ngi group メディアプラットフォーム事業部・森嶋大樹氏

国内最大級のAndroid関連イベント「Android Bazaar and Conference 2012 Spring」が3月24日、東京大学 本郷キャンパスで開催された。本稿では、モバイル広告の新しいマネタイズ手法について解説した、ngi group メディアプラットフォーム事業部の森嶋大樹氏の講演のレポートを紹介する。

森嶋氏の講演タイトルは「SSPを使った広告マネタイズの方法と事例」。スマートフォンアプリやモバイルサイトなどのバナー広告を高収益化する方法を、最新のトレンドをまじえて紹介する内容となった。

インターネット広告の変容の歴史

森嶋氏は講演の冒頭で、インターネット広告の変容の歴史を紹介。黎明期のインターネット広告は、Webページに広告を表示するだけの「看板広告のようなもの」であり、顧客のターゲティングがなされていなかったが、その後、媒体の属性や掲載位置により、ターゲティングが図られるようになったと述べた。さらに、Google AdsenseなどのWebページのテキストの内容に沿って広告を表示する手法が登場。次に、Cookieの情報からユーザーに合った広告を表示する行動ターゲティングの手法が登場し、ターゲティングの精度が上がっていったと解説。森嶋氏は、「インターネット広告の歴史は、ターゲティング精度の歴史」であると指摘した。また、ターゲティング精度が上がるごとに広告単価が上がっているとも述べた。

行動ターゲティングよりもさらに進んだ広告手法として、森嶋氏は「RTB(Real-Time Bidding)」を取り上げたが、その前にRTBを説明する前提として「SSP(Sell Side Platform)」について解説した。SSPとは、アプリなどの媒体における広告収益を最大化させる仕組みで、AdsenseやAdmobといった複数の広告ネットワークを一元管理し、その中から媒体に合った収益性の高い広告を選択して表示するというもの。森嶋氏は、SSPを利用することで媒体の広告が最適化されるとした。

インターネット広告の変容と広告単価の変化

米国のモバイル広告費の伸びの予測

現在では、広告ネットワークを利用した広告出稿が主流となっている

複数の広告ネットワークを一元管理し、その中から収益性の高い広告を表示するSSPの仕組み

RTB(Real-Time Bidding)とは?

SSPの仕組みを取り込んだ広告手法の新形態がRTBとなる。RTBでは、SSPのほかに広告ネットワークの代理店らが持つ入札システムの「DSP」が関与し、オークションによりSSPの広告枠をDSPが競り落とす。インプレッションが発生した瞬間にオークションが行われ、入札額が最も高い広告が表示されるという、リアルタイムなやりとりが特長となっている。媒体側としては、入札効果により高収益が望め、広告主側としてはユーザーごとに広告を買い付けられるというメリットがある、と森嶋氏は解説。米PubMatic社のRTBサービスを採用したことにより、eCPM(広告表示1000回あたりの収益額)が64%アップした事例などを紹介した。

インプレッションが発生した瞬間にオークションが行われ、入札額が最も高い広告が表示されるRTB

RTBの採用により、eCPMが64%アップした事例

広告ネットワーク、純広告、RTBを組み合わせてさらなる収益化を図れるというngi groupの「Adstir」の仕組み

森嶋氏は、アプリなどの媒体が広告マネタイズを成功させるために注力すべきポイントとして、SSPを使った広告ネットワークの運用とRTBの採用に加えて、広告枠の設計を挙げた。広告の読み込み時間のほか、掲載位置も数ピクセル単位で調整するなどの工夫が重要と指摘。また、ユーザー情報を立体的に把握することや、他のアプリやWebサイトからトラフィックを流入させるというトラフィック流通設計も同時に重要であるとした。森嶋氏は、これらの広告関連の取り組みに、媒体自体のコンテンツ力がかけ合わさることで、広告収益を最適化できると述べ、講演をまとめた。

(記事提供: AndroWire編集部)