米Xilinxは1月31日(現地時間)、同社の7シリーズFPGAをターゲットとするTarget Design Platform(TDP)を新たに発表した。これに先立ち1月27日に日本法人であるザイリンクスがこの新しいTDPに関する記者説明会を行った。またこの際には同社の特定市場向けのアーキテクトによる、市場動向についての説明も行われたので、今回はこれをまとめてご紹介したい。

新しい3つのTDP

まず同社のTDPについて同社の神保直弘氏(Photo01)が、既存の7シリーズのラインナップについて簡単に触れた後(Photo02)、同社のTDPの元々について説明した(Photo03)。

Photo01:説明を行った神保直弘氏(ザイリンクス マーケティング本部 PRマネージャー)

Photo02:縦軸がファミリー数、横軸がファミリー最初の製品の投入から最後の製品登場までの時期である。従来はVirtexとSpartanという2つの製品で全領域をカバーしてきたが、利用される範囲の広がりにあわせてVirtex/Kintex/Artixの3つのFPGAと、Cortex-Aコアとの混載構造のZynqという4つの製品ラインナップを投入する、という話

Photo03:コモディティな部分はなるべく標準パッケージとして提供することで、顧客は製品の差別化に集中できるようにするというもの

TDPというコンセプトは、同社が2009年に「Virtex-6/Spartan-6」で導入したものであるが、28nmプロセス採用の7シリーズではここに、3つのコンポーネント追加を行った(Photo04)。まずベースプラットフォームにリファレンスデザインを新たに提供するようにし、またドメイン特化ではAnalogとVideoを新たに追加している。ただこのドメイン特化向けのAnalog/Videoのソリューションはもう少し後での発表ということで、今回はBase Platform向けの新Reference Designの紹介が行われた。

Photo04:氏によれば6シリーズで導入したTDPというコンセプトが顧客に好評だったので、引き続きこれを発展させてゆくことにしたとの事

今回紹介されたのは、Kinetis-7を搭載する2製品とVirtex-7を搭載する1製品である。まずローエンドがKinetis-7を搭載するKC705ベースのもので、比較的標準的な構成になっている(Photo05,06)。その上位製品にあたるのがVC707で、こちらはVirtex-7を搭載する高い性能処理とデータ帯域向けの構成となっている(Photo07,08)。

Photo05:KC705キット。強いて言えば汎用向け。HDMIがでているあたりが面白い

Photo06:こちらの写真から、評価ボードそのものがPCI Expressの拡張カードになっている事が判る

Photo07:ボード以外は概ねKC705と同等の構成

Photo08:このアングルだと、GbEとは別に10GbEが搭載されていること、DDR3 SODIMMのソケットがあることなどが見て取れる。またPhoto07にはないが、こちらもHDMIを出力できる模様。やはりPCIeのカードとして利用できる

この2製品はXilinxからの販売となるが、これとは別にAVNETからFPGA DSPキット(Photo09,10)も提供される。

Photo09:高速ADC/DACのFMCモジュールが追加されるのがハードウェア面でのKC705との違い。ソフトウェア面では、信号処理向けにMathWorksのMATLAB/Simulinkの評価版が追加されている

Photo10:基板上にFMCコネクタ経由で付く赤いカードが追加されたADC/DACカード

さて、この3種類の製品が従来と異なるのは、AMS(Agile Mixed Signal)カードが追加されることだ(Photo11)。7シリーズには新たに12bit A/Dコンバータ(ADC)が2つ搭載されており(Photo12)、これを使うことでBOMの低減や高信頼性が図れるという話だった。

Photo11:AMSは7シリーズの全製品でサポートされる、という事だそうだ

Photo12:AMSが便利なのはADCからの信号をすぐにFPGA側で後処理可能な事で、ここで柔軟な信号処理を(DSP機能などを使って)実現可能な点が、そこらのADC内蔵MCUとの違い、との事

元々、なぜADCを入れたかというと、これはダイ上の温度センサや、供給電圧などを監視する電圧センサを接続するためにADCを搭載する必要があり、それであればちょっと拡張して汎用入力も可能にしよう、という事らしい。元々の目的がその程度の話なのでADCの能力は12bit/1MSPSという程度で、これは2~3ドル程度のMCUに内蔵されているものとそれほど機能的には変わらないが、それでも外付けにするよりは部品/実装コストの節約や(システム全体としての)信頼性向上につながる、というのが主な利点だとしている。

Photo13:ADCはともかくAgile Mixed Signalの方は、確かに安価な汎用MCUではちょっと荷が重い

逆に、より高精度/高サンプリングレートなADCとか、あるいは逆にDACの搭載などは考えていないという話であった。こうした用途には、先のAVNETのDSPキットの様に、別にADC/DACをFMCで拡張するという形を推奨しているそうだ。そういう事情なので、AMSボードは単なる入力基板でしかなかった(Photo14~16)。

Photo14:BNCのアナログ入力ポートが4つ装備され、これのレベル調整用のアッテネッターが横に装着されている

Photo15:反対側には、3.5mmΦのオーディオジャックと思しき物が3つ装着されている。これも入力ポートの模様

Photo16:カードの中央には、どのポートをどこにつなぐかの設定を行うジャンパピンが。本体との接続は写真左上にあるコネクタからフラットケーブルで行う。このフラットケーブルではDifferentialの形でAnalog信号をそのまま送るようになっているとか

ちなみにTDPにはメザニンコネクタ経由でドーターカードを接続することで拡張可能だが、このドーターカードは6シリーズ用のものを原則としてそのまま利用可能(Photo17)という話で、現在は50種類の検証が終わっている(Photo18)という話であった。

Photo17・18:もともとTDP自体は最小限の機能に留めており、必要となる外部I/FはFMC経由での拡張という方向性であり、これは6シリーズのときから変わっていない。ただデバッグとかアプリケーションで最小限必要となるハードウェアリソースが次第に増えてきており、このためPCIeやGbE、オンボードLEDなどは標準で搭載しており、今回はさらにAMSまで追加された形である。これを超えるものは全部FMCで、という訳だ

なおTDPは今回の3製品でこれで終わりという訳ではなく、今後40種類以上のTDPを出すことを予定しており、今回はその第一陣という話であった。