ワコムは、クリエイター向けセミナー「Wacom Creative Seminar Vol.9 for Illustration」を開催した。今回は、イラストレーター兼マンガ家として活躍する2名のクリエイターを招き、液晶ペンタブレット「Cintiq」を使用した2部構成のメイキングセッションを展開。本レポートでは、第2部に行われた濱元隆輔氏によるセッションを紹介する。

商業デビューと同時にCintiqを導入

濱元隆輔氏

濱元氏は、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のオフィシャル・デフォルメシリーズ『ぷちえゔぁ』のキャラクターデザインを担当するほか、『週刊ファミ通』(エンターブレイン)にて『ひよこぼっち』、『Comic REX』(一迅社)にて『サユリリ』といったマンガも連載中。

小学1年生の頃からマンガ家を目指していた濱元氏は、高校生になって商業誌への投稿を始め、大学は東京の美大へ進学。上京したことで出版社に持ち込む回数を増やすも、なかなか芽は出なかったそうだが、縁があって大学の卒業と同時にプロとしての仕事を得たという。

大学在籍時に投稿していた頃は、出版社がデジタルデータでの持ち込みに対応しておらず、紙に描いた原稿を持ってくるように言われていたこともあり、当時の作品は手描きで制作していたそうだ。その後、トーン貼りなどでデジタル化の導入も行ったが、スキャンするくらいなら下書きからフルデジタルで制作した方が良いと考え、商業デビューと同時に当時発売されていたCintiqの15インチモデルを導入。そして現在は、2010年に購入した21インチモデルのCintiqで作業を行っているとのこと。ちなみに、現在の出版社の多くはデジタルデータの持ち込みも可能になっているそうだ。

濱元氏は、液晶ペンタブレットを楽ができる便利道具ではなく、全く新しい画材として認識している。そのため、ペンやコピック、色鉛筆などと同じように、はじめから思い通りの線を引くことはできないという。手描きから移行した人が違和感を口にすることもあるが、使いこなすためには練習や勉強が必要だと語っていた。

「ComicStudio」を使ったフルデジタルのマンガ制作を披露

セッションでは、「ComicStudio」を使ったフルデジタルでのマンガ制作手順が紹介された。マンガ制作で最初に行う作業は、テキストエディタを使った台詞入りプロットの入力だ。これは、単にあらすじを描いたメモ書きではなく、1ページに盛り込まれるシーンや、各コマで表現する台詞とカットが区分けされており、ページ内のコマ数を先に決めておく作業でもある。商業誌では、こうして入力したプロットを元に編集者と打ち合わせを行うことで、ネーム(下書き)時での修正も減らせるとのこと。

テキストエディタで入力されたプロット

仮のコマ割りと台詞の配置

以降の作業は、すべてComicStudioによって行われる。まずは、新規書類(解像度は商業でも同人でも600dpi)に作成するページ数を指定してストーリーエディタを表示し、プロットに入力した台詞をコピー&ペーストする。続いて、直線ツールを使った仮のコマ割りを行い、最初にペーストした台詞の配置と吹き出しの描画といった手順だ。テキスト化された台詞をレイヤーフォルダにまとめて管理する方法、印刷された際に台詞が裁断されない位置への配置、吹き出しの大きさの決め方など、実践的なアドバイスも数多く付け加えられ、参加者は真剣に聞き入っていた。

また濱元氏は、プロットを入力している時の原作者としての自分と、ネーム以降の作業を行う作画としての自分を切り離し、頭の中で討論をしながらコマ割りなどを進めているという。こうした考え方をすることで、原作者としてきっちりとストーリーを練ることができ、その場のノリで作画を進めて話の展開がおかしくなるような失敗も防げるとのこと。

ネームの描画

ペン入れ

キャラクターの下書きを行ってネームを完成させたら、枠線定規レイヤーを使った本番のコマ割りや吹き出しの作成、そしてペン入れ、ベタ塗り、トーン貼りの作業へと進んだ。時間に限りのあるセッションのため、1コマ分を描き上げるの頃にタイムアップとなってしまったが、一通りの手順はきっちりと解説してくれた。

モニターに映し出されたCintiqでの描画作業。濱元氏は左利きだ

ベタ塗りとトーン貼り

実演中には、少年マンガの影響で線を太くして失敗した話や、作業の合間にリフレッシュする方法、手描き時代に1度しか使わなかったサボテン柄トーンの話なども披露。実践的な話としては、その時に行っている作業に関しての注意点であったり、効率よく作業を進める方法、使用しているツールの特徴、どうしてその作業が必要なのかといった解説も事細かに行われ、ComicStudioでマンガを描いている人はもちろん、フルデジタルでイラストを描く人にとっても、かなり学ぶところが多いセミナーとなったはずだ。