この日の製品発表は、音声アシスタント機能Siriの対応言語に日本語が加わるiOS 5.1で始まり、iTunes in the Cloudへの映画の追加、iTunes Storeの映画/TV番組の1080p対応、そして1080pの高画質再生が可能な新しいApple TVと、前半は非常に速いテンポで進んだ。

iOSは5.1にアップデート

1080p対応の新Apple TV

iOSの強化はすなわちポストPCデバイスの強化であり、iCloudの強化はポストPC時代のデジタルハブの強化である。そして1080p対応はポストPCの今年のキーワードの1つだ。1080p HDコンテンツは、これまでパソコンの世界のものだった。スマートフォンやタブレットには再生すら重荷であり、またクラウドサービスに組み込むにはコンテンツのサイズが大きすぎた。しかし、ポストPCデバイスやクラウドサービスが1080pのHDコンテンツを扱えるようにならなければ、いつまでもポストPCはモバイル分野での出来事にとどまってしまう。再生、配信、そして作成のすべてにおいて、これらが1080pを克服することで、パソコンをデバイスの1つに格下げし、さらにHDテレビも含めたポストPCの世界が現実味を帯びてくる。

このように、まず1080p対応の下地づくりを印象づけた上で、Cook氏は新しい「iPad」を発表した。キーノートでは「Retinaディスプレイ」「iSightカメラ」「1080p HDビデオ録画」「音声入力」「4G LTE」の5つのポイントを取り上げた。

2,048×1,536ドットのRetinaディスプレイは、15インチ(約38センチ)の近さからでも人の目ではピクセルを認識できないという。Phil Schiller氏(ワールドワイド・マーケティング担当シニア・バイスプレジデント)は「Retina(網膜)という名前にふさわしい」と語った。

さまざまな表示でiPad 2と新iPadの表示を比較。これはぜひ店頭などで実際に見ていただきたい

310万ピクセルのディスプレイを描画するために、プロセッサはクアッドコアグラフィックスを搭載するA5Xに変わった。5メガピクセルのiSightカメラは、5枚構成で開口部がf/2.4と明るいレンズを装備する。HDビデオの撮影機能では、自動手ぶれ補正が利用可能。こうした、ある面ではノートPCを上回るようなリッチな機能を備えながら、通常の使用におけるバッテリー駆動時間はiPad 2と同じ10時間。電力食いと言われる4G LTEサービスを使用しても9時間を維持する。しかも、本体サイズ(Wi-Fi+4Gモデル)がW241.2×D185.7×H9.4mm/662gと、iPad 2 Wi-Fi+3Gモデル(W241.2×D185.7×H8.8mm/613g)よりも若干厚くなっただけである。

単純にピクセル数を比較すれば、Retinaディスプレイの新iPadは1,920×1,080ドットのHDテレビよりも100万以上もピクセル数が多い