米Intel社は、COMPUTEX開幕前日となる6月4日、台北市内で、高速インターフェース仕様であるThunderboltの現状を説明した。

Thunderboltは、元々同社が高速伝送のために開発していたLightPeekという技術がベースになっている。当時は、その名のとおり、光を使って高速なシリアル通信を実現するものだったが、Apple社との協同開発により、金属の電線を使うインターフェースとなり、さらにDisplay Portと同じコネクタを使う仕様に変わった。

Thunderboltは、ディスプレイ向けの表示データパケットと、PCI Expressの信号パケットを同時に流すことができ、ディスプレイとの接続にも、PCI Expressによる高速なデバイス間接続にも利用できる。

Thunderboltは、PCI ExpressとDisplay Portの信号パケットを混在させて、高速シリアル伝送を行う。ディスプレイを含めて、ホスト側からのケーブルを1つにまとめることができる点が大きなメリット

インテルによれば、Thunderboltを搭載するWindows PCが増えてきており、すでに搭載ノートブックや一体型PCが発表されており、また、マザーボードにも標準搭載したものがあるとのこと。

周辺機器に関してもストレージなどが対応しており、高速なインターフェースとして認知されつつあるという。

Thunderboltは、ミニDisplay Portコネクタを使う。Display Port自体の普及はまだこれからでもあり、現状では家電などに多く採用されているHDMIの普及が進んでいる。

このため、Display Portとしても、Thunderboltとしても、これらか普及を目指す状態にある。Display Portがもう少し普及していれば、Thunderbolt普及の足掛かりになれたのだが。

これに対してMacintoshは、Appleのみが仕様を決め、オプションなども純正品を用意するため、接続の仕様などは自由に決めることができる。他社があまり採用していないDisplay Portを採用したもの、こうした背景があるからだ。

このため、Mactintosh系での普及は問題ないものの、周辺機器などの「エコシステム」の構築は、Windows PC側での普及にかかっている。周辺機器メーカーも、多数派となるインターフェースには対応するものの、そうでないと、対応するメーカー、製品が増えず、価格も下がらない、ユーザーも増えないという「ネガティブ・スパイラル」に陥りやすい。このためには、PCへの普及が始まりつつある現在の活動がより重要というわけだ。

少なくとも、初期段階でいくつかのメーカーが対応しており、周辺機器やPCなどはいくつか発表されている。また、高速伝送にたえる安価なケーブル製造の見通しも立っており、今年後半ぐらいからケーブルの価格が下げられることになるようだ。

また、10メートル以上の長距離接続用に光ファイバーを使ったケーブルも今年後半ぐらいから登場予定だという。光ファイバーケーブルは、コネクタ内に電気信号と光を双方向に変換する回路を内蔵したものになる。

また、Thunderbolt用にインテルは第二世代のチップを開発しており、1つはPCなどのホスト、デバイス側の両方で利用できるDSL3510/3310であり、もう1つはデバイス側(シングルポートのデバイス向け)のコントローラとなるDSL2210である。Thunderboltでは、このコントローラーを使い、Display Port用の信号とPCI Express用の信号を分離し、デバイス側は、それぞれのインターフェースで機器を制御する。ホスト側では、PCI ExpressとDisplay Portの2つのインターフェースにコントローラーを接続、2つの信号パケットを混在させて送出する。

左側が第一世代のThunderboltコントローラー。右側の2つが第二世代のコントローラーだ

デバイス側は、Display Portで接続される表示デバイスかPCI Express接続のデバイスとなるため、USBなどに比べると簡易なデバイスではなく、高速転送が必要となるストレージやメディア関連のデバイスなどがむいている。説明会場で目立っていたのもストレージ系のデバイスだった。この点からすると、USB 3.0と重複する領域もある程度出てきそうだ。ただし、USB 3.0の転送速度は最大5ギガビット/秒であるのに対して、Thunderboltは10ギガビット/秒とスペック的な違いがある。

インテルとしては、Ultrabook(ウルトラブック)などの新しいプラットフォームでの普及を期待したいところだが、USBの普及経過を考えると、デバイス側のコントローラーの低価格化やサードパーティの参入などが必要そうだ。このため、インテルの主導によりPC側への普及がある程度進み、安価なThunderbolt対応周辺機器が登場するにつれて本格的に普及しているという経過になりそうだ。

Macintosh用も含めてだが、ストレージなどを中心にすでに周辺デバイスも登場し始めている

LenovoやAsusなどがThunderbolt内蔵ラップトップを発表しているほか、MSIが一体型PCを発表している

PCメーカーとしてはacer、Apple、ASUS、GIGABYTE、Lenovo、MSI、LGなどが対応予定で、マザーボードメーカーとしては、ASUS、GIGIBYTE、Intel、MSI、ASRock、ELETE Groupなどが対応予定

ASUS、GIGABYTEなどがThunderbolt搭載マザーボードを展示