トマト食品が育てた「夢咲トマト」

日本一高い山・富士山、そして日本一深い海・駿河湾を有す静岡県は、高品質の農水産物を生産する「食材の王国」。2010年には、数ある農水産物の中から、県外、そして海外に誇れる商品を県独自の基準に基づいて「しずおか食セレクション」として認定するという試みがスタートした。

知られざる46の名品を「食セレ」に認定

この試みにより、2010年に20商品、2011年に26商品が認定され、合わせて46商品が同セレクションに名前を連ねている。お茶はもちろん、伊豆で有名なわさびやキンメダイ、とろけるような甘さのクラウンメロンまである。さらには、渋柿なのに糖度16度以上という「するがの柿」。また、トマト職人がつくる「夢咲トマト・大玉」など知られざる名品もたくさんだ。

そんな「食セレ」の中から、意外な食材をご紹介しよう。すし好きなら、きっと見たことがあるであろう、細いネギ=芽ねぎの握りだ。東京でのシェアは7~8割なので、東京のすし店でなら、かなりの確率で、静岡県の「京丸園」の「姫ねぎ」に出合える。某元首相の奥さまが、すしの最後のしめに必ず食べるという逸話のある―品である。

姫ねぎの握り寿司。健康的で見た目も美しい

  芽ねぎそのものは、以前から存在していた。しかし、土耕栽培のため生産が不安定で、味に多少のバラつきがあったという。そこで、三つ葉などの水耕栽培を行っていた京丸園の鈴木厚志社長が、あるすし屋の大将から「お前、農家なら、芽ねぎを作ってみろ」と言われたこときっかけに、水耕栽培に挑戦した。

挑戦に挑戦を重ねた、京丸園の鈴木厚志社長

全国一の日照時間と恵まれた土地が名品を育てる

「畑を見て食材を選ぶ」という足立さん

当時を思い返して鈴木さんが語ってくれたことには、栽培が安定するまでに2年かかったそう。「試行錯誤の末、大将が『これ、いいぞ』って言ってくれた時から、市場で売れ始めたんです。天竜川の豊富な伏流水と日照時間に恵まれたこの土地だからこそ、うまくいったのでしょう」と鈴木さん。姫ねぎは、ステーキや肉との相性も抜群。ぜひ賞味してほしい。

さらに今静岡県では、県産の食材を活用し、県の農林水産業や食文化の振興に貢献している料理人や菓子職人を「ふじのくに食の都づくり仕事人」として表彰している。その一人で、「レストランハーモニー」のオーナーシェフである足立久幸さんが、静岡の食材の魅力を語ってくれた。

「食材は畑を見て選ぶんです。生産者の個性が野菜に出るから。静岡は恵まれた気候と地形から、少数とはいえ170以上の多品目が作られている。いろんな食材をどんどん使えるんですよ」。これから冬にかけては、エビイモを使ってつくるコロッケがオススメらしい。

足立さんイチオシのエビイモコロッケ

「しずおか食セレクション」の勢いはとどまるところを知らず、2012年度はさらに30商品追加され、100商品超えを目指しているという。静岡は温暖で冬に雪も積もらず、日照時間は全国で一番長い。生産者も常に新しい農林水産品の改良・開発に力を入れていて、それがおいしい食材が生まれる秘密のようだ。

本物のグルメなら、ぜひ、「しずおか食セレクション」のオール・アイテムをご賞味あれ!

●information
しずおか食セレクション
経済産業部振興局マーケティング推進課(担当:久松奨様)
静岡市葵区追手町9-6