ソフトバンクモバイルが5月29日に発表した2012年夏モデルで、孫正義社長が「ソフトバンクならではの強い思いを込めて作った」と強調した端末が「PANTONE 5 107SH」だ。人気端末「PANTONE」シリーズのスマートフォン版だが、携帯電話として世界初という放射線測定機能を搭載する点が特徴だ。発表会場に展示されていたPANTONE 5 107SHをチェックしてきたので紹介しよう。

8色カラーのPANTONE 5

手のひらサイズで女性でも持ちやすいコンパクトサイズ

PANTONEは、多色展開で人気の携帯電話で、シリーズ全体で340万台売れている大ベストセラー製品だという。今回、この人気モデルがAndroid 4.0を搭載してスマートフォンとなった。約3.7インチフルワイドVGA(854×480ドット)NewモバイルASV液晶を搭載したコンパクトなサイズで、ワンセグ、赤外線通信、おサイフケータイ、緊急速報メールに対応。もちろん900MHz帯の新周波数帯「プラチナバンド」もサポートする。

本体側面

PANTONEは孫社長にとっても「大変大切な端末」だという。今回発表したPANTONE 5 107SHも従来通り8色のカラーバリエーションを用意した多色展開で、「一番分かりやすくて、かわいくて、若い人からお年寄り、男性にも女性にも、色んな人に幅広く受け入れられる端末」に仕上げたという。機能としても「全部入り」であり、「必ず売れる」と孫社長。化粧箱にもこだわったということで、「箱も捨てたくないというぐらいかわいい」とアピールする。

会見には女優の上戸彩さんが参加し、カラフルなスマートフォンをアピール

この人気のPANTONEシリーズ初のスマートフォンであるPANTONE 5 107SHに目玉機能として搭載したのが「放射線測定機能」だ。東日本大震災にともなう福島第一原発事故の結果、福島県を中心に放射性物質が拡散した。孫社長は「この原発事故の放射能の脅威は、目に見えないだけに多くの人が不安に思っているだろう」と話す。

放射線測定機能で計測を行ったところ。この画面はデモの計測結果だが、毎時のSv値を表示し、測定場所も地図表示してくれる。「レベル」では、線量に応じて色分けして表示される。文部科学省の色分けに従っているという

孫社長のTwitterには、放射線測定器の「ガイガーカウンター付き携帯電話の開発を求める声」が寄せられたという。孫社長は、要望に対して「やりましょう」とコメントして決意表明をすることが多いが、こうした要望に対しては「できなかったときにかえって落胆させてしまう」として、慎重に検討してきたという。

本格的な放射線測定器のような「大きく重いものを朝から晩まで持ち歩くのは大変」と孫社長。だが、いつも持ち歩き、気になった場所の放射線量を測定したいという要望に対して応えられるのは、常に持ち歩くスマートフォンへの内蔵だとして、今回の開発が行われたと述べた。

孫社長が示した測定器。堀場製作所の測定器のようだ

放射線の計測には、フォトダイオード(シリコン半導体)を利用している。GM管を利用したガイガーカウンターとは異なるが、空間中のガンマ(γ)線の数を計測し、シーベルト(Sv)/hに換算して表示することができる。測定できるのは0.05~9.99μSv/hの範囲で、誤差は±20%となっている。これはセシウム137を想定したものだという。

従来の「何万円もするような放射線測定器」では、センサーを動作させるためにさ、電源、ノイズ除去などの回路が必要で、本体サイズが大きくなってしまう孫社長は述べる。今回、独自開発したというICチップを用い、回路を1チップに収めた専用モジュールを新たに作ってPANTONEへの搭載を実現したという。モジュールは本体背面のカメラの右横付近に組み込んでいるそうだ。センサーはカバー内にあってユーザーが確認できない状態で埋め込まれている。

フォトダイオードを2つ搭載しながら、コンパクトなモジュールを開発

モジュールはセシウム137による校正を行っている

液晶右下に用意された専用ボタンを長押しすることで、測定アプリが起動し、すぐに測定が始まる。

右下のボタンを長押しする。すると計測がスタートし、通常は2分で結果が表示される。なお、短押しの場合は任意のアプリ起動することができる