前回、家庭でできる節電方法として、最近注目されている「HEMS (Home Energy Management System : 家庭向けエネルギー管理システム)」を取りあげた。家庭での電力使用量を"見える化"するHEMSは、自分の行動とその電気使用量を見ることができ、節電のファーストステップとなるだろう。

経済産業省も、家庭におけるHEMS導入についての補助金制度を実施している。電機・通信会社やハウスメーカーなどからでているHEMS対象機器を導入した場合に、10万円までの補助金を交付するものだ。今回はその補助金対象のひとつである、NTT東日本が提供するHEMSサービス「フレッツ・ミルエネ」を導入しているご家族にその効果などを取材した。

がんばりすぎない節電で結果を出す

フレッツ・ミルエネ」は、導入しただけで節電効果があるわけではない。計測結果を参考に、ユーザー自身が努力や工夫をすることで変化が出てくるというものだ。トライアルユーザーの満足度は92%と非常に高いが、節電効果があったとするユーザーは68%。うまく活用できていないユーザーも少なくないようだ。

そこで、どのような取り組みをすれば効果が出るのか、実際のユーザーに聞いてみた。暑さと不自由さに耐えて歯を食いしばって節電に取り組んだ結果……ではなく、ちょっとした工夫と心構えでしっかりと効果を出した、誰にでも参考になる例だ。

2万円を超えることもあった電気代を最大3割カット!

東京23区内のマンションで暮らす宮本さん家族は「フレッツ・ミルエネ」のトライアルが開始された2011年7月から利用しているファーストユーザー。いち早く「フレッツ・ミルエネ」を知り、トライアルに応募したということから節電意識の非常に高い家庭を想像するが、実際はそうでもないという。

「以前は節電を意識したことがないのはもちろん、1ヵ月の電気代そのものをあまり把握していませんでした。節電を意識したきっかけは震災です。世の中全体で電気が足りないなら何かしなくては、と思っていた時に、たまたまモニター募集を知りました」と宮本さんは語る。

東京電力のでんき家計簿サービス画面。昨年と比較すると電気使用量が半分になった月もある

宮本さんのご家族は、ご自身と奥様、2歳の娘さんの3人家族。マッサージチェアなども所有してはいるが、特別に電気を大量に使うような暮らし方ではない。それでも、まったく気をつかわずに生活していたという以前は、1ヵ月の電気代が2万円を超えたこともあったという。

「節電なんて考えたことがなくて、夫は家中の電気をつけっぱなしにしていました」と奥様が言えば、宮本さんは「エアコンの設定などは妻の方がすごかったと思います。ちょっと肌寒いなと思いながら冷房の中にいるような生活にも疑問を持っていなかったですね」と返す。

「フレッツ・ミルエネ」の特性上、節電意識の低いユーザーは結果を出しづらい。しかし、宮本家では約3割の電気使用量削減が実現できたという。

「見えること」のわかりやすさが節電のヒントに

宮本家で主に取り組んでいる節電方法は「エアコン設定を少し高めにする」「見ていないテレビは小まめに消す」「待機電力に気をつける」という、ごく一般的なものだ。なぜこれだけで3割もの使用量削減ができたのかといえば、意識が変わるからだ。

「フレッツ・ミルエネ」の画面。時間別での表示や前月との日別比較なども表示できる

「フレッツ・ミルエネのおかげで、何を使ったらどれだけ変わるかというのが目に見えるようになりました。テレビってこんなに電気を使うのか、エアコンの設定温度1度でこんなに違うのか、というのがわかります。何をしたらいいかという目安になります」と宮本さんは語る。

特に「フレッツ・ミルエネ」の機能として気に入っているのは、現在の状況がほぼリアルタイムでわかるという部分だという。以前は電気料金の請求書を見てばくぜんとした使用量の多寡を感じる程度だったが、それが行動した後に電気使用量に反応が出ることで、節電への取り組みもしやすいようだ。

「我が家の場合、テレビをBGMのようにつけっぱなしにしていることをやめ、エアコンの設定温度を高めにし、生活家電の一部だけ待機電力をカットしました。給湯システムも使っていない時には小まめに切るようにしています」と宮本さん。

テレビをつけた直後の使用量がどれだけ増えたか、エアコンの設定温度を変えた時にどれだけ変化があったか、という実験を導入初期に行い、その結果をみて暮らし方を少しだけ切り替えることで結果を出している。

ブラインドで冷房効率を上げ、キッチン周りの待機電力をカット

昼間はブラインドを下ろして、室内温度の上昇を抑えている

実際に家で過ごすことの多い奥様は、細かい工夫をしている。たとえばリビングは2面が窓になった採光のよい作りだが、日中は光が入ることで温度も上がり、空調が効きづらくなる。そこで、基本的にはブラインドを下ろすことにしているという。

「以前のエアコンの設定は26~27度ぐらいでしたが、今は29度の弱が基本です。娘が一番暑いはずなので、娘の様子を気にしながら風量を強めるなどはしていますが、扇風機を併用していれば特に辛いことはないですね」と語る。日中は子供の習い事や遊びに合わせての外出も多いが、夜間などはできるだけ家族が集まって過ごすことで冷房のムダをなくしているという。

また、意外に効果的であるという待機電力のカットは、特にキッチン周りで取り組んでいる。これは食事の準備から食事中にかけての集中した時間でのみ使われる家電が多いところに目をつけた取り組みだ。

キッチン家電は集合タップ(丸囲み)で管理。設置場所や使用タイミングがまとまっている家電をこまめにオンオフしている

「キッチン家電は集合タップを利用して使用時以外は待機電力もカットしています。炊飯器の保温機能もあまり使わず、あまったご飯はすぐに冷凍です。これはだいぶ効果がありましたね。1日に5回くらいオフにしています」と語る。

集合タップに接続されているのは、電子レンジ、エスプレッソマシン、コーヒーメーカー、電気ケトル、炊飯器、トースターなど。食事時には使うが、それ以外には使わないものばかりだ。以前は就寝前にタイマーセットしていた炊飯器も、起きてから電気を入れるようになったという。

細かすぎる部分は気にせずできることから

テレビをBGMのように見るのはやめた一方で、輝度調整などをして視聴時の電力量を細かく減らすことまではしていない。パソコンもスリープ時にはそれほど電力を使用していないと判断し、基本的には未使用時はスリープにしている。炊飯器は朝食用のタイマーセットはやめたが、日中外出する時に夕食用のタイマーをセットすることもある。徹底的に節電の取り組みを行っているかといえば余裕が残っているようにも見えるが、これが宮本家にとってムリのない節電といえるのだろう。

家庭の使用電気量を"見える化"し、その中でちょっとした工夫や努力で節電に取り組む。厳しい制限や目標を課して取り組むこともできるだろうが、それでは逆にストレスになってしまい、"苦行"ともなってしまう。

「ランキングや目標設定は利用していますが、設定した目標を超えてしまうこともよくあります。家電ごとの使用量を調べる電源タップについては、導入初期に各家電の使用量をみるために利用していましたが、そこまで細かく把握しなくてよいのではとも思っています」と宮本さん。

「フレッツ・ミルエネ」の表示はおもにパソコン(Mac)とiPadで

「フレッツ・ミルエネ」の表示はパソコンとiPadで確認している。外出中にもまれに確認することはあるが、基本的にはそれほど頻繁にチェックしてはいないようだ。目標設定をオーバーした時の通知機能なども利用していないという。すでに生活の中に馴染んだ「フレッツ・ミルエネ」は、1日の利用状況をさっと確認し、生活を見直すためのツールとなっている。

「実は夏の電気料金はもっと節約できると思っていました。冬場はガス床暖房に頼っているので電気代はあまりかかっていないのですが、じゃあガス代はどうなっているのかという問題もありますよね」と宮本さんは語る。

節電に取り組んだことでガス代や水道代といったインフラ料金全体に目が向くようになったという宮本家では、今後インフラ全体の使用量をチェックできるシステムや、家電などを遠隔コントロールできる機能にも期待しているという。

「専用端末は使っていませんでしたが、ブラウジングなどもできると聞いて気になっています。私はiPadで見るので必要ありませんが、妻が使うのに便利かもしれませんね」と宮本さん。

自分の生活を見直し、ほんの少し気をつけるだけで大きな効果を出せる「フレッツ・ミルエネ」は、節電をしたいという意識はあるが何から取り組んでよいのかわからないという人にぴったりだろう。夏の電気料金請求で節電の必要性を強く感じた人や冬に向けて節電の準備を始めたいという人は、HEMS補助金を活用すれば、実質、消費税負担のみで導入できるこの時期に導入を検討してみてはいかがだろうか。

合わせて読んでほしい記事
【レポート】家庭の節電・省エネは電力の"見える化"から - HEMS補助金の活用も