日本マイクロソフトは1月31日、2002年に米Microsoftのビル・ゲイツ氏が提唱し、取り組みを開始した「Trustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)」が今年で10周年を迎えることから、Trustworthy Computingへの取り組みと、今後のイノベーション(技術革新)に向けた取り組みを紹介するプレス説明会を開催した。

信頼できるコンピューティングへの取り組みは、2002年1月のビル・ゲイツ氏のメモからスタートする。それは、当時、9.11事件やNimda、Coderedなどのウィルスが猛威を振るったことから、信頼できるコンピューティングのため、開発モデルの根本的な見直しを行うというものだったという。これを受け開発チームは、すべての作業を止めて、数カ月に渡るコードレビューやセキュリティ教育を行ったという。

信頼できるコンピューティングとは、信頼できるコンピューティング環境を構築し、提供するための長期的で協調的な取り組みで、セキュリティ、プライバシー、信頼性、アクセスビリティが中心となる。

信頼できるコンピューティングとは

日本マイクロソフト 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 加治佐俊一氏

日本マイクロト 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 加治佐俊一氏によれば、信頼できるコンピューティングの中心は「Security Development Lifecycle(SDL)」だという。

Windows OSはおよそ3年ごとに製品をリリースするが、SDLは大きな製品の流れのなかで、どういう風にセキュリティを考えながら製品を開発するかを細かく定めたもので、脆弱性の数を減らす、脆弱性の影響を抑制することを目的としており、最近ではAdobe SystemsもSDLを採用しているという。

「Security Development Lifecycle(SDL)」

そして、同社が最近注力しているのがクラウドに対する信頼性で、同社ではSDLのアジャイル版を作成し、対応しているという。加治佐氏は「クラウド上のサービスは比較的ライフサイクルが短く、短期間で変化していくため別の考え方に基づいてサービスを開発する必要がある」と理由を説明する。

信頼できるコンピューティング環境構築に向けた日本での取り組みとしては、エンドユーザーに対する情報の提供や政府機関や業界との連携を行い、政府機関や業界との連携では、検察庁に対する技術支援、JPCERT/CCとのSCP(Security Corporate Program)、GAIAIS、SAFI等を通じた日本企業との協力、DCC(Digital Crime Consortium)を通じたサーバ犯罪対策を行っているという。

エンドユーザーに対する情報提供

また説明会では、今後のイノベーション(技術革新)に向けた取り組みも紹介。同社は「人間中心のコンピューティング」、「NUI」、「端末+クラウド」という3つのビジョンにもとづいて開発を行っているという。

「人間中心のコンピューティング」では、コンピュータが人間を理解し、補助していくようなアシスタントとしての役割を担えるようにすることを目指し、「NUI」は、自然なインタフェースの開発、「端末+クラウド」は、どこでもつながり、データを活用できる環境づくりを目指すという。そして、とくに医療や環境分野に注力しているという。

そして、研究中の技術として、光を組み合わせた新しいインタラクティブなシステム「HoloDesk」と、インンタラクティブなマルチタッチアプリケーションを可能にするウェアラブルな投影システム「OmniTouch」が紹介された。

「HoloDesk」

「OmniTouch」

HoloDeskは、通過的な3Dのイメージを自分の手を使って操作できるという技術。一方、「OmniTouch」は、肩に装着したシステムを使って、書籍、壁、テーブル、人体などあらゆる場所をディスプレイとして利用し、それらを自分の手で操作できるUI。詳細は以下のリンク先動画を参照してほしい。

「HoloDesk」
「OmniTouch」