ウォークマンと言えば、ソニーという企業を象徴するプロダクトの1つ。ポータブルオーディオプレーヤーの主流がHDDやフラッシュメモリになって以来、一時期はソニー独自のATRAC3形式にこだわり続けた結果、市場における圧倒的な地位が揺らいだこともあったが、それも過去のこと。より一般的なフォーマットであるMP3やAACに対応するようになり、ポジションを回復し、さらに2011年に発表された「Z」シリーズは、ウォークマンとして初めてAndroid OSを採用したことでも話題を呼んだ。

「ウォークマンF NW-F805K」

着実に進化し続けているウォークマンに、10月20日、「Z」シリーズと同じくAndroid OSを採用した「F」シリーズが新たに加わる。

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「Z」シリーズのときもそうだったが、「F」シリーズの製品の発表時にソニーがしきりに訴えていたのは、「いい音」を実現する各種高音質化技術を搭載した「シリーズ史上最高音質」のウォークマンであるということ。しかしそれ以外にも、最近のスマートフォンのトレンドであるAndroid 4.0を採用した点をはじめ、注目すべきポイントは数多くある。今回、この「F」シリーズのうち、ドックスピーカーが付属する「NW-F805K」をお借りできたので、詳しくレビューしてみたい。

「NW-F805K」のパッケージ内容

小型・軽量で機能・性能面に不足なく、UIの扱いやすさも注目

「F」シリーズは、従来の「Z」シリーズと比べ、サイズがコンパクトになったのが最大の特徴だ。ディスプレイは約3.5型とやや小さいものの、そのぶん本体サイズも小型化。具体的には約W56.8×D8.9×H114.5mmとなっており、ディスプレイ解像度は480×800ドットで「Z」シリーズと変わらないことから、サイズ比ではより高精細になっている。重量は約100gで、156gほどあった「Z」シリーズと比較すると4割近い削減だ。手のひらにすっぽり収まり、女性でも持ちやすい軽量・コンパクトな筐体を実現していると言えるだろう。

底面

側面

上部

手にすっぽり収まるコンパクトさ

その他のハードウェア仕様は「Z」シリーズとよく似ている。チップセットは1GHzで動作するデュアルコアのTegra 2で、メモリは512MB。IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LAN、Bluetooth、FMラジオ、GPSを搭載するのも「Z」シリーズと同様だが、HDMIポートと電子コンパスは省略されている。特に地図アプリをよく使うユーザーにとっては、端末の向きに応じて地図が回転するヘディングアップをできないのがやや残念なところだ。

「iPhone 5」とサイズを比較したところ。縦横サイズは「NW-F805K」の方がかなり小さい

やや厚みはあるが、その差はわずかだ

SDカードなどの外部メモリは利用できず、すべてのデータは内蔵メモリに格納される。「NW-F805K」はメモリ容量が16GBとなっており、より大きな32GBの容量を搭載する「NW-F806K」もラインナップされている。「Z」シリーズにある64GBモデルは用意されないが、ボディカラーはブルー、ライトピンク、ホワイト、ビビットピンク、ブラックの5色が揃っている。

ノイズキャンセル機能オフ時の音楽再生時間は最大約25時間、ビデオ再生は最大5時間としており、音楽再生時間が最大20時間だった「Z」シリーズを大きく上回った。満充電時間も約3.5時間と大幅に短縮されている。

小型の外部スピーカーユニットが同梱されていることも、「NW-F805K」のポイントの1つだ。ウォークマンを上から差し込む形で接続でき、付属のACアダプターを使えば、モノラルながらも高出力かつ高品位のサウンドを楽しめる。ACアダプターを使わず、ウォークマン内蔵のバッテリーだけで動作させることも可能なので、電源を確保しにくい屋外でも気軽に使えるのだ。

付属スピーカー。ウォークマン内蔵バッテリーでも動作する使い勝手の良さもウリ

OSにはAndroid 4.0を採用。ベースはあくまでも「オーディオプレーヤー」ではあるが、ブラウザでWeb閲覧が行えるとともに、「Google Play Store」にある膨大なAndroidアプリのダウンロードも可能だ。

「NW-F805K」のホーム画面

「Google Play Store」にある膨大なアプリを活用できる

インタフェース自体はシンプルで、一見するとGoogleが提供する"素"のAndroid 4.0のように思えてしまうが、端末のロック解除時のアニメーションや効果音、ディスプレイ消灯時のテレビの電源がオフになったときのような演出など、同じソニーのスマートフォン「Xperia」シリーズのように、細かい部分でこだわりが窺える。 Android 4.0の標準機能のうち、オーディオプレーヤーとしては重要ではないものは、ホーム画面上ではあえて省かれており、取っつきやすくなっている。

Tegraチップセット搭載端末だけが楽しめるハイクオリティな3Dゲームに対応するのもうれしいところ

ロック解除のアニメーションや効果音も凝っている