ボリュームの多さに圧倒される「とんかつ熊さん」のカツカレー

北海道に次いで面積が広い岩手県には、観光客があまり知らないB級グルメが数多く隠れているのをご存じだろうか? 「北上コロッケ」「遠野ジンギスカン」などは全国的にも有名だが、今回はメディアでもあまり紹介されていない隠れたB級グルメについて、盛岡エリアのタクシー運転手に緊急取材。

ラーメン好きなら一度は訪れたいラーメン店、ボリューム満点の老舗食堂、そして昔ながらのコッペパン屋などなど。地元を知り尽くしたドライバーが薦めるメニューの中でも、特に人気の高かった究極グルメをこっそりご紹介しよう。

フードファイター級のボリューム「とんかつ熊さん」のカツカレー

まずは食堂編。一つ目は盛岡市本宮、ちょうど盛岡市アイスアリーナの斜め向かいに位置する「とんかつ熊さん」。店名の通りメーンはとんかつなのだが、ここの目玉は驚く程のボリュームを誇る「カツカレー」だ。とんかつ屋のカツカレーと聞けば、専門店ならではの豚肉の厚みや衣のサクサク感が想像され、口の中には涎(よだれ)がたまる。では驚く程というボリュームとはどういうことだろうか? これは実際にこの目で見なければと早速店舗へ向かうことにする。

カレーが人気の「とんかつ熊さん」

いかにも大衆食堂といった広い店内には、定番の「とんかつ定食」や「カニクリームコロッケ定食」を求めて訪れた地元の方がぎっしり。人気ナンバー2の「カツカレー」(1,000円)をオーダーし、待つこと約10分。出てきた皿の大きさにまず驚いた。幅30cmはあろうかという横長の皿に、茶わん4杯分程のご飯がこんもりと盛られ、カレーは皿からあふれんばかりにかけられている。

ランチ気分で食べるというよりも、フードファイターのつもりで食べるのが礼儀といったボリュームだ。確かにお得感満載なのだが、問題なのは味のほう。いくら超大盛りでも、おいしくなければ意味がない。せっかくのメニューが冷めてしまうので、まずは一口食べてみた。カレー自体は割と甘めで食べやすい。これなら辛いものが苦手な人や子どもでも無理なく食べられる。

しかし、特筆すべきはマイルドな辛さではない。ルーとの相性バッチリな特大のカツなのだ。サクサクな衣に肉汁が滴りそうな厚いロースが包まれており、その柔らかさもバツグンなのだ。昼時に1,000円という値段を考えるとやや高く感じるかもしれないが、このおいしさでこの量ならば迷わず選びたいメニューだろう。またお店の方に伺ったところ、「とんかつ熊さん」近くには県立美術館等の施設もあり、このエリアだけでも十分観光が楽しめるそうだ。

●information
店名:とんかつ熊さん
住所:岩手県盛岡市字松幅25-8
営業時間:11:00~22:00
定休日:1月1日~3日

ワンコインでおつりがくる。安い・早い・うまいで愛されている「かまだ食堂」

ついで彼らオススメのもうひとつの食堂は、上盛岡駅近くにある「かまだ食堂」だ。多くのドライバーが行きつけの店として選ぶ隠れた名店で、昼時には店舗近くに何台ものタクシーが止まっているとか。とりわけタクシー運転手の人気を集める理由は、注文から料理が出るまでの時間が短く、昔ながらの食堂メニューが豊富なこと。気になるオススメは? と聞くと、「焼肉定食ですね」とまずはボリューム感のあるメニュー名が出た。

ということは焼肉がおいしくて評判なのか、と思い調査を続行。ところがドライバーたちの意見は、この店を選びこそすれど、おのおののオススメは十人十色なのだ。ラーメン、かけそば、いなりうどんなど、同じ意見を持つものこそいても、何が一番おいしいのかということに関しては意見が割れる。

ただ、どのドライバーからも、安い・早い・うまい、の共通意見が出たことは確か。気になるメニューのラインアップだが、450円から食べられるというのはとてもリーズナブルと言えそうだ。しかも、どの料理も昔ながらの飾らない味が魅力と言える。B級グルメという言葉のルーツとも呼べる店だろう。

●information
店名:かまだ食堂
住所:岩手県盛岡市本町通3-5-26
営業時間:11:30~20:30
定休日:日曜日

家族でシェアして食べるもよし。変わり種の具もそろう「福田パン」のコッペパン

さて、がっつり系の紹介をしたので、ここからは女性や子どもにも大人気のB級グルメといきたい。まずは岩手県民ならば誰もが知っているという「福田パン」のコッペパンだ。

レトロな外観の「福田パン」

コッペパンと聞けば、コンビニやスーパーで市販されているもの、小学校などの給食で食べたものを想像されると思うが、ここのパンはサイズも中身もレベルが違う。長さはもとよりその幅、厚さには、初めて見た人が必ず驚く程。一人で食べるもよし、家族で分けて味比べをするもよし。この楽しみ方の豊富さも、老若男女問わず愛される理由なのだろう。

そして何より大事な"中身 "についてだが、あんバター、ピーナツ、ミルク、チョコバナナ、スイートポテトなど、ラインアップがとにかく豊富。岩手県内のスーパーなどでも購入することができるが、長田町にある本店では自分の好きな組み合わせを告げると、目の前で作ってくれる実演販売を行っているのでぜひチェックを。

こんなに種類があると選ぶのだけでも相当楽しい

また、本店オリジナルとして「コンビーフ」や「カレー」、果ては「れんこんしめじ」「豚しょうがやき」などを挟めた総菜パンを販売。パンにそんな具材を? と思われるかもしれないが、これが意外と後引く味なのだ。パン自体がしっかりとした食感をもっているため、中身だけが浮くということもない。今回は取材したタクシー運転手の方のオススメ「ポテトサラダ」を購入してみたが、じゃがいもの食感とクリーミーな口当たりに大満足。

コンビーフとコッペパンの相性は抜群☆

これは定期的に通いたくなる味だと実感した。値段は具材によって多少上下するが、135円から250円程度。1949年の創業当時から変わらないというボリューム、バターやクリームなどを惜しみなく塗ってくれる気前のよさを考えれば、本当に良心的な金額だ。ただし、「福田パン」は固くなるのが早いため、遠方へのお土産には向かないのが難点と言えば難点。長田町本店にはイートインコーナーもあるため、できれば作り立てをその場で食べていただきたい。

●information
店名:福田パン
住所:岩手県盛岡市長田町12-11
営業時間:7:00~17:00
定休日:なし

納豆の臭みをなくしてコクを引き出した、食欲をそそるキムチ納豆ラーメン

では、いよいよB級グルメの本命、タクシー運転手オススメのラーメン店をご紹介しよう。それは岩手県内に8店舗を展開する「柳家」だ。ここの名物「キムチ納豆ラーメン」(880円)こそ、地元民にこよなく愛されるソウルフードなのだとか。

まろやかな味が人気のキムチ納豆ラーメン

キムチがきいた真っ赤なスープにこんもりと盛られたもやし、そしててっぺんに落とされた生卵。見た目から食欲をそそるラーメンだが、スープを一口飲むとそのダシの深みに誰もが納得するはず。納豆というクセのある食材を使用していることから、好き嫌いが分かれやすいのではと心配してしまうところ。しかし、納豆特有の臭みはほとんど感じられず、代わりにコクを引き出してまろやかな味に仕上げているのだ。これならリピーター続出という話にも納得。

この他、東安庭店の月替わりメニュー「カレーラーメン」や、フェザン店の夏季限定メニュー「冷たいキムチ納豆」など、店舗ごとに特色あるメニューを考案しているというのも面白さの一つ。ちなみに取材した運転手さんのオススメは、唯一カフェっぽい店内の「みたけ店」だそう。ゆったりと食べてみたい人はここから攻めるのもいいかもしれない。

●information
店名:柳家
住所:岩手県盛岡市大通2-2-15
営業時間:10:30~16:00
定休日:なし

全国に知られる「三大麺」。その一つ、「じゃじゃ麺」の〆は「チータン」で

ここまでは比較的ディープなグルメ情報をお届けしてきたが、岩手には全国的に有名なB級グルメ「三大麺」も存在する。「冷麺」「じゃじゃ麺」「わんこそば」がそれだ。中でも「じゃじゃ麺」は地元の学校給食にも出される程愛されている料理で、最近テレビCMで女優が食べたことにより人気が爆発。CMが撮影された「白龍」本店には、多くの観光客が詰めかけているという。

赤地に白い文字が目印

「じゃじゃ麺」とは、湯でたての平打ちうどんにきゅうり、ねぎ、じゃじゃ味噌という特製肉味噌を乗せたシンプル麺料理。「白龍」では自分好みで酢やしょうが、にんにく、ラー油などを加えて食べる面白さも味わえる(中:500円)。

じゃじゃ味噌を思い切り混ぜて食べよう

麺を食べ終えたら、皿をカウンターに出して「チータン」と一言。熱々の特製スープが入った皿が返ってくるので、自分で生卵を落としたら卵スープに早変わり。最後の一滴まで楽しむことができるのだ。ここでのポイントは、皿にどれだけ肉味噌が残っていたかでスープの濃淡が変化すること。ぜひ自分の好みの味を目指して調整してみてほしい。

ほかにも、観光客に「おいしい蕎麦屋は?」と問われた際に必ず答えるという「東屋」、通が認める老舗「直利庵」など、まだまだ隠れた名店、B級グルメが存在する岩手県。観光旅行の際にはぜひタクシーに乗って、地元ならではのとっておき情報を聞き出してみてはいかがだろうか。

●information
店名:白龍
住所:岩手県盛岡市内丸5-1
営業時間:11:30~21:00
定休日:日曜日

【関連リンク】

「いわて観光/旅行ポータルサイト」で岩手の最新情報をチェック

【特集】その道のプロに聞いた、一般もOKな岡山市中央卸売市場のおいしい楽しみ方

【コラム】観光で行きたい全国の穴場スポット (11) 民謡を聞きながら水墨画の世界が広がる渓谷を下る。一関「猊鼻(げいび)渓」

これからきそうなB級グルメ、お土産品はコレ!

【コラム】口コミで知る全国のご当地グルメ (2) 人が集うところに「もち」あり、岩手県一関市の「もち料理」

【特集】中尊寺、龍泉洞、小岩井農場……岩手県を2泊3日で100%堪能する方法