働き過ぎが続くと心臓病を患う確率が最大で80%高くなる - こんな調査が米国疫学ジャーナル(American Journal of Epidemiology)より出された。この調査は長時間労働が健康に与える影響について、複数の研究結果をまとめたものというから、かなり精度の高いリサーチと言えそうだ。「一日8時間働いている」「毎日残業している」という人はぜひとも参考にされたい。

この調査結果は、フィンランドの国際安全衛生センターのMarianna Virtanen博士が中心となって作成し、同ジャーナルで発表したもの。長時間労働と健康との関係を調べた過去12種類の調査をまとめたもので、最も古いものは1958年にさかのぼるという。合計すると、米国、日本、スウェーデン、オランダなど6カ国から2万2000人以上が調査に参加したことになる。

それによると、長時間労働はストレスや血圧の変化、不規則・不健康な食生活などにつながり、健康に悪い影響を与える可能性があることがあらためてわかったという。

労働時間が長くなると必然的に余暇が少なくなるため、ストレスホルモンのコルチゾールの増加や運動不足なども加速し、これも心臓病の要因となる。このような悪循環から、急性心筋梗塞につながる冠動脈疾患など心臓病を患うリスクは約40%、最大で80%高くなると報告されている。

この調査を紹介したForbesの記事「Why Working More Than 8 Hours A Day Can Kill You(1日8時間以上働くと健康に有害、その理由は?)」では、1日11時間労働が心臓病のリスクを67%高めるという、2011年の英国の調査も合わせて紹介している。

労働時間が長い、残業は当たり前といわれる日本だが、厚生労働省は「原則として1日に8時間、1週間に40時間」を超えた労働を使用者が強いることを禁じている。

参考までに、国際機関の経済協力開発機構(OECD)の2011年のデータでは、日本は有給労働と無給労働(料理や買い物の家事など)に1日9時間を費やしていると報告されている。これはメキシコに次ぐ長さで、加盟国中で最も短いのはベルギーの7.1時間だった。

なお、日本の労働者の9時間の労働時間のうち、無給労働が占めるのは2時間44分なので、いわゆる"仕事"が該当する有給労働は7時間を切っていることになる。一方、厚生労働省の7月のデータ(「月間実労働時間及び出勤日数」)では、事業規模5人以上の企業・組織での月間総労働時間は149.9時間、これを出勤日数(19.4日)で割ると7.7時間となる。

OECDや厚生労働省のデータと実態については各自思うところがありそうだが、まずは自身のワークライフバランスを見直したい。