旅博2012の会場の様子

旅行代理店の団体である日本旅行業協会は、9月12日から15日まで、旅行需要喚起を目的としたイベント「JATA国際観光フォーラム・旅博2012」を東京ビッグサイトで開催した。各国の世界遺産や隠れた観光名所、現地の治安や言葉、習慣の紹介など、来場者に対して旅行の情報提供が行われた。およそ12万人が訪れ、過去最高の来場者数を記録したという。

会場は、北米、大洋州、アジア、中東、アフリカ、中南米、ヨーロッパなど、地方ごとにカテゴライズされ、各国の観光局がブースを出展した。

また、イベントではマレーシア民族舞踏ショーや、アルゼンチンタンゴ、キューバ音楽のショーやインドの舞踏など、さまざまなイベントが行われ、参加者を楽しませた。

業界向けには、苦情対応セミナーや、パンフレットの写真の撮り方、ツアー登山のトラブル例や、地域活性セミナーなどが開催され、招かれたそれぞれの分野の講師が勉強会を行った。

世界遺産であるタイのアユタヤ遺跡

タイ国政府観光庁は、ビーチリゾートやマリンスポーツ、国立公園やテーマパークなどをイベントで紹介。

タイのブース

タイ王国は、東南アジアの中心に位置し、首都をバンコクとする国。人口は6,000万人を超え、9割を超える国民が仏教徒といわれている。

イベントで紹介された都市のひとつであるアユタヤは、14世紀に創設され、400年ほど栄えたアユタヤ王朝の都。当時の遺跡が多く残っており、1991年には世界文化遺産に登録された。 首都バンコクから日帰りで行くことができるため、観光客が気軽に訪れることができる名所となっている。

また、アユタヤでは街中で気軽に象に乗ることができるという。乗る際には象使いが引率してくれるため、自分で指揮する必要がなく、観光客の間で人気があるとのこと。

アユタヤ遺跡

中世の趣が残るインドのジョードプル

インド政府観光局は、インドの祭りや民族衣装であるサリー、野生動物やレジャースポーツなどを紹介した。

インドのブース

インド共和国は、南アジアに位置する世界第2位の人口を誇る連邦共和国。ヒンドゥー語を公用語とし、日本との時差はマイナス3.5時間。

イベントで紹介された観光地のひとつであるジョードプルは、中世時代の特徴を大きく残す都市。機材や塩、ラクダや農作物が取引される貿易都市でもある。メヘランガール城塞(じょうさい)と呼ばれるインド最大級のとりでも残っており、一年を通して多くの観光客が訪れる。また、インドで神聖な生き物として扱われている牛が街中を闊歩(かっぽ)しており、現地の人々がエサを与え世話をするという。

ジョードプルのメヘランガール城塞

マカオの世界遺産 聖オーガスティン教会

マカオ観光局は、マカオ料理やホテル、世界遺産などを紹介していた。

マカオのブース

マカオは香港の西南西約60キロメートルに位置する都市。人口約56万人で、その約9割を中国人が占めるという。公用語は中国語とポルトガル語。日本との時差はおよそマイナス1時間。マカオでは、「出された料理は少し残さなければならない」という食事マナーが一般化しており、少量残すことによって、「十分な量の料理を出された」という意味を表すことができるという。観光客も、現地を訪れた際にはできるだけこのマナーを守るのが望ましいとのこと。

イベントで紹介された名所の一つである聖オーガスティン教会は、16世紀後半にスペイン人によって建設されたカトリックの教会。十字架を背負ったキリスト像を運ぶ宗教行事「パッソス聖体行列」が行われることで有名。

聖オーガスティン教会

モンゴル伝統の弦楽器「馬頭琴」

モンゴル旅行業協会は、モンゴルの観光名所を紹介する他、ブースでモンゴルの伝統的な弦楽器である馬頭琴を演奏するイベントを行った。

モンゴルのブースでは楽器が演奏されていた

馬頭琴は、モンゴルではモリンホールと呼ばれ、楽器の先端部分が馬の形に見えることが名前の由来であるという。日本では、「スーホの白い馬」の物語に出てくることで有名。

また、ブースにはモンゴルの家である「ゲル」が展示され、自由に中に入ることができた。 ゲルとは、モンゴル高原に住む遊牧民のための移動式の家のこと。羊の毛などでできたフェルトで屋根や壁が作られているという。寒さが厳しいときにはフェルトを二重にし、夏の暑い際には床の部分のフェルトをめくり、風を通すことができるという。

モンゴルのゲル

ラスベガスの夜景を写した壮大なパノラマ写真

ラスベガス観光局は、カジノやリゾートホテルなどを紹介した。

ラスベガスのブース

ラスベガスは、アメリカ合衆国ネバダ州にあるカジノで有名な都市。日本との時差は約マイナス17時間。砂漠気候であるため夏は非常に暑く、40℃を超える日も多いという。

また、カジノの他に、ホテルも人気の観光名所となっている。ラスベガスのホテルには変わったデザインのものが多く、エッフェル塔を再現したものや、巨大ピラミッドの形をしたホテル、水の都ベニスを再現しホテル内部に川が流れ、ゴンドラで移動するといったホテルがあるという。

イベントではラスベガスの夜景も紹介され、ブースにはパノラマ写真が飾られた。 近頃ではヘリコプターでの夜景観光も人気があり、多くの観光客が空からラスベガスの景色を楽しむという。

ラスベガスの夜景

街全体が世界遺産! スペインの都市トレド

スペイン政府観光局は、スペインの遺跡や建築物、グルメ情報や美術館を紹介した。

スペインのブース

スペイン王国は、ヨーロッパの南西部に位置する国で、マドリードを首都とする。日本の約1.3倍の国土を保有し、人口は約4,700万人。国民の約7割がカトリック教徒といわれている。食事は一日に5回あり、朝7時ごろに簡単な朝食、11時ごろに間食としてボカディージョ(スペインのサンドイッチ)を食べ、14時に昼食、5時ごろに間食としてワインと簡単なつまみを食べ、22時以降に夕食をとるという。

イベントで紹介された名所のひとつであるトレド大聖堂は、首都マドリードの南に位置するゴシック式の大聖堂。スペインのカトリックの総本山と呼ばれている寺院で、1986年には寺院を含む市街全域が世界遺産に登録された。

トレド大聖堂

ロシアの観光名所「デカブリスト広場」

ロシア政府観光局は、ロシアの経済や政治状況、伝統的な修道院や音楽団などの紹介を行った。

ロシアのブース

ロシア連邦は、ユーラシア大陸北部に位置し、モスクワを首都とする共和制の国家。世界最大の領土を持つ。日本との時差はマイナス約5時間で、最も難しい言語のひとつとされるロシア語を公用語としている。大聖堂や修道院など歴史のある建造物が多く残っており、数多くの観光客が例年訪れる。総菜パンの「ピロシキ」や肉と野菜を煮込んだスープ「ボルシチ」などのロシア料理が有名。

紹介された都市のひとつであるサンクトペテルブルグは、かつてのロシア帝国の首都であった都市。ソ連時代にはレニングラードの名で知られており、モスクワに次ぐロシア第二の都市である。真冬には最低気温がマイナス30℃を下回ることもあるという。

サンクトペテルブルグには「デカブリスト広場」と呼ばれる名所があり、デカブリストの乱を記念して作られた。デカブリストの乱とは、1825年に圧政を強いるロマノフ王朝に対して青年貴族らが蜂起した乱のこと。ロシアの新婚カップルが、記念撮影をする名所にもなっているという。

デカブリスト広場

トルコのカッパドキアで気球ツアーを楽しむ

トルコ政府観光局は、トルコの洞窟ホテルやろくろ体験、トルコ伝統のカーペットを紹介した。

トルコのブース

トルコ共和国は、アジアとヨーロッパにまたがる国で、首都はアンカラ。日本の約2倍の面積を有し、トルコ語を公用語としている。国民の大部分がイスラム教徒。日本との時差は約マイナス7時間。

トルコでは、人前で鼻をかむことが非常に失礼となるため、観光客は特に注意が必要。レストランなど公共の場にいる場合は、必ず席をはずし、トイレなどで静かにかむ必要があるという。 また、トルコでは「はい」と返事する場合は頭を下に振り、「いいえ」と返事する場合は頭を上に振る習慣があるという。どちらの場合も、小さく舌打ちをするのが一般的とされ、同局はトルコの慣習を事前に学ぶことを観光客に推奨している。

イベントで紹介された名所のひとつであるカッパドキアは、岩石地帯として有名である。その広さは約100キロ平方メートル。 洪水が起こった際に流れた水が柔らかい溶岩を削り、地層がむき出しになった結果、円すい型やキノコ型の奇岩が生成されるようになったという。1985年には、世界遺産に登録された。

現地では、カッパドキア気球ツアーなども開催され、低飛行で岩の形を眺めたり、300メートル上空まで飛び地平線のかなたを見ることなどもできる。

カッパドキア気球ツアー

高さ80メートルの氷河があるアラスカのグレイシャー・ベイ国立公園

アラスカ州政府観光局は、アラスカの大自然をイベントで紹介した。

アラスカのブース

アラスカ州は、アメリカ合衆国の最北にある国内最大の州。1867年に当時のロシア帝国から買収したもの。人口はおよそ70万人と言われ、ジュノー市を州都とする。また、人口密度最小の州でもあるという。国道が少なく、飛行機が重要な移動手段として用いられているため、50~60人に一人がパイロットのライセンスを持っているといわれる。

イベントで紹介されたのは、アラスカ州南部にあるグレイシャー・ベイ国立公園。湾には巨大な氷河があり、大きなものでは高さ80メートル、幅3キロメートルにもなるという。クマやクジラ、水鳥やシカといった野生生物が多く住んでいる。

グレイシャー・ベイ国立公園

高さ634メートルの電波塔「東京スカイツリー」

東武鉄道が筆頭株主となる東京スカイツリー株式会社はスカイツリーを模したイベントブースで、ツリーとその周辺の観光情報を紹介した。

東京スカイツリーは、5月22日にグラウンドオープンした電波塔。ツリー内部には、観光施設やオフィスビルが併設されている。天望デッキまでの40人乗りのエレベーターは、分速600メートルで、その速度は国内でトップ。万一エレベーターが停止した場合のために階段が設けられているが、天望回廊まではなんと2,523段もあるという(東京タワーは600段)。

スカイツリーのブース

ブースの中には、スカイツリーから眺めることができる東京のパノラマ写真が展示された。高さ634メートルを誇るタワーならではの絶景だ。

スカイツリーからの眺め

また、イベントでは東京スカイツリー周辺の下町マップが配られた。招き猫発祥とされる「今戸神社」や、なでれば病気が治るという「撫で牛」で有名な「牛嶋神社」、桜の名所である「隅田公園」や「アサヒビール本社」、浅草の「雷門」や、テニス場、屋外プールなどのある「錦糸公園」などが載っており、スカイツリーの後には周辺の観光を存分に楽しむことができる。