【レポート】

Microsemi、次世代SoC FPGA「SmartFusion 2」を発表

米Microsemiは10月11日に都内で記者発表会を開催し、同社ではSoC FPGAという分類にあたる「SmartFusion」の新製品である「Smart Fusion 2」を発表した(Photo01)。

Photo01:Paul Ekas氏(Vice president of marketing for Microsemi's SoC product group)。昨年12月まではAlteraのDirector of product planningのポジションに居た方

Smart Fusion 2は何か? という話のためにまず大前提として同社の製品ラインアップを簡単に触れておく。Microsemiは元々AnalogのDiscrete製品を発売していた会社であるが、2010年10月にFlashベースのFPGAを製造・販売していたActelを買収、同社の製品をすべて入手することになった。現在はMicrosemiの中でSoC Product Groupという名称でこのFlashベースFPGAの提供を行っている。

さてこのSoC Group、中核の製品は「ProASIC 3」という製品である。このProASIC 3を小型・低電圧化して小規模にしたローエンド向け製品が「IGLOO」、ProASIC 3のFabricにProgrammable Analogを統合したのが「Fusion」、このFusionにCortex-M3を追加したのがSmartFusionとなっている。SmartFusionは2010年3月に発表されたもので、その後も製品ラインアップなどは追加されてきた。ただいずれの製品も、UMCの130nm Flash Processをベースとした製品であった。

これに続くものとして、UMCの65nm Flash Processを使った新しいプラットフォームを開発する、という話そのものはMicrosemiによるActelの買収直後の2010年11月に発表されており、今回はそのプラットフォームを初めて使った製品としてSmart Fusion 2が発表された形になっている。これに伴い、FPGA Fabric自身もProASIC 3のTileベースのものから、一般的な4入力LUTをベースとしたものに変わっている。またProcessをまったく入れ替えた結果として、既存のAnalog Fabricなどは今回すべて撤廃されており、代わりに新しい周辺回路や高速I/Fが搭載されることになった。そんなわけで、製品名はSmart Fusion 2と連続性を意識したものになっているし、FPGA Fabric+Cortex-M3という構成そのものも変わらないが、製品そのものとしてはまったく新しいものになっていると言える。

Photo02が、今回発表されたそのSmart Fusion 2の特長である。元々同社の製品は、絶対的なFPGA Fabricの性能そのものよりも、Flashベースによる不揮発性や省電力性、それと耐故障性やセキュリティといった部分がメリットであり、これをベースに航空宇宙分野で高いシェアを誇っている(Photo03,04)。したがってSmart Fusion 2も、性能の改善もさることながら、こうした分野での競争力をさらに高める方向での機能の強化が行われており、こちらを足がかりにシェアをさらに伸ばすことを考えている。

Photo02:このFabric Performanceに関しては具体的な数字は示されなかったが、同じIPを前世代のSmart Fusionにインプリメントした場合と比較して倍のパフォーマンスが出せることを確認したとしている

Photo03:ここでは軍用製品がメインだが、民生用で言えば衛星分野も同社の主要なターゲットであり、日本でも打ち上げロケットや衛星などで非常に多く利用されている。先日火星着陸に成功したNASAのキュリオシティの場合、打ち上げに利用したロケットの全ステージ(ともちろんキュリオシティ自身)に同社の製品が利用されていたとする

Photo04:例えばエアバスA380には同社の製品が1000以上搭載されているとする。なぜ同社の製品が選ばれるのか、の理由の1つは後述

まず同社がポイントに挙げているのがセキュリティである。同社の場合Flashベース、つまり電源投入時に外部のFlash MemoryからConfigurationを読み込む必要が無いという点で非常に有利である(Photo05・06)。これに加えてSmart Fusion 2ではDPA(Differential Power Analysis)防止を初めとする様々なセキュリティ機能を搭載することでシステムを保護できるとしている(Photo07,08)。

Photo05:FPGAの場合、これをどう守るかは常に問題となる。もちろんSRAMベースのFPGAでもこれらを守るための仕組みはあるのだが、民生機器レベルはともかく軍用あるいは民生用でもある種のシステムなどでは、これは難しい問題となる

Photo06:具体的なセキュリティリスク。データセキュリティに関しては、SRAMベースFPGAでは原理的に保護が難しい

Photo07:DPAとはDifferential Power Analysisの略で、キー検索を行う際の消費電力の変動から鍵を見つけ出すという技術。これを防止することでプルートフォース的なアタックに対抗できるようにするというもの

Photo08:こうした暗号化エンジンを搭載しているという点も重要で、こうした要件が必要なアプリケーションにとっては非常に便利な機能といえる

2つ目が高信頼性である。SRAMベースのFPGAの場合、いわゆる宇宙線などの影響によるデータ化けは常に起こりうる。もちろん、これはFlashベースでも発生はしうるのだが、してもすぐに修正できるのがFlashベースでのメリットであり、これによるエラーを考える必要が無い(Photo09)のがSmart Fusion 2の次のウリである。先程、航空宇宙分野で同社の製品が多用されるという話を書いたが、その理由がこちら(Photo10)である。他社の製品が海面レベルでも軒並み1000FIT程度、高度5000ftで5000~100000FITに達しており、それ以上の高度ではさらにエラー率が上がる。1FITは10億時間あたりの故障率だから、10000FITは10万時間あたり1回の故障というレベルで、「これは十分ではないか?」と思われるかもしれないが、例えばその機材が1000個あれば100時間に1回はどれか故障する計算になる。これはちょっと航空/軍事用途では利用できない。

Photo09:もちろんこれはFlashベースFPGA Fabricのみの機能である。そこでその他の回路(MPU、周辺回路、etc…)は、これと同等になるようなSEU耐性を当初から持たせて出荷されているということだ

Photo10:ちなみに「他社はみんな28nmに移行しているけど、28nmでのデータは?」と伺ったがデータを持っていないとの事

実は航空宇宙以外にも、最近は産業/医療など様々なところで安全規格が定められつつあり、こうした部分でも高い信頼性が求められるようになってきている(Photo11,12)。こうしたマーケットは同社にとってチャンスであり、これを積極的に狙ってゆくことでさらにシェアを増やしたい、というのが目算だそうである。

Photo11:主要な安全規格。ちなみに自動車向けのISO26262は「規格の一部は満たすが、一部はまだ満たして居ない」ということで、将来的には入ってゆく可能性はあるが、今のところはターゲットにして居ないとの事

Photo12:安全規格の例。ISO61508のSIL4とかだとFITが1未満でないとならず、今のところ同社の製品以外にはFPGAのソリューションがないことになる

3つ目が省電力である。Smart Fusion 2では競合製品(XilinxのSpartanやAlteraのCyclone)と比較してStatic Powerを1/100に削減したとしており、動作時には10mW、Flash*Freezeモードでは1mWに抑えたとしている(Photo13・14)。

Photo13:ちなみにDynamic Powerに関しては、内部の構成とか高速SerDesの利用具合などによって変わってくるとしながら、概ね競合製品と同等と説明している

Photo14:Flash*Freezeでは、すべてのレジスタとSRAMがFlash内に格納され、完全にPower Downとなるために、大幅に待機電力が下げられる。Flash*Freezeへの退避/復帰の時間はそれぞれ100μs以内とされており、これが十分高速な故に(この図にあるような)間欠動作時のトータルの消費電力は大幅に低く抑えられるという話

この3つの特長に加えて、Photo02にもあるようにPCI Express Gen2がそのまま利用できる5GbpsのSerDesを16個搭載し、DPA防止機能の内蔵、SRAM/NVRAMなどの搭載といった機能強化により、従来に比べてより幅広い分野に向けて製品を投入できる(Photo15)、というのが同社の方針である。ただ、FPGAのアーキテクチャそのものが変わっており、またSmart FusionにあったAnalog Fabricが全廃された関係で、既存のIPがそのまま動作するとは限らない。このため同社よりIPの提供を積極的に行ってゆくほか、デジタル電源とかモーター制御などのソリューションも今後提供してゆくという話であった(Photo16)。

Photo15:内部構成。DSPは16bit MACを最大240個搭載する

Photo16:以前のSmart Fusionの時もモーター制御の話はあったので、「例えば最近のDSP内蔵MCUとかと比較してどこに優位性があるのか?」と聞いたところ、「例えば6軸制御のロボットのモーター制御を低コストでやろうとしたら、MCUを複数入れるよりもSmart Fusion 2を1つで制御するほうが合理的」という返事が返ってきた

ちなみに最初に投入されるSmart Fusion 2のラインアップはPhoto17の通りとなっており、このうちM2S050のみ今月末までにエンジニアリングサンプルの出荷が開始されるという話であった。

Photo17:M2S050以外については、2013年第1四半期にES出荷を開始とのこと

発表内容はこの程度であるが、幾つか補足説明を。まずSmart Fusion 2は同社としては65nmプラットフォームを使う最初の製品であるが、Cortex-M3を内蔵しないProASIC3の後継などについては「ロードマップとしてはあるが、今はまだ公開できない」との事。

また現状、SoC FPGA部門における売上の3割は通信が占めているが、産業向けや医療向けではあまりシェアは無く、こうした部分に積極的にシェアを伸ばすことで、売上を拡大してゆきたいという話であった。またこの手の話になると自動車向けの話が必ず出てくるが、現状ではむしろDiscrete向けの方が好調で、日本においても顧客の方から指名の形で同社のDiscrete部品がEV向けに出たりするという状況もあるそうだ。そういうわけで、当面自動車向けに関してはDiscreteが中心ということになるそうだ。

Microsemiは現在日本にBranch Officeを置いている状況だが、日本における売上の半分がSoC FPGA、残りがDiscreteという状況で、昨年の売上はおおよそ4000万ドルだそうだ。ちなみにBranch Officeの人員はわずかに7名で、たった7名でこれだけの売上というのもすごいのだが、とは言え全社の昨年の売上の約10億ドルと比較するとあまり多いとは言えない状況で、なのでこれをせめて1割程度まではもってゆきたいそうで、そのためにはまずは人員の拡充を予定しているという話であった。



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