米Googleが4月25日(現地時間)より、SIMロックフリー版「HSPA+版Galaxy Nexus」の399ドルのオンライン直販を開始したことは既報のとおりだが、これを実際に入手して「Google Wallet」サービスをテストした様子をレポートしていこう。すでに登場から半年が経過してハードウェア的には"旬の時期"を過ぎてしまった感のある同端末だが、新サービスであるNFCを使った「Google Wallet」を試すことで、Googleの目指す次の世界を覗ければと思う。

まずHSPA+版Galaxy NexusとGoogle Walletの背景をおさらい

Galaxy Nexus(日本ではNTTドコモが「SC-04D」の名称で発売)について多くを語る必要はないだろう。まず米国でのGalaxy Nexus事情を説明すれば、Googleのお膝元でありながら、なぜか日本はおろか世界でも端末の発売が最も遅い地域となったことが挙げられる。もともとGoogleは同端末のローンチパートナーに、2011年末当時の米国において、唯一全国規模でLTEネットワークを展開していた米Verizon Wirelessを選定しており、ここからクリスマス商戦シーズンの始まる11月にもリリースするとみられていた。だが不明な理由によりローンチが遅れに遅れ、すでに商戦末期となった2011年12月末に販売が開始された。しかも単に発売が遅れただけでなく、Galaxy Nexusの目玉の1つであった「Google Wallet」アプリの搭載をVerizon Wirelessに拒否されており、2段階でローンチの出鼻をくじかれるという憂き目に遭っている。このあたりの背景は過去のレポートを参照してもらうといいだろう

NTTドコモのGalaxy Nexus SC-04D

このような形で不完全な形でのローンチを余儀なくされた米国でのGalaxy Nexusだったが、今春になり新たな進展が2つほど報告されている。まず米Sprint Nextelのネットワークに対応したGalaxy Nexusが正式発表された。SprintはVerizon Wirelessと同じCDMA系列のキャリアであり、3GネットワークはCDMAで展開している。また今年からの商用LTEサービスを発表しており、このGalaxy Nexusは同社にとって初のLTE対応端末でもある。そしてもう1つは、今回のメイントピックである「HSPA+版Galaxy Nexus」だ。同端末はLTE対応こそしていないものの、GSM系ネットワークの携帯キャリアで利用でき、最大でHSPA+の通信速度に対応する。また「SIMアンロック」であり、通信キャリアとの2年契約なしで端末を自由に利用できる。「テザリング不可」などのキャリア特有の機能縛りもないため、root奪取なしですべての機能を利用できる、最も"素"に近いGoogle謹製のAndroid端末だといえるだろう。もちろん、Nexusシリーズの特権である「あらゆるアプリやOSアップデートを最速で入手できる」というメリットもある。

すべての機能が解放されているということは、1つ大きなメリットがある。キャリア向けの端末ではVerizon Wirelessの例のように「Google Wallet」アプリの搭載を拒否されることがあっても、この手の直販端末ではアプリ搭載における制限はない。そのためGoogleでは、オンライン直販を行うHSPA+版Galaxy NexusにGoogle Walletアプリを標準搭載し、さらに同アプリからサインアップしたユーザーに対して「10ドルのクレジットを供与」という特典までつけている。今春まで、Google Walletアプリを利用できるのはSprint向けのNexus Sの1機種のみに限られていたが、新たに4つの端末がラインナップとして追加されている。1つはSprint版Galaxy Nexus (2年契約時199.99ドル)、2つめはHSPA+版Galaxy Nexus (399ドル)、3つめはSprint向けのLG Viper 4G Elite (2年契約時99.99ドル)、4つめはSprint向けのLG Optimus Elite (2年契約時29.99ドル)となっている。LG Viper 4G EliteはLTEに対応しており、Optimusよりは上位版の位置付けだ。

GoogleはWallet展開においてSprintと提携しているが、一方で残りの大手のVerizon Wireless、AT&T、T-Mobile USAは3社共同で「ISIS」(「アイシス」と読む)というモバイルペイメントのためのジョイントベンチャーを設立しており、Google Walletとの対決姿勢を明確にしている。ISISはテスト運用として米ユタ州ソルトレイクシティとテキサス州オースチンの2拠点で一部サービスを開始しており、今夏より本格的にサービスのロールアウトを開始する。サービスの正式ローンチ前にライバルの先制を許すわけにはいかないというのだろう。Sprint端末以外でのGoogle Wallet搭載にGoogleがこだわるのも、こうした背景があったうえでの抵抗といえるかもしれない。ゆえに、今回のケースでHSPA+版Galaxy Nexusを入手する最大の醍醐味は「Google Walletを実際に試す」点にある。「半年前のデバイスに399ドルは微妙」と思う方もいるかもしれないが、筆者の予測ではオンライン通販でもこの価格はGoogleにとって「ほぼ収支トントン」レベルだと思っている。あくまでデバイスの拡販が目的ではないかとの予想だ。