【レポート】
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月13日、2012年7月21日に打ち上げる予定の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)3号機に関する説明会を実施した。「こうのとり」は、日本が開発した無人宇宙機。その名称の通り、国際宇宙ステーション(ISS)に実験装置や食料などを輸送することを目的としており、今回が3機目の打ち上げとなる。
「こうのとり」は、直径約4m、全長約10mの輸送機。船内物資用の与圧室、船外物資用の非与圧室という2つの貨物区画があり、それぞれ最大約5.2トン、同1.5トン(合計6トンまで)の荷物を格納することができる。今回の3号機では、与圧室に約3.5トン、非与圧室に約1.1トンの荷物を搭載する予定。
3号機の搭載物資は以下の通り。
「小型衛星放出機構」(J-SSOD)と「ポート共有実験装置」(MCE)については、すでに記事が掲載されているので、詳しくはそちらを参照して欲しい。
記者からの質問が多く、注目度が高かったのが再突入データ収集装置。これには2種類あり、米国製の「REBR(Reentry Breakup Recorder)」は2号機にも搭載されていたが、今回初めて国産(IHIエアロスペース製)の「i-Ball」も搭載される。
これらの装置は、再突入時の温度、加速度、角速度、位置(GPS)などのデータを取得することが目的。こうしたデータを分析し、どう壊れてどう落ちたのかを詳しく知ることができれば、燃え残った部品が落下する範囲の予測精度が高まり、事前に通告する警戒区域をもっと狭くすることができるようになる。
航空機や船舶を使った再突入の直接観測には大きな費用がかかるため、これまで実施してこなかった。3号機でもそれはないが、i-Ballの搭載によって、これまで取得できなかった低高度でのデータも得ることができる。i-Ballはパラシュートを開いて海面に着水し、衛星通信で取得したデータを送信する。
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高度120kmで大気圏に再突入し、アンテナが壊れるまで(赤線)は「こうのとり」からデータを取得。REBR(緑線)とi-Ball(黄線)により、全範囲をカバーする |
2つの装置の仕様。i-Ballは直径40cmの球形で、重さは15.5kg。i-Ballはパラシュートが入っている分、REBRよりも重い。どちらも耐熱はアブレータ方式 |
日本は小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルなど、再突入に関し高い技術は持ちつつあるが、有人機の歴史が長い米国・ロシアに比べると、経験は決して豊富とは言えない。「こうのとり」の再突入の機会を利用してデータを得ることは、現在検討中の「回収機能付加型HTV」(HTV-R)の開発にも繋がるだろう。
なおi-Ballには、REBRにはない機能として、カメラによる静止画撮影機能が追加されている。i-Ballは与圧室に格納されるが、「こうのとり」本体が破壊される前から撮影を開始。壊れて放出された後は前方から、後ろでバラバラになる「こうのとり」の様子が撮影できると期待されている。
「こうのとり」の初打ち上げは2009年9月11日。1(初)号機は「技術実証機」という位置付けになっており、初飛行で出た不具合を修正した2号機(2011年1月22日の打ち上げ)以降が「運用機」であるが、今回の3号機でも、機体の一部の改良が行われた。
これまで海外製だったものを国産化したのが、電気モジュールの通信装置(トランスポンダ、ダイプレクサ)と、推進モジュールのメインエンジン(主に軌道制御用)とRCSスラスタ(主に姿勢制御用)。
「こうのとり」には、推力500N級のメインエンジンが4基、同120N級のRCSスラスタが28基搭載。これが全て国産化されたことで、製造コストを3億円程度削減できるという。3号機では開発費もかかっているため、「こうのとり」全体のコストはこれまでと同じ140億円程度であるが、4号機以降ではその分コストを抑えられる見込みだ。
国産化の理由について、小鑓幸雄HTVプロジェクトマネージャは、「コストの削減もあるが、今後の有人宇宙活動を見据えた場合、軌道間輸送機のエンジンはキーテクノロジ。これは日本が独自に持たなければならない技術だ」と説明。また同時に、調達の安定性を向上させることも狙いとしてある。
そのほか、曝露パレットも、今回新しいタイプが搭載される。曝露パレットは、非与圧室に格納する機器を乗せておく、まるで「机の引き出し」のような装置。「こうのとり」がISSに結合された後、非与圧室の搭載機器は曝露パレットごとロボットアームで引き出され、ISS側に係留して、搭載機器が取り出される仕組み。
曝露パレットには、2号機まで使われた「船外実験プラットフォーム係留専用型(I型)」と、3号機で初めて使用される「多目的曝露パレット型(EP-MP型)」がある。
「きぼう」の船外実験装置だけを運ぶときはI型を利用(1号機はこのパターン)。一方、船外実験装置とISSの船外機器を混載するようなときなどは、EP-MP型が必要となる。どちらを使うかは搭載する機器によって決まり、今後の輸送計画次第であるが、今のところ、これからはEP-MP型が使われる見通しだ。
曝露パレットは搭載機器を移設後、「こうのとり」に再び戻されるが、格納後に曝露パレットが動くと危険であるため、非与圧室側にはこれを固定する機能がある。従来、曝露パレットを引き込んで固定する「軌道上捕捉機構」(HDM)が使われていたが、2号機までの運用結果でロボットアームだけで十分押し込めることが分かったため、これは位置検出機能とラッチだけの「位置検出機構」(PIM)に簡素化された。
「こうのとり」は年1機のペースで7号機まで製造される計画。小鑓プロマネは、「機体開発は3号機で一区切りついた。設計がほぼ固まり、4号機からは本当の意味での量産体制に入る」とコメント。ISSの運用延長に対応するため、追加生産があるのかどうかは未定だが、曝露部を持つ輸送機は他になく、「こうのとり」またはHTV-Rが使われる可能性が高いと見られる。
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