【インタビュー】

平野友康×竹中直純対談 -『ソーシャルメディアの夜明け』に付属するシェアカードとは

書籍『ソーシャルメディアの夜明け』には「書籍++」プロジェクトとして2冊分の電子書籍を入手できる「シェアカード」が付属する。つまり紙の本を買うと、電子書籍ライセンスが無料で付いてくるのだ。その電子書籍を提供しているのがBCCKSで、本企画は平野氏がFacebookに公開した原稿から、BCCKS・竹中氏が電子書籍を作成したことをきっかけに始まった。平野氏も以前からBCCKSに対して「面白いことをやっている」という印象をもっていたとのことで、急ピッチながら"本に電子書籍用コードを付けること"にチャレンジしたのだ。

――平野さんと竹中さんが協力されたプロジェクトが「書籍++」ですが、そもそもデジタルステージで電子書籍をやろうという話にはならなかったのでしょうか。

平野友康氏

平野:もちろん考えました。ただ電子書籍を作るなら凝ったものを作りたいと考えていたんです。"成長する電子書籍"を見せたいというか、自分らでプログラムを作ってイチから手掛けてみたい。2012年から真剣に電子書籍に取り組もうと思っていたんですよ。でも、それはアッと言わせる電子書籍を作りたいだけだったと気づいたんです。一方でFacebook上では「とにかく電子書籍だけでも欲しい」、「なぜ電子書籍がないの? 」というコメントがバンバン入ってくる。「平野さんがやるのに電子書籍ないの? 」みたいに言われて、もう「だったら電子書籍付ければいいんでしょ! 」って。

竹中:え? そこはちょっと半ギレ気味だったんですか!?(笑)

平野:いやもう、この時点でだいぶテンション上がってまして(笑)。好き勝手にやって、リスクも自分で背負おうと決めて自由に作っている本だから、じゃあそれをもっと謳歌してやろうじゃないかと。そう思って、冷静に考えると"電子書籍が付いている本"って今のところ他で聞いたことがないんですよ。だからこれは一緒に楽しんでくれる人と組んでやりたいと思ったんです。

竹中:(平野君が)Facebookで原稿を流していた時期に、「これくらいの原稿があればBCCKSで読めるものが作れる」とその原稿をBCCKSで勝手に本の体裁に仕上げて平野君にメールしたんですよ。そうしたらBCCKSが今後どうしたいのかまで興味を持ってくれ、熱いメールが来たんです。「電子書籍の周辺の未来のメディアって何なのかを含めて考えていける人は竹中さんしかいません」と。

まぁ実際には、"一緒に半ギレになってテンション上げて欲しい(笑)"っていうオファーだったと思うんですが。「じゃあ、やりましょう」と返事をして「書籍++」が始まりました。

――なぜBCCKSの竹中さんに声を掛けたんでしょう?

平野:前からBCCKSが電子書籍なのに本が注文できて、しかも紙にこだわっていることが面白いと思っていて、これまでに何冊か本を注文したことがあったんです。そして、届いた本を見てみたら、オンデマンドっぽくない変わったサービスというか、きちんとした本の体裁になっているものが手に入れられるなとちょっとビックリしました。

BCCKSは「テキストがちゃんとした本になる」、今回の書籍は「本を買ったら電子書籍が付いてくる」という真逆の発想なんですよね。真逆同士ぶつけたら絶対面白くなるんじゃないかと。案の定、この前打ち合わせしていたら「BCCKSでソーシャルメディアの夜明けを注文してオンデマンド印刷で本にしないか」と竹中さんから提案をもらって。本を買って電子書籍? それとも電子書籍を買って紙の本? ある意味メビウスの輪的な発想ですよね。

竹中直純氏

――その場合はBCCKSの体裁(上製本)で本がもらえると。

竹中:そうですね。サイズは文庫本や新書版といった4つの判型から選べるので、自分の好きな読書スタイルから選ぶことができます。

――紙があるのにBCCKSからも発注できる。それはマーケティング的な考え方で行けば「チャネルを増やす」ことに繋がりませんか?

竹中:それは確かにそうですが、僕の中では「正座をして書いた本をありがたく買って読むという時代が長く続いたけど、それは変わるだろう」というほうがイメージに近いですね。

どう変わるかは誰にも分かりませんが、今のスタイルが徐々に変わっていくのであれば、紙の本はひとつの有力なメディアであることは間違いありません。今のサービスは、それをいきなり捨てようとしているんですよ。でもそこにいきなり行けと言われても日本の出版社や読者は戸惑うだけです。

自分で電子書籍をやっていて思うのですが、写真を紙に束ねるだけで違う質感で見える。この感じは絶対残るので、そういう感覚も大事にしたい。紙の良さもひっくるめて全部大事にするというコンセプトがBCCKSなんです。

それにアプリケーションレベルで作っているので、平野君みたいな人に多少変なことを言われても対応できます(笑)。実はこの(シェア)カードも平野君のために開発したもの。コード生成から本の電子版に結びつけるシステムを新たに作っています。これは他のサービスでは絶対にできないでしょう。この対応力を含めた部分が、(平野君が)僕に期待してくれてた部分じゃないかな。

――「書籍++」はどういう意図で付けられたネーミングですか?

竹中:「C++」というコンピューター言語がありますよね。これはC言語を拡張したものですが、恐らく「++」には"拡張"という意味合いがあるだろうと。全員に通じるとは思いませんが、恐らく若い世代には「++」の意味合いを共有してるんじゃないかと思いまして。"書籍を拡張するような名前"として冗談で言ったら通ったという感じですね。

平野:そうそう。しかも竹中さんが「++っていうぐらいだから2個じゃない? 」っていうから書籍にはしおりが2本付いているし、電子書籍のコードも2冊分付いてくる。2週間後に入稿というタイミングでこのプロジェクトがスタートしたので、印刷屋さんもびっくりするわ、カードを入れたことで1冊あたりの単価は上がるわで、実現まで結構大変でした(笑)。

でも電子書籍を考えて見えたことも意外とあって。たとえば本には物理的な(ページ数という)限界があるけど、電子書籍はボツ原稿を復活させたり、言い足りなかったことを追加したりと色んなことができるんですよね。

竹中:ボツ原稿の収録は、映画のDVDでも良く見られる手法ですよね。電子書籍はDVDと同じスタイルではないにしろ、人気の出るやり方が今後確立されていくでしょう。この確立方法のモデルケースにもこの書籍がなっていくんじゃないでしょうか。

――本という"一本の幹"ができたことで枝も増えていくというイメージですね。

平野:そうですね。僕は勝手にこれを「プロジェクト」としていて、読者もプロジェクトメンバーにしちゃってますから。電子書籍をダウンロードできるというより、正確にはプロジェクト構成員になってもらい、書籍の未来を一緒に考えていくということに同意した上で入手できるというコンセプトです。

だから声を大にして言いたいのは"シェアカードはおまけじゃない! "ということ。シェアカードを本を売るための特典にしちゃ絶対にダメだと思っていて、言い方は結構こだわっています。

竹中:本の本体は、中身でしょう。でも本のパッケージが優れていたために何千年もの間に一体化してしまっていました。それを中身(コンテンツ)で純化させて分離するためのツールとしてBCCKSがあり、シェアカードがあるという風に受け止めてもらえると成功になるのではないでしょうか。そうはいってもおまけと思われてしまうかもしれませんが。

平野:そこは強く全否定しますよ。理想的なシェアカードの使い方でいえば、1冊は興味を持ってくれそうな人に渡してもらう。もらった人が紙の本を買ってくれるとなお良い。そして面白いのが「1枚余ってる」という状況です。僕が読者だったら「これどうしよう」ってウキウキしますよ。

電子書籍をやってみて感じたのは、とにかく世の中には様々なしがらみがあって怖がっていたりするけど、悪い人はどこにもいないということ。「アイデアはある、でもできない」という状況に陥っているんですよね。

僕自身は何もしがらみがないし、BCCKSとも緩く自由に一緒にできるところはやるというスタンスなので、読者の人にも同じ空気感で手にとってもらえたら良いなと思っています。(出版)業界の人もいろんなしがらみでカチカチになっている部分が多いと思います。そこで(シェアカードを見て)「こういうのも有りだよね」と仕掛ける側の人たちに感じてもらえたら嬉しいですね。

――電子書籍が話題になる一方で、日本式のやり方に悲観的な見方をする人も多いようですが……。

竹中:このまま電子書籍がアメリカ先行型の開発で日本のマーケットに対してどうフィットしていくかを考えると、多分2~3年後にはブラウザ戦争と同じような状態が勃発します。日本にはブラウザを自前で開発しているような会社がほぼゼロに近いので、結局負けてしまうんです。電子書籍でいえば、海外で「EPUB3.0」(電子書籍フォーマット)が登場して「EPUB3.0さえ普及すれば大丈夫」といった論調もありますが、それもやはりHTML5以降の規格策定やJavascriptの動作サポートなど、ブラウザ作成のノウハウを積み上げてきたグーグルやアップルなどのメーカーが主力の戦場になってしまって日本は負けてしまいますよ。

でも読者は、そこに興味がないんです。ただ落ち着いて本が読みたいだけ。そこにフォーカスを当てる会社がなぜないのかというのが僕にとっては疑問ですね。BCCKSは日本市場向けに国内で開発して、かつコンテンツも揃うものが絶対に必要だと思ったことが起ち上げの大きな理由になっています。これはもうビジネスというより、今のままだと本を読む人がすごく迷惑するだろうと思う危機感のようなものです。

現実世界ではソーシャルメディアも電子書籍も、日常的に自分が付き合っていくツール、道具、テクノロジーになっているんです。それが通じる人があまりビジネスシーンでいないことがちょっと不思議で仕方ないですね。

――ソーシャルメディアも同様に、楽観説と悲観説の両方をはらんでいます。それでもソーシャルメディアは日常の一コマになる。『ソーシャルメディアの夜明け』はその"気付き"の第一歩になるかもしれませんね。

平野:そもそもこの本はソーシャルメディアに詳しいとか興味を持っているとかではなくても、"自分で何かをやってみたい"と思う人たちがこれを読んで、ハッと気付いてくれたらいいなと思いながら書いたものです。映画だってデジカメがあれば撮れるし、今は色々なことができる時代でしょう? だけど今までは、それって技術的にできるようになっただけだった。「じゃあ具体的なステップはどうすればいいの? 」という<答え>がソーシャルメディアには全部詰まっているんだと僕は思ってます。それをひとつひとつ、掘り起こしていく、見つけていく、磨いていく。僕はそういう仲間を増やしていきたいです。

今の時代、マス的に行くか個人主義に行くかで言えば、どっちにでも転ぶ人がほとんどです。だからこそ個人中心の話、視点に注目する人たちを増やしたい。そのほうが絶対に面白いと思うし。その狭間で揺らいでいる人をひとりでも多く個人中心の新しい時代感のほうに倒していきたいですね。

竹中:1995年くらいに日本で「インターネット」という言葉が普及しはじめた後、新しいインターネットメディアは個人のメディアだと、この15年近く繰り返し言われてきましたよね。今はこの波が3回目くらいなのかな? じゃあこの後、4回目、5回目の波が来るかというと多分もう来ないですよ。当たり前になっちゃうから。

そういう意味ではアオリ文句としては「この停留所で乗り遅れるな、バスに」。そんな感じの雰囲気は平野君の意思とは別にまとわした方が良いかもしれないですね。

平野:ファイナルコール的な?

竹中:そうですね。これで乗れなかったらヤバイよみたいなね。技術とは別に制限があって、そこで初めて生まれるカルチャーみたいなものが面白いんじゃないかと思いますね。



「今の空気感だからこそ書けること」が詰まった『ソーシャルメディアの夜明け』は、平野氏らしい視点と言葉に溢れている。「なんでソーシャルメディアってワクワクするんだろう」という素朴な疑問が、平野氏自身が体感した事柄で回答されている本だ。さらにそのワクワクを周囲に伝播する方法としてサポートするのが「シェアカード」。これをBCCKSがバックアップすることで、いつでも好きな形で、自由な体裁で読むことができる。

昔ながらの「この本面白かったから読んでみてよ」というコミュニケーションを新しい方法でトライする。「ファイナルコール」に呼応するかどうかは受け手の自由。しかし、少しきっかけが欲しいと感じている人には「書籍++」というプロジェクトも含めて『ソーシャルメディアの夜明け』を体験してみてはいかがだろうか。

撮影:石井健



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