HTCがOneシリーズ以降、「ユーザビリティー」「使い易さ」を目指すのは、高いハードウェア開発力を備えているからだろう。過去を振り返ってみると、これまでにもHTCは多数の「名機」と呼べる製品を市場に送り出している。

中でも2010年に登場した「Desire HD」は、2012年の今現在でも日常利用なら十分なパフォーマンスを保っている。同製品は日本でもソフトバンクから「Desire HD 001HT」として発売された。Desire HDは当時としては大容量の768MB RAMを搭載。ディスプレイも4.3インチあり、同時期に発売された国産メーカー製品が2年後の現在、見劣りするスペックのであることを考えると、HTCのハードウェア設計技術は当時から十分優れていたと言えるのではないだろうか。

このDesire HDは一部の愛好者から「神機」と呼ばれるほど支持を受けており、海外ではカスタムROM(標準のROMや他機種のものをカスタマイズしたROM)が有志によって開発されている。昨年秋のハイスペック製品Sensation XE、コンパクトで使い勝手の良いAria(日本ではイー・モバイルからS31HTとして発売)といったヒット製品にAndroid4.0系のカスタムROMを入れて動かしているユーザーも多い。海外のスマートフォン開発者の大規模コミュニティサイト「xda-developers」などに多数の情報が出ているあたりにもHTC端末の人気の高さが現れている。なお、カスタムROMの利用はメーカーが保証するサポート範囲外であり、デバイスが動作不能になる可能性もあるので注意が必要だ。

さて国内に目を向けてみよう。日本発売の最新製品となる「HTC J(ISW13HT)」はグローバルモデルの「HTC One S」をベースにHTCジャパンとKDDIが日本市場向けに再開発した製品である。HTC Oneシリーズと同様に高画質と高音質に拘ったモデルで、製品名の「J」は「Japan」の略、つまり日本市場のために専売モデルとして開発されたものだ。

ワンセグ・おサイフ・赤外線という日本特有機能すべてをHTC端末として初めて搭載。一方ではグローバルのHTC Oneシリーズとデザインイメージが異なる製品でもある。そのため従来からのHTCのコアなファンからは発売前はあまり期待の声は聞かれなかったようだ。

だがHTC Jを触った瞬間、その先入観は良い意味で裏切られる。操作のレスポンスが良く、完成度の高い「Sense4.0」の使い勝手のよさもあって、日本人のニーズにあう端末としての完成度は大きく高まった。それだけではなく見逃せないのは付属のBeats by Dr. Dreのイヤホンだ。低音が強調され、従来の音楽プレイヤーや携帯電話に付属品するイヤホンとは全く異なるワンランク上のクオリティーの製品である。

国内専売のHTC Jだが、歴代のHTC端末のDNAが確実に引き継がれている

更に嬉しいことにHTC Jは2012年夏モデルとしては比較安価な価格設定でコストパフォーマンスも良く、その結果コアユーザーだけに留まらず一般ユーザーにも高く受け入れられている。auのスマートフォン販売ランキングでも、常にトップポジションに位置している。

このようにハードウェアやソフトウェアに魅力のあるHTC製品だが、「消耗品ではない、年が経っても飽きないデザインと機能性」を備えていることも人気の秘密ではないだろうか。1年、2年と時を経ても古さを感じさせない外見やユーザビリティーを与えてくれ、またファームウェアのアップグレードにも対応するなど、一度買うと所有しつづける喜びを持てる製品を次々に送り出している。HTC Oneシリーズ、HTC JにもそのDNAは引き継がれている。HTCの今後の展開に大きく期待したい。

(記事提供: AndroWire編集部)