オランダ・アムステルダム市で「TechEd Europe 2012」を開催中のマイクロソフトは、6月27日にプレス向けのWindows 8説明会「Exploring Windows 8」を開催した。この説明会はおもにEU圏のプレスに向けたイベントのようだが、中東・アジアからの出席者も見ることができた。日本から数名が参加した模様だ。

今回の説明会は、Windows 8 Release Preview(RP版、従来のRC版にあたる)のリリースに合わせて、TechEdの講師を務める開発者などがプレス向けにかみ砕いた説明を行うもので、特になにか新しい発表が行われたわけではなかった。

Windows 8 RP版のリリース後、マイクロソフトからは、ブログなどで情報が出たものの、6月11日に米国で開催されたTechEdが最初の公式な説明などを行う場となった。EU圏向けには、6月26日からアムステルダム市で開催されたTechEdが正式な説明の場となっており、これに合わせて開催されたのが今回の「Exploring Windows 8」というプレス向けのイベントである。

イベントは、TechEd会場とは少し離れた場所、アムステルダム市のスポーツアリーナなどがある地域で行われた。会場も体育館のような大きな建物で、数百名程度の参加があったようだ。

イベントは5つのセッションから構成されており、午前11時から夕方6時にまでわたる長いもの。セッションは以下のようなものである。

The Windows 8 Experience テーマ Windows 8のユーザーインタフェースなど
スピーカー Windows 8 User Experience team
Principal Program Manager
Chaitanya Sareen氏
App reimagined テーマ Windows 8 Metroスタイル・
アプリケーションについて
スピーカー Windows Store team
Partner Director of Program Management
Ted Dworkin氏
Building Windows 8 app テーマ Metroスタイル・アプリケーションの開発
スピーカー Windows 8 Developer Platform
Parthner Group Program Manager
Lan LeGrow氏
Inside Windows 8 テーマ Windows 8の概要とソフトウェア、
ハードウェア開発について
スピーカー Windows 8 Fundamentals team
Princepal Group Program Manager
Bill Karagounis氏
Windows 8 @ Work テーマ Windows 8の企業での利用など
スピーカー Windows Core team
Partner Group Program Manager
Dustin Ingalls氏

現在Windows 8 RP版として配布されているのは、従来のWindowsではRC版(製品候補版)と呼ばれていたもので、基本的な仕様が確定したものだ。今回の説明は、最終仕様での説明である。Windowsのこれまでの開発の歴史から、よほど重大な問題が発生しない限り、RP版に見られる機能がそのまま製品仕様となる。また開発もバグ修正などが中心となり、機能を変えるような変更は行われない。Windows 8の開発については、まもなく最終版となるRTM(Release To Manufacture、製造工程へのリリース)版となると言われている。

Windows Updateなどで修正が比較的簡単になっているため、このタイミングでは、修正項目のうち重要度の高いモノから優先して作業を進め、軽微で実行に影響しないものや、重大な結果に結びつかないようなものは、優先度が下げられる。現在の最大の問題は、RTMとするときに、続く修正作業のどこに線を引くかということだ。そういう意味では、Windows 8はすでに「ほぼ完成」しているといってもいいだろう。ただ、今回はじめての登場となるWindows RT(ARM版Windows 8)については、現在でも多くの作業が続けられているようだ。どちらかというとこちらの動向次第といえるかもしれない。

MetroのUIにはまだ知られていない操作が……

ユーザーエクスペリエンスのセッションでは、具体的な操作を示しながら、Windows 8のタッチ操作やマウス操作を紹介した。説明によれば、Windows 8のユーザー体験は、「速くて流れるよう」であり、「常にネットワークに接続していて、情報が生きている」こと、そして「情報の参照だけでなく、何かを作り出すためにも使える」という点に特徴があるという。特に最後の部分は、メールやWeb閲覧を主な目的とした他のタブレットとの差別化ポイントといえる。PCであるため、情報を加工したり、作品やレポートなどを作成するためにも利用できるという点で有利というわけだ。たしかに最近のタブレットは高性能化しているが、ちょっとした情報の再利用や加工はあまり得意でない。場合によっては、メールなどのアプリケーションが持つテキスト情報を他のアプリで使うことも難しい場合がある。

デモに使われたのはRP版だが、いくつかのデモは、Metroのユーザーインタフェースがどういうものであるかを理解するのに役立った。たとえば、多くのドキュメントでは、画面上から下へ指を動かす「エッジ」動作を、アプリケーションのクローズまたはメニューの表示としてしか説明していなかった。しかし、指を中央まで動かし、アプリ画面が縮小表示状態となったところで指を左右に動かすことで、現在のアプリが「スナップ」状態となる。あとは、左からのスライドを使ったり、スタート画面を使って、メイン領域に表示させるアプリケーションを選ぶだけだ。この動作を知らないと、同じスナップ状態を作るにも、メイン画面アプリを選び、スナップ状態にしてから領域サイズを変更するなど、少し面倒な手順が必要だ。ここまで来るとようやくユーザーインターフェースではなく「ユーザー体験」ということができる。ユーザーインターフェースとして用意されているMetroの操作に対して、具体的な使い道やノウハウ的なものを利用者が理解してこそ、「体験」となるわけだ。

このようなグラフィカルユーザーインタフェースに対して、よく「マニュアル不要」といったことが言われるが、このアプリのスナップのように、利用者が想像で理解することができないこともいくつかある。Windows 8のタッチ操作に関しては、誰もが初めて使うインタフェースであり、ある程度のドキュメントやチュートリアルなどは必要と思われるのだが……。

Metroアプリのセッションは概要と開発の2本立て

Metroスタイルアプリケーションについては、その構成や概要のセッションと開発に関するセッションの両方があった。Metro環境とそのアプリケーションであるMetroスタイルアプリケーションは、Windows 8ではじめて導入されたもので、マイクロソフトとしてはその普及に努め、多くの開発者を集める必要がある。今回の説明会はプレス向けのものなので、Metroスタイルのアプリケーションはこんな感じになります、アプリケーションはこんな感じで作り、ストアからはこんな情報が得られますといった内容のセッションだった。