しておき、それを社内で広く共有するためのシステムですが、こちらは極端に言えば、一覧データとして見せるために情報を蓄積しているだけにすぎません。それに対してEmployee Centralでは、登録情報の更新履歴(変更箇所、時間)も残せるので、必要に応じて過去の情報を参照することもできます。もちろん、部署異動後の情報を有効日と合わせて登録しておくことも可能です。さらに、先に挙げたようなワークフロー機能や、他システムとの連携機能も提供しているため、人事周辺の業務はよりスムーズになるはずです」(佐々木氏)

他システムとの連携に関しては、SAPやOracleの一般的な人事アプリケーションにひととおり対応する。したがって、グローバル企業が各国で異なる人事アプリケーションをオンプレミスで利用しているような場合も、現地の運用を妨げることなく、タレントマネジメントに関する情報を集約できるようになる。また、グローバルでEmployee Centralを利用する場合も、国ごとに管理項目や表示項目、データ形式、評価指標を個別に設定することが可能なため、細かい運用については現地法人の意向を尊重しつつ、本社で一括して人材を把握することができるという。

「もちろん、すべての国でEmployee Centralを導入してもらうほうが、管理も簡単ですし、各種の機能を最大限に活かしてもらえると思います。しかし、例えば企業を買収した場合などにはそうもいかないでしょうから、柔軟に対応できる仕組みを整えています。異なる人事システムの情報をまとめて確認できることで、業務効率は大きく変わるはずです」(佐々木氏)