【レポート】

4年後には職業がなくなる!? クラウド時代のインフラエンジニアの未来(4)

五月女雄一

インフラエンジニアの将来を見つめ直したセッション「クラウドCROSS」

2012年1月27日、Webエンジニア約1,000人が参加したイベント「エンジニアサポート新年会2012 CROSS」が開催された。このイベントは、テーマに「CROSS(クロス)」を掲げ、「技術」「知識」「経験」「年代」「企業」といった「異種」「異文化」のエンジニアの間で多くのコミュニケーションが生まれる機会の提供を目的としたもの。

当日は、スマートフォンやクラウドといったトレンドの渦中にいるエンジニア同士のセッションや、エンジニアの働き方、キャリアプランついて企業の人事同士が議論するセッションなど、12もの幅広いクロスセッションが開催され、総勢80名に上るスピーカーが登壇した。

今回は、その中からクラウドを利用者の立場から見つめ直したセッション、「クラウドCROSS」の模様をお届けする。

クラウドCROSSのセッションは2部制で、前半では、各スピーカーからクラウドの登場がインフラエンジニアにもたらしている影響について発表があり、後半では、パネルディスカッション形式で、各テーマに沿って議論が行われた。すでに、前半の様子は紹介したので、今回は後半についてお届けしよう。

インフラエンジニアをどうやって育てるか?

後半は10個のテーマの下、パネルディスカッションが行われた。モデレーターにcloudmixの富田順氏(@harutama)を迎え、サイバーエージェントの桑野章弘氏(@kuwa_tw)、ニフティの安部潤一郎氏(@abej)、シャノンの藤倉和明氏(@fujya)、ハートビーツの馬場俊彰氏(@netmarkjp)がスピーカーを務めた。今回は、後半5つのパネルディスカッションの様子をお届けしよう(前半の様子はこちら)。

パネルディスカッションを熱心に聴く参加者の方々

6個目のテーマは「インフラエンジニアの人材育成」だ。桑野氏は、「サイバーエージェントには、新人育成の過程で技術を教えるだけの研修はない。OJTに近い形で実務の中で手を動かし覚えていってもらう形となっている。特にインフラエンジニアは、自ら能動的に動くことが求められるので、すべてを教えるのは難しい。基本的には、ガイドをつけて助ける体制を作ったうえで、自分で考え、動くことができるように育てていく」と、サイバーエージェントの教育について説明してくれた。

安部氏も、「ニフティも同様。サービスを運用するスキルは、サービスを運用する事で身につくと考えており、OJTに近い形で実際にサービスを運用させる。経験豊富なエンジニアをトップとして、メインとサブのペアでサービスを担当させる、新人はサブ担当として、実際に手を動かしたり、手順を考えたりしてもらい、メイン担当は手順の確認や設計を行う。それを経験豊富なエンジニアがチェックする」と述べた。

最近はクラウド利用がメインなので、インフラの作業部分をツール化することは勉強になるので、若手や新人に実施してもらい、自動化も進めながら勉強してもらっているそうだ。

インフラエンジニアに向いている資質とは?

7個目のディスカッションは、インフラエンジニアの資質をテーマに行われた。馬場氏は、「ベンチャーの社員としては、一緒に会社を創っていくという感覚がほしい。加えて、エンジニアとしては、自分で伸びていける人がほしい。また、サービス業に従事する人間として、技術に詳しいだけでなく、お客様への説明や対応ができ、お客様を満足させることができるようになってほしい」と話した。

さらに、「こうしたことは、自分で努力して身につけるしかないと思うので、課題を見つけて対応して習得できる人じゃないとIT分野では対応できないと考えている」と続けた。

藤倉氏は、「採用活動をずっと担当しているが、一番大事なことは『この人と一緒に働けるな』と思えるかどうか。お互いに尊敬できる人であってほしい」と語った。

インフラエンジニアとして伸びる人の特徴は何か?

次は、インフラエンジニアとして伸びる人の特徴について意見交換が行われた。藤倉氏は、「動くモノを作ることができて、周りの人を説得できる人は伸びる。逆に、口だけであれこれ言う人はなかなか評価されない。動くモノを作って、デモができる人はどんどん採用されて、伸びていく」と、実践力の有無がカギを握ると指摘した。

安部氏は、「どれだけ場数を踏んできたかが、対応力に出る。厳しい判断の場をいくつも経験するには、膨大にあるタスクを1つ1つ整理しながら進めていく力が求められる。スピーディな対応が求められる時、手順を書き出しながらまとめてそれを実行していく必要がある。それを実現するために、日頃から、自分で内容まとめたり、アウトプットしたりすることで整理している人が強い」と説明した。

馬場氏は、「毎年10人程度のアルバイトを雇用して育てている。かれらを見て感じた傾向の1つが、自宅にサーバを立てて実証環境を構築し、サービスを立ち上げるかが成長のカギを握っているということだ。自分で手を動かさないと技術は身につかないし、実際にやってみないとわからないこともある」と、藤倉氏と同様、行動力と実践力の大事さを説いた。

桑野氏は、「検証や調査に対して疑問を残さない人は強い。というのも、他の知識が入ってきた時に、前の知識が曖昧だと付随した知識が曖昧になり、結局どこにも自信が持てないまま進んでいってしまうから。一つ一つコツコツと知識を貯めている人は最終的に伸びていると感じる」と述べた。

自由に転職できることになったら、どのような仕事がしたいか?

仮に、今の自分の仕事やキャリアに関わりなく、自由に転職ができることになったら、どのような仕事をしたいか? 9個目のディスカッションはちょっと"夢のような"テーマの下、進められた。

馬場氏は、「自社サービスを展開し、エンドユーザーと直接やり取りする関係を持ちたいと思っている。今はアウトソーサー。アウトソーサーとしてのクオリティの高め方と、自社サービスとしてのクオリティの高め方を体験したいを考えている」と話した。

桑野氏は、「オンプレミスな環境からクラウド環境への動きは進むだろうが、物理層が好きなエンジニアは必ずいる。そうした人たちが活躍できる場は、クラウドベンダーだと思っている。ITが全般的に好きな自分としては、物理層からソフトウエア層までクラウドじゃないとダメということはないと考えている」と述べた。

安部氏は、「『クラウド基盤に集中する』『自社サービスを集中する』という2つの道があったとしたら、両方ともやりたいと思っている。今は、クラウドを使ってどのようにシステムの自動化するかを考えることが多いが、かといって、サービスの担当から外れて、このままクラウドの基盤に集中するのは寂しい。サービスも担当して、エンドユーザーがどう反応しているかを見ながら、クラウド基盤の対応もしたいと考えている」と、クラウドビジネスに対する思いを語った。

また、藤倉氏は「転職ありきでなく、何ができるかが重要。今は自分の出した計画に対し予算が出て、インフラを構築し、サービスができていくという環境なので、自分が考えているビジネスモデルが会社とマッチするか、そのビジネスモデルを説明できるかを重視している」と説明した。

ちょっと近くて少し遠い4年後、現在のインフラエンジニアは何をしているか?

最後のテーマは、近くて遠い4年後のインフラエンジニアの将来について、ディスカッションが行われた。

藤倉氏は、「事業規模や社会環境によって選択肢が広がってきていると考えている。こうした広がる選択肢を吸収し、会社の事業にどうやって反映させてプラスにするかを考えて実践できるようなインフラエンジニアを目指したい。4年後、『お前がいるから会社が伸びるんだ』と言われるインフラエンジニアでありたい」と、自身の希望も含めて、インフラエンジニアの将来の姿を示した。

安部氏は、「プログラマブルなインフラのプログラマーをやっていたい。今もクラウドのAPIでハードウェア層に近い部分の設定は簡単にできるが、今後はミドルウェア層までAPI化され、アプリケーションのフレームワークに実装されることもあるだろう。今後は、ハードウェア層に近い部分のプログラムがパターン化され、ミドルウェア層の操作も含んだフレームワークとなっていると考えている。そのフレームワークを開発し、また利用してサービスを構築するようになっていたい」と説明した。

桑野氏は、「今後、開発と運用の垣根はなくなっていくだろう。クラウドの良いところはAPIが整備され、プログラマブルであることだと感じている。結局、インフラエンジニアも、プログラマーとほぼ同じことができるようになると思っている。そして、アプリケーションエンジニアもインフラエンジニアもいなくなり、すべてのエンジニアがひととおりの作業ができるうえで、アプリに近い部分が得意なエンジニア、インフラに近い部分が得意なエンジニアといったくくりができると考えている。ユーザーのニーズに合わせて、時にはオンプレミスな環境、時にはクラウドといった使い分けが求められる。『ユーザーを楽しませる』という目的に対し、必要な手段を適切に選択できるエンジニアでありたい」と、ユーザーの視点からインフラエンジニアの将来像を語った。

馬場氏は、「オンプレミス環境の仕事は完全にはなくならないが、新規案件の1割程度しかない現状を考えるとほとんどなくなってしまうのではないだろうか。クラウドのプログラマブルな部分で勝負することが増えてくると思う。そうなると、今までよりも作業の難易度は上がっていくわけで、エンジニアは考え方を変えなければならない。考え方の切り替えが必要になることを啓蒙していく必要があるかなと思っている」と述べた。

          *       *       *

以上、クラウドを中心に「エンジニアサポート新年会2012 CROSS」の様子を4回にわたり、お届けしてきた。4本のレポートの共通タイトルを「4年後には職業がなくなる!? クラウド時代のインフラエンジニアの未来」としたが、すべてのスピーカーの方々に共通していたのは、「インフラエンジニアは不要な存在にならないが、インフラエンジニアに求められるものは変わる」という見解だった。

今後、インフラエンジニアの幅は広がり、開発と運用の垣根はどんどん低くなっていく。これまでインフラエンジニアがやっていたことをプログラマーがプログラムに起こして、インフラを制御するといった世界に向かっていっていると、皆さんが感じているというわけだ。今回のイベントの模様は動画でも公開されており、公式サイトもしくはUSTREAMで閲覧可能なので、興味がある方はアクセスしてみてもらいたい。

最後に、スピーカーの桑野氏、安部氏、藤倉氏、馬場氏、モデレーターの富田氏、そして会場参加者の方々への謝辞で締めくくりたい。

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