【レポート】
2011年3月11日の東日本大震災に端を発する原子力発電所(原発)事故などの影響により、日本での節電意識は急速に高まった。また、2012年に入り、電力料金の値上げの動きは、そうした節電に向けた意識をさらに押し上げている。
そうした中、さまざまな建物や設備、機器などの効率的な電力マネジメントを実現しようという考え方として「xEMS(各種エネルギーマネジメントシステム)」が台頭しつつある。しかし、例えば家庭向けであるHEMSなどは、新築物件では太陽光発電における余剰電力買取制度などによる電力監視を含め導入を推進する動きがハウスメーカーなどにあるが、価格も高く、そして新たに建てる際に、という部分が課題となっている。そうした状況に対し、「HEMSはみなでやらなければ意味がない。そのためには早くかつ手軽に、そして安く導入できる小さなサービスを提供する必要がある」と語るのは台湾EMS/OEM/ODMベンダSerCommの日本法人であるサーコム・ジャパン代表取締役社長の伊藤信久氏である。同氏に同社が目指す日本でのHEMSビジネスの姿を聞いた。
SerCommをご存じのない方に簡単に同社の説明をすると、Wi-Fiルータやゲートウェイ、STB、IPカメラ、フェムトセルなどを相手先ブランドによる委託生産を受託して生産したり(OEM/EMS)、相手先ブランドが要求する商品を自ら設計し、相手先ブランドで製造・供給したり(ODM)するメーカー。日本でも携帯電話回線向けフェムトセル機器などをOEM提供しており、それが市場参入のきっかけとなった。
しかし、同社はハードウェア専門メーカーであり、ソフトウェア開発は弱い。今回、HEMS市場への参入を決定した際、「日本に参入するためにはソフトウェアが付加価値になる」(伊藤氏)とのことで、岩手県の各企業とアライアンスを組むことでソフトウェアの開発強化を図っているという。
何故、岩手県か。これは伊藤氏が同県盛岡市の出身ということもあるが、それ以上に「被災地への支援として寄付もありだが、やはり仕事を提供することが最大の復興支援になる」との気概がそういう決断をさせたという。もともと岩手県には機器メーカーの工場などが多数あり、そうしたところから飛び出して活動しているエンジニアなどが多いというのも、決断の後押しとなったようだ。
そんな同社がHEMS向けに提供するのがゲートウェイを中心とするソリューション。「日本だとHEMSなどは実証実験レベルのイメージがあるが、欧米ではすでに実用化されている地域も多く、通信キャリアなどもサービスの1つとして提供している」。そうしたキャリアにOEMとして機器を提供してきた実績を有しているのが強みだ。
「国内ではHEMSへの期待感はあるが、まずは実証をしてみたいというニーズが強い。そうしたところに向けてAndroid/iOSクライアントと専用アプリケーション、ゲートウェイ、ルータなどを1ストップで提供することでエントリーレベルのHEMSサービスを実現することが可能になる」(同)と、すでに海外などで使われている機器を流用して組み合わせることで安価にHEMSソリューションが実現できることを強調する。
では具体的にどういったHEMSソリューションが可能になるのか。2012年4月に経済産業省が発表した「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(HEMS導入事業)」の対象となるためには「ECHONET Lite規格」を搭載した機器が必要となるが、同社では7月にホームゲートウェイ「NA900」が機器認定を取得したことを公表しており、NA900と家電制御コントローラを組み合わせた電力管理ソリューションが実現できるとしている。「外出時に機器の電源の切り忘れ、つけっぱなしによる電力の無駄をなくしたいという意識が高い。外出先からスマートフォンなどを用いて状況を確認でき、もしオンになっているようであればオフにできれば電力の無駄を省ける」(同)とするほか、温度センサ/湿度センサと組み合わせることで、夏場の熱中症予防や冬場のインフルエンザの感染予防なども可能になるという。具体的にはエアコンがメインで、(エアコンのコンセント部分に)赤外線を発する「IRエクステンダ」を接続し、それとゲートウェイをWi-Fiでつなげるほか、床のコンセントに温湿度センサを挿す(センサはコンセントを消費しないように1口分のコンセントも用意されている)ことで、温湿度の監視とエアコンのオン/オフが可能になる。すでにこうしたソリューションも海外でアプリケーション含めて提供しており、「日本語化とセンサに対応させれば日本でも提供が可能になる」としている。
ただし、先述もしたが同社はあくまでOEM/ODMメーカーであり、自社ブランドとしての販売は行わない。「我々のサービスをベースに使ってもらって、そこに自分たちの付加価値を加えたくなったら、APIを開示しているのでそれを活用してカスタマイズなどをしてもらう。IPカメラなども提供してきたノウハウから、追加サービスでセキュリティカメラとの連携なども対応可能だ」と、カスタマがやりたいことに対しては柔軟に対応する姿勢を示す。そうした意味ではゲートウェイのNA900も標準でWi-FiとEthernetに対応しているほか、Z-WaveやZigBee、IRなどの物理層もサポートしており、IPを経由して直接ECHONET Liteデバイスとの通信が可能という特長がある。
「我々が狙っているのは台湾メーカーのハードウェア技術とコスト競争力、リードタイムと日本の品質を組み合わせて提供すること」だという。そのための岩手でのパートナー探しでもあるが、「国内のハードウェアベンダにもIRエクステンダなどの製造見積もりを行ってもらっている。ハウスメーカーなどからは通信機器でありがちな1年保証ではなく5年などの長期保証が求められ、そうした品質はやはり国内の方が強いからだ」と、そうしたパートナーの積極的な活用によるHEMSの浸透を図りたい構え。「我々も大規模なHEMSをやれるほどの規模感はないのは承知しており、それよりもより多くの人が使える小さなサービスを安価に提供していくことで、無駄なく、苦労なく電力の効率的な活用に向けたサポートの一端を担えればと思っている」としており、スマートフォンによる電力監視という新しい使い方の提案も含めて、国内の興味ある企業に向けてソリューションの紹介を進めていくとしている。
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