第26回となる21世紀医療課題委員会が2011年12月13日、東京都の日本医科大学同窓会館「橘桜会館」で開かれた。テーマは「『ジェネリック医薬品使用促進協議会』を考える」で、同協議会の現状と問題点などが話し合われた。

2011年12月13日に開かれた、第26回となる21世紀医療課題委員会

ジェネリック医薬品の使用、都道府県間で格差が存在

21世紀医療課題委員会は、医療周辺問題のさまざまな課題をテーマに討議を行ってきた。第26回となった今回は、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の現状と課題をテーマに、医薬品会社などから約40人が参加。2つの講演と、それに続く議論が行われた。

マイラン製薬 情報部部長の浅田司氏

講演は、マイラン製薬 情報部部長の浅田司氏が「ジェネリック医薬品使用促進協議会の現状と問題点について」と題して、ジェネベル 代表取締役社長の太田進氏が「地域でジェネリック医薬品使用促進機運を作るには」と題して行った。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品の特許終了後に、先発医薬品と品質・有効性・安全性が同等であるものとして、厚生労働大臣が製造販売の承認を行っている医薬品。一般的に、開発費用が安く抑えられていることから、先発医薬品に比べて薬価が低い。政府は、患者負担の軽減や医療保険財政の観点から、「2012年度までに、後発医薬品の数量シェアを30%以上」という数値目標を設定した。

浅田氏の講演によると、これを受けて厚生労働省は、2007年10月15日に、目標達成に向けた「後発医薬品の安心使用促進プログラム」を策定し、国及び関係者が行うべき取組みを明らかにした。ジェネリック医薬品の使用促進に係る環境整備の具体的取組みとして、都道府県レベルにおける「協議会等」の設置・運営が進められてきた。2011年7月末現在、47都道府県中42の都道府県で協議会等が設置された。

浅田氏は講演で、協議会等が設置されていない都道府県や、協議会等を設置したが十分に機能していない都道府県等が存在すると指摘。後発医薬品割合(数量ベース)を見ても、都道府県間での格差が存在すると述べた。

厚生労働省では、ジェネリック医薬品の使用促進に先進的に取り組んでいる都道府県・薬局などを対象にした内容・効果について、先進事例に関する調査研究事業を民間調査会社に業務委託。27機関・団体を対象に調査が実施された。調査は、「ジェネリック医薬品使用促進の先進事例に関する調査」という報告書にまとめられた。

浅田氏は、事例の概要について報告。福岡県や富山県、北海道などの先進事例を紹介した。浅田氏は事例から得られた示唆として、(1)都道府県における協議会等の設置・運営上のポイント、(2)医療機関におけるジェネリック医薬品使用促進のポイント、(3)保険薬局におけるジェネリック医薬品使用促進のポイント、を説明した。

事例の概要

今後の課題と対策については、東京都や大阪府など、協議会が設置されていない都道府県があることや、協議会への各方面からのサポートなどを挙げ、「医師会を巻き込むことがKeyである」と述べた。

成功の根本要因は「人的要因」と「実務的要因」に

ジェネベル 代表取締役社長の太田進氏

続いて、ジェネベル 代表取締役社長の太田進氏が「地域でジェネリック医薬品使用促進機運を作るには」と題して講演。太田氏はまず、全国のジェネリック使用の都道府県別の順位を示した。これによると、沖縄県が1位で、鹿児島、熊本と続く一方、秋田や徳島、東京などの順位が低いことが明らかとなった。

太田氏は、「全国の先進事例を読み解く」として、成功の根本要因が(1)人的要因 - 関係者の相互理解と信頼に基づく協力と連携、(2)実務的要因 - 現場の問題を解決する工夫、にあると説明。行政の役割の一つとして、自ら掲げた事業計画と目標について、異なる立場の関係者間の利害を調整し、合意を形成しうる制度を設計し施策を遂行することにあるとし、ジェネリックの使用促進についても、行政は関係者間の相互理解と信頼醸成を図り、ジェネリック使用促進に向けた関係者の協力関係と連携を高める役割が求められていると述べた。

全国のジェネリック使用状況 : 使用率変動

また、地方自治体の安心使用協議会等、地域の関係者が一同に会して意見交換しながら対策を検討する場は、行政がその役割を果たす上で必要な組織といえると話した。

さらに、全国の先進事例における、成功の個別要因について、「具体的なニーズがある」「断固とした推進者がいる」「関係者が情報と意識を共有し連携している」「現場の問題解決に有効な対策がとられている」ことなどを挙げた。全国の先進事例における「推進のメカニズム」については、「地方自治体の協議会」「基幹病院」「関係組織の連携」「メーカーの協力」などについて説明した。

太田氏は、足立区での推進活動にも言及。博慈会老人研究所の福生吉裕所長が主宰する「ジェネリックを考える会」の活動内容に触れた上で、この活動に足立区が注目し、同区の医師会・歯科医師会・薬剤師会の協力を得て、ジェネリックに関する区主催の行事を開催するに至ったことなどを説明した。

太田氏は最後に、「関係者ごとの利害の違い」について述べ、各関係者が利害の違いを認識しあった上で、不利益を減らす具体策を協議し、講じる必要があると強調した。

新規「21世紀医療課題委員会」が設立

講演と討議の終了後、新規「21世紀医療課題委員会」の設立の宣言がなされた。新規「21世紀医療課題委員会」は、会員制とし、発起人より提案があった「医療周辺環境改善サポート機構」(MEISO)による医療周辺環境課題検討委員会や維持会員から検討課題を求め、提起された課題内容などの検討委員会を開設し、年3回以上開催し、変動する少子高齢社会に提言し貢献していくとしている。

また、同委員会として、2011年12月13日付けで、石原慎太郎東京都知事に対し、「少子高齢時代において都民の安心・安全の医療システムがより長く継続できる事を願い、その政策会議なる『ジェネリック医薬品使用促進協議会』を東京都にも速やかに設置して頂くことを要望いたします」とする要望書を提出した。