エクサスケールの実現に向けたWGが日本で発足

「京」スパコンは2012年の9月末から正式運用に入り本格的な利用が始まる。また、米国でも6月に京を抜いてTop500の1位となったSequoiaやMila、そして近く稼働するBlue Waters、Stampedeなど10~20PFlops級のスパコンが続々と稼働に入るという状況である。

米国では、10PFlops級のハードウェアの技術にめどがついた2~3年前から、ExaFlops(1000PFlops)システムの検討が始められ、日本でも2010年ころから予備的な検討が始められている。

スパコンはTop500の順位で語られることが多いが、ベンチマークの性能自体にはあまり意味が無く、実際の研究や開発に使用され、より精度の高い天気予報やより効率の高い燃料電池の開発などの形で我々の生活を改善するのにフィードバックされなければ意味がない。

このため文部科学省は、2011年にアプリケーション作業部会とコンピュータアーキテクチャ・コンパイラ・システムソフトウェア作業部会というワーキンググループを作った。アプリケーション作業部会は2020年までに達成が期待されるスパコンを使う科学技術の発展を予想し、それに必要なスパコンの能力を検討する。また、アーキテクチャ作業部会は、このためのスパコンを作るためにはどのようなテクノロジ開発が必要かを検討する組織である。この2つのワーキンググループは2011年度末にサイエンスロードマップ技術ロードマップというホワイトペーパーを作成した。これらの文書は公開されており、ここに書かれたURLからダウンロードすることができる。

このサイエンスロードマップのとりまとめを行ったのが、東京工業大学の牧野淳一郎教授と理化学研究所AICSの富田浩文氏、技術ロードマップのとりまとめと両者の合同作業部会のとりまとめを行ったのが、東京大学の石川裕教授である。この石川教授と牧野教授が富士通のサイエンティフィックシステム研究会(SS研)において、これらの作業部会の検討結果の概要と今後のExaFlopsスパコンに向けての活動の状況について講演した。

SS研で講演する東大の石川教授(左)と同じくSS研で講演する東工大の牧野教授(右)

アプリケーション作業部会は、生命科学、物質科学、地震・津波、気象・気候、熱流体、核融合、構造解析、可視化・データ分析、宇宙研究、原子核物理、素粒子物理の各研究部門の研究者から2020年までに達成を期待される科学的成果と、それらの目標を達成に必要なスパコンの能力の検討を行った。その内容はサイエンスロードマップに詳しく書かれているので、興味のある方は参照して戴きたい。

そして、必要となるスパコンの能力としては、

  • ネットワークバンド幅、レイテンシ
  • メモリ容量、バンド幅、オンチップメモリ容量
  • ストレージ容量、速度

の情報が収集されている。