書籍『新しい単位』のイラストをはじめ、音楽イベント『RISING SUN ROCK FESTIVAL2005』のオフィシャルTシャツデザイン、ラジオ「オールナイトニッポンR」パーソナリティ、舞台『男子はだまってなさいよ!』シリーズへの出演など、多方面で活躍している五月女ケイ子が、5年前に1度挫折したペンタブレットに再挑戦する。

五月女ケイ子
イラストレーター/コラムニスト/役者。2002年、書籍『新しい単位』シリーズのイラストで注目される。また、コントユニット『男子はだまってなさいよ!』や、シティボーイズの舞台に女優として出演している。2010年に女児はるを出産。出産後第一作は昔ばなしのパロディの絵本「バカ昔ばなし」。2011年10月には、3年11カ月振りとなる個展『五月女ケイ子開運展2011』を開催した。現在、アニメDVD第二弾「バカ昔ばなし~その弐~」(TОエンタティメント)が発売中

――これまでペンタブレットに対して、どんな印象を持っていましたか?

五月女ケイ子(以下、五月女)「イラストレーターになる前から父親に"パソコンで絵を描け"を言われていて、5~6年前に一度ペンタブレットに挑戦したことがあるんです。でも、普段の手の動きと操作が同調しない感じがして、すぐに使うのをやめてしまいました」

――では、今回が約5年振りのペンタブレット挑戦となるわけですね。ペンタブレット「Intuos4」を使ってみてどうでしたか?

五月女「昔使ったときとは違って、より紙に書いている感覚に近づいていると思いました。まるで紙に絵を描いているような描き心地で、パソコン上に絵を描くことができました。パソコンだと描いた後に絵を修正できるし、仕上がりがきれいになりそうですよね。普段、筆で絵を描いているときは何度も塗り直しをするので、大抵キャンバスが汚くなっちゃうんです。それが味だとは思うんですけど、仕事によっては綺麗な方が良い場合もあるので。そういう時に使い分けができるといいなと思います。デジタルで描いたものにアナログで手描きを加えたりなど、色々な可能性が広がりますよね」

――元々、パソコンを使って絵を描くことに関して抵抗はありませんでしたか?

五月女「これまでも絵をスキャンして、Photoshop上で着色することはあったので、特に抵抗はありませんでした」

5年振りに挑戦したペンタブレットで、たった30分程度でこの絵を描きあげた

――なるほど。

五月女「ツールや画材などにこだわりはないんです。デジタルのなかでも自分の味や自分らしい絵がどうやったら描けるのかなと考えています。アナログでもデジタルでも、自分らしい絵が描ければいいなと思っているんです。そういうスタンスを目指していますね」

――普段、"自分らしい絵"を描くためにどのようなことを意識していますか。

五月女「技術的に"こういう目を書けば"というのもあるのですが、自分が楽しく描けたり、気持ちを込めて描いた方が、自分らしい絵に近づいているような気がします。あえて、気持ちを込めずに描いてみたりもしたんですが、そうすると絵から"ピュッ"と出てくるものがないんです。"ピュッ"としたものが出てくるのが自分の絵だと思っているので」

――ペンタブレットを使ってみて、意外な発見などはありましたか?

五月女「凄く細かく筆圧を感知してくれるので、"目や口を描くときに凄く筆圧が強いんだ"という自分の癖が良く分かりました。『やっぱり表情を描く際には、凄く力を入れているんだな』とか、改めて自己分析ができましたね。機械によって自分のイラスト制作の癖を分からされた気がします。こうやって自分を客観的に見ることによって、さらに絵が進化していくかもしれないですね」

――もう少し詳しく教えてください。

五月女「ペンタブレットのときと実際に紙に絵を描くときでは、力の抜き方が違うんです。それも面白くて、その力の抜き方によって、絵自体も凄く変わってくると思うので、違う味が出てくると思うんです。私は偶発的に生まれた絵が結構好きなので、そういった意味で、ペンタブレットならではの新しい絵が描ける気がするんです」

すべてペンタブレットで制作した年賀状イラスト

――では今後、ペンタブレットを使うことによって、これまでにない"五月女ケイ子らしいイラスト"が観れるようになるかもしれないですね。

五月女「そうですね。慣れれば本当にアナログな気持ちでデジタルに参入できるかもと思いました。また、このくらい簡単にペンタブレットで絵を描けると、気持ちを込める余裕も出てくると思うので。ちゃんと脱力感が表現できて、デジタルだけど気持ちがこもっているといいですよね」

――ありがとうございました。

インタビュー撮影:石井健