4月25日、オープンソースCMSである「Plone」について、教育やプロモーションを目的としたイベントを世界中で同時開催する「World Plone Day」の日本版「World Plone Day 2012 Tokyo」が開催された。

オープンソースCMS「Plone」の現況とロードマップ

「Plone」はオープンソースのCMS(Content Management System)で、大量ドキュメントを内包するサイトの構築にも対応するため、日本貿易振興機構(ジェトロ)やCIA、FBIなどのサイト構築でも採用されている。一方で、使いはじめの敷居が低いという特徴もあり、個人ユーザーも多く抱えている。「World Plone Day 2012 Tokyo」では大規模な採用案件2例の紹介を中心に、「Plone」の特徴やロードマップについて説明が行われた。

まず、「Plone」の現況と今後のロードマップを語ったのは、リチェルコ代表取締役である本多重夫氏だ。

リチェルコ代表取締役 本多重夫氏

「CMSというとブログシステムの延長のようなとらえ方をされることが多いが、本来は企業や組織のガバナンスやコンプライアンスを遵守したWebコンテンツの制作プロセス管理、品質管理、品質保証を実現し、コンテンツのライフサイクルをマネジメントするのがCMSだ」と語った同氏は、「Plone」のCMSマーケットにおけるポジションが「機能的・ハイエンドでありながら導入コストが低い。数百万円クラスの商用CMSに匹敵する機能を備えている」と紹介した。

すでにPythonベースでUNIX、Mac OS、Windowsとさまざまなプラットフォームに対応しており、操作・管理画面や検索処理も日本語化対応済みであるなど、採用しやすい状態にある「Plone」だが、2012年中にリリースが予定されているバージョン4.2では、さらにデザイン面のカスタマイズにも対応しやすくなり、HTML5やCSS3といった新たなスタンダードにも対応するなど、柔軟かつパワフルになることが予定されている。

「Plone」のCMSマーケットでのポジション

バージョン4.2での追加予定機能

被災地支援プロジェクトの独立サイト構築を効率化

ユーザー事例として最初に紹介されたのは、東日本大震災の被災地支援ボランティア組織「ふんばろう東日本プロジェクト」での採用事例だ。ふんばろう東日本プロジェクトは、2011年4月に早稲田大学院専任講師の西條剛央氏が被災地向けの物資支援を行うプロジェクトして設立したもので、その後多くの支援者を得ながら物資支援に留まらない多彩な活動を行っている。2012年4月現在では、就職につながる重機免許取得を支援するプロジェクトや、ミシンを使った自立を支援するプロジェクトなど、21のプロジェクトが稼働している。

ふんばろう東日本プロジェクト 独立web構築班サブリーダー 森田亮子氏

「当初はMovableTypeを利用していたが、自立支援プロジェクトがいくつも立ち上がる中、プロジェクトごとのサイトを作ってほしいという依頼が殺到した。そこでプロジェクトごとの独立サイトを構築するためのチーム独立web構築班を設立し、Ploneを活用したサイトづくりをスタートさせた」と語るのは、ふんばろう東日本プロジェクト 独立web構築班サブリーダーである森田亮子氏だ。

「Plone」を選んだ理由は、独立web構築班のリーダーであり、立ち上げの呼びかけを行った矢崎淳一氏が「Ploneがとても好きだから」だという。しかし、チームのミッションである「Webに詳しくなくとも、情報発信をしたい誰もが発信できる仕組みを作る」ということを実現するツールとして「Plone」は活躍した。

「ひな形となるサイトをあらかじめ作成しておき、コピー&ペーストでサイトを作成できるようにした。フォルダごとに管理権限を分けて、複数人が複数サイトに所属している状況を構築。多人数でサイトの更新が行えるようにした。またサイトごとに定義できるCSSを利用して制限された中でも独自のデザインが適用できた」と森田氏。「いいね!」ボタンなど各ページで活用される共有機能は、メニューから選択するだけで追加できるようにするなど工夫もこらされている。

複数メンバーによる複数サイト同時作成の実現

また、実際のプロジェクトメンバーはWeb構築の知識を持っていなくとも情報発信が可能な状態にするために、独立web構築班チームの中に、基本的な構築と管理を担当するメンバー以外に「お助け隊」と呼ばれるWebの知識をある程度持ち、現場プロジェクトメンバーからの質問に対応できるメンバーを加えた。「こうしたメンバーに名前をつけることも大事。Ploneの既存機能を使った省力化と誰でもが使えるカスタマイズに加えて、Ploneを利用したヘルプの仕組みづくりなどにも注力した」と森田氏は語った。