事業継続や、クラウドサービスに対する万が一の備えとして、今注目を浴びているバックアップソリューション。そのニーズは、企業のみならず、官公庁でも急激に高まっており、読者の中にも現在導入を検討中という方がいらっしゃるのではないだろうか。

導入の際に注意していただきたいのは、一昔前と異なり、仮想環境で動作するサーバが数多く存在するということ。仮想環境への対応形態は製品によってさまざまで、場合によっては運用負荷/コストが思いのほか増大するという事態にも陥りかねないのだ。

そんな中、ユーザー企業から高い評価を得ているのが、国内で高いシェアを誇る「CA ARCserve」である。では、同製品はどのようなかたちで、運用の効率化に寄与しているのか。本企画では、実際の導入事例を紹介しながら、その効用についてご紹介していこう。

最初に取り上げるのは、富山県を対象とした日本テレビ系列のテレビ/ラジオ放送局、北日本放送の事例である。同社では「仮想化対応」という基準でるCA ARCserve D2Dを選定したが、導入決定にはそのほかにも大きな要因があったという。

運用の効率化を目指してサーバ仮想化に着手

北日本放送

まずは、北日本放送におけるCA ARCserve D2D導入の背景について簡単に説明していこう。

2012年で開局60周年を迎えた北日本放送は、富山県を対象エリアに日本テレビ系列のテレビ/ラジオ放送を手がける一方で、独自の番組制作にも積極的に取り組み、日本民間放送連盟賞や芸術祭賞などで多くの優秀賞を受賞した実績を誇る。近年は、放送に加えて、Webサイト「KNBWEB」、携帯サイト「KNBモバイル」、通販サイト「逸品チャンネルDeSi Caとやま」を展開するなど、ネット事業にも力を注いでいる。

同社では、"放送と通信の融合"が進展し、情報システム・ニーズが高まるなか、増加するサーバの集約と運用の効率化を目指して、3年前からサーバの仮想化に着手し、対応するバックアップ・システムの構築に取り組み始めていたという。

北日本放送の営業本部 編成業務局 編成業務部 寺西 徹氏は、「仮想環境を導入することで、バックアップを含めたサーバの運用工数を大きく削減できると判断し、更新時期が迫ったサーバから順次、仮想環境へ置き換えていくという決断を下した」と、当時を振り返る。

従来の物理サーバのシステムでは、バックアップにテープ装置を使っていたが、サーバの台数が増加するにしたがって、テープの入れ替えをはじめとする運用作業が煩雑になってきていた。なかには、予算の関係で、バックアップを取っていない危険なサーバも存在したという。そこで、新しい仮想化システムでは、バックアップにディスク装置を採用することによって処理の効率化を図り、仮想化したすべてのサーバをバックアップできるようにした。

ところが、運用を続ける中で、24時間365日の稼働を求められる報道システムがダウンしてしまうという致命的な事故が発生した。原因は、バックアップに起因するディスク容量エラーと判明。システム保護のために導入したバックアップ製品が、重要なシステムの可用性を損なう結果を招いたのだ。

システムダウンは、バックアップを行う際に一時的に作成されるスナップショットが、バックアップを完了しても消去されず、それがバックアップのたびに蓄積されてディスク領域を占有してしまうことにより生じていた。当時導入していたバックアップ製品のサポート窓口に対応を求めたが、問題を根本的に解決することはできなかった。結局バックアップ・システムの見直しを迫られることになる。

エージェントレスによるバックアップ、ファイル単位の復旧が採用の決め手に

こうした状況の中、仮想環境に対応するバックアップ・ツールとして新たに白羽の矢が立ったのが、CA Technologiesが提供するバックアップ製品の「CA ARCserve D2D」と、仮想マシンの統合バックアップを実現するオプション製品の「CA ARCserve Central Host-Based VM Backup(セントラル ホスト ベースド バックアップ)」である。

採用の決め手となった要因の1つは、仮想マシンにバックアップ・ソフトをインストールする必要のないエージェントレスの環境でホスト側から仮想マシンを構成するファイルを直接バックアップできることだった。

寺西氏は、この点について、「仮想マシン側にエージェントを導入しなくても、バックアップできるというのが大きな魅力だった。バックアップ製品側で仮想化サーバが自動的に検出され、対象マシンをいつ、どこにバックアップするのかをGUI画面で設定するだけで、すぐにバックアップ作業を開始することができる」と高く評価する。

従来のシステムは、仮想マシンにエージェント・ソフトをインストールしてバックアップを行う必要があったため、仮想マシンへのインストールや設定に手間がかかるだけでなく、余分な負荷がかかってしまうという問題を抱えていた。この問題を解消できるだけでも大きなメリットだったという。

CA ARCserve D2Dは、エージェントレスで動作する

採用の決め手となったもう1つの要因は、エージェントレスでバックアップした仮想マシンのデータをファイル単位で容易に復元できることだ。例えば、エンドユーザーが誤ってファイルサーバのファイルを上書きしてしまった場合でも、エンドユーザー自身がGUI画面上で容易にファイルを復元することが可能だ。

もしファイル単位の復旧をサポートしていない場合、いったん仮想マシン全体を復旧したうえで、目的のファイルを取り出す必要があるため、復旧に手間と時間がかかり、エンドユーザー自身による復旧も考えにくい。

「バックアップ・データから、マシン単位だけでなくファイル単位、データベース単位でリストアできる点や、設定したスケジュール通りに動く点も高く評価した。ファイル単位で戻せればエンドユーザーからの要望にも応えやすいし、当社の構想どおり、バックアップスケジュールを立てられると考えた」(寺西氏)

Windows同様のGUIになっているため、リカバリ作業はエンドユーザーでも簡単に実行できる

永久増分バックアップで必要容量を最小化

CA ARCserve D2Dには、運用の効率化を後押しする機能がもう1つあった。それは、「永久的な増分バックアップ」と呼ばれるもの。システムの構築段階で一度フルバックアップを取るだけで、あとは増分バックアップのみで運用を継続的できるというものである。

しかも、CA ARCserve D2Dでは、増分バックアップの世代管理も実現している。残しておきたい増分バックアップの世代数をあらかじめ設定しておけば、その数を超えた段階で、最も古い増分バックアップがマスターのバックアップ(最初に取得したフルバックアップ)に合成される。これにより、バックアップ容量を最小化することが可能になる。管理者は、バックアップ容量の不足を心配することなしにバックアップの自動化を実現し、運用工数を大幅に削減できる。

CA ARCserve D2Dの増分バックアップの仕組み。3世代保存する設定にした場合、4回目以降のバックアップでは3世代前のファイルがフルバックアップファイルにマージされる

また、安価なライセンス価格体系もこれらのバックアップ製品を採用するメリットの1つである。ライセンス価格は物理サーバの台数単位で設定されており、物理サーバ上に仮想マシンを何台追加したとしても、導入コストの増大を心配する必要はない。

北日本放送では現在、VMware ESXを採用した4台のサーバが稼働しており、この環境をすべて先述の2つの製品でバックアップしている。寺西氏によると、2012年3月の本番導入以降、バックアップに関してトラブルは発生していない。また、その運用についても、管理画面で成否をチェックする程度であり、ほとんど工数はかかっていないようだ。

北日本放送の仮想環境バックアップ体制

同社では今後、サーバの仮想化を推進し、Linuxサーバを含むすべてのサーバを仮想化するとともに、仮想デスクトップの導入も進める方針だ。仮想デスクトップに関しては、すでに2011年から導入を開始しており、現時点で約60台のデスクトップ端末が配布されている。これらのシステムでも同様のバックアップ製品が採用されることになっている。寺西氏は、仮想サーバと仮想デスクトップを含む情報システム全体の包括的な運用管理の実現を目指している。

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