セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏がビジネスの最前線で活躍する人たちを招いて対談する「中野晴啓世界一周の旅」。弊誌では、ワールドインベスターズTVとの同時企画として展開している。その第二回となる「香港編」を今回は紹介したい。

「中野晴啓世界一周の旅」は、セゾン投信のファンド「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の組み入れ先の国・地域の中で、その国・地域の専門家の方とその国の最新情報や真相について経済的な側面から語る対談コンテンツ。初回となる前回は「アメリカ編」として、バンクオブニューヨークメロン証券 ヴァイスプレジデントの佐々木一成氏を招き、世界最大の経済大国の米国の政治・経済の現状や、その光と影の部分について、中野氏と語った。

今回は、ワールドインベスターズTV(WITV)総合プロデューサーの石田和靖氏を招き、第二回「香港編」として、3回にわたり中野氏と語ってもらった内容を紹介する。

香港編(1)『金融ハブ香港』 - 「投資家にとって優しい金融センター」

石田氏は、昨年の9月から、香港政府観光局経済観光大使を務めている。もともと石田氏は、香港の投資や経済について、ブログで書き始め、香港に関する書籍なども出版。そうしたことなどから香港政府観光局から声がかかり、同大使を務めるにいたった。

ワールドインベスターズTV(WITV)総合プロデューサーの石田和靖氏(左)とセゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏(右)

対談で中野氏は、香港が我々日本人にとって比較的簡単にいける場所で親しみもある一方、どのように経済発展してきたかなどについては、意外と知らない人がいるのではないかとの認識を示し、特に香港の「金融ハブ」としての役割について、香港の制度面がどうなっているかなどに関し、石田氏に問いかけた。

石田氏は、香港は中華人民共和国の特別行政区であり、「1国2制度」のもと、中国本土とは違う法律が適用されていると説明。さらに香港の特徴として、中国本土への入り口・ゲートウェイとしての役割を果たしているとした。

香港は中華人民共和国の特別行政区であり、「1国2制度」のもと、中国本土とは違う法律が適用されている

石田氏は、香港が英国の保護領だったことが、香港に先進国並みの金融システムが整っている要因になっているとし、金融センターとしての優位性が高くなっているとした。世界金融センターランキングでは、1位ロンドン、2位ニューヨークに次ぎ、香港は第3位。しかも、同ランキングの点数では、ニューヨーク、ロンドンに肉薄する点数となっている。

また、中国人がどんどん豊かになるにつれ、中国に投資をしたくなった人が、その入り口として香港を選ぶケースも多い。香港は金融に関して、かなり自由化された制度があり、世界中の金融機関が数多く進出して切磋琢磨し、その結果、「投資家にとって優しい金融センター」となっているという。

中野氏はこれについて、「中国という経済成長を金融という観点から、集中的に取り込める仕組みをつくっている」とし、石田氏も、「人民元建て金融商品などもあり、投資しやすい環境になっている」と応じた。なぜ東京よりも優位性の高い金融市場ができているのかについて、石田氏は、「もともと香港は人口も少なく資源もないから、金融ハブとかビジネスハブとか、自由競争させていくような制度を作るしか、生き残る道がないから」と説明した。

『中野晴啓世界一周の旅「香港編(1)金融ハブ香港」』の動画はこちら→http://www.worldinvestors.tv/products/detail.php?product_id=1130

香港編(2)『ビジネスハブ香港』 - 「世界中から会社を作りにやってくる」

「香港編」の第2回は、金融以外の香港の実体経済について、中野氏と石田氏の対談が行われた。

中野氏は冒頭で、「香港の実体経済に関する視野が我々に欠けているのでは?」と石田氏に問いかけ、石田氏は以下のように回答した。

まず、香港は土地が狭く、狭いところに700万人が住んでおり、面積も人口も東京の半分。GDPは18兆円で、福岡県と同じぐらい。そこでは、起業スピリット・ベンチャースピリットが強く、いろんな人が会社を立ち上げている。さらに会社を立ち上げた後は、海外に目を向けるという。

石田氏によると、香港の場合は、会社を立ち上げた時点で、中国本土やアジア、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど、海外に目を向けてビジネスを行う場合が多い

日本だと、日本で会社を立ち上げた場合、日本で商売をやり、日本人を相手にしたビジネスモデルを考える。その点、香港の場合は、会社を立ち上げた時点で、中国本土やアジア、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなど、海外に目を向けてビジネスを行う場合が多い。

香港は、経済の自由度ランキング(世界経済自由度指数ランキング)で十数年1位をとっている。これは、その国の税制や関税、起業家教育、ビジネス環境などいろんな要素を考慮してランキングしたもので、順位が高いほど、働きやすく、ビジネス活動がしやすいということになる。

「シンガポールが一生懸命追い越そうと頑張っているが、なかなか追い越せない」(石田氏)。その理由として石田氏は、「良くも悪くもやっぱり香港のほうが自由」であることを挙げた。

香港は法人税率が16.5%で、香港国内の源泉所得にのみ税金が課せられるため香港以外の国での源泉所得には税金がかからない、外国人は1香港ドルから自由に会社が作れる、所得税は所得が多くても税率は一律、交際費は全額損金算入できる、などの制度となっており、「世界中から香港に会社を作りにやってくる」(石田氏)という。

中野氏はこうしたことについて、「投資対象としてだけではなく、日本の新しい国づくりをどうしていくかという面で、香港は大変参考になる」と述べ、香港のあり方が、日本の構造を考える上でのヒントになるとの認識を示した。

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香港編(3)『ワインハブ香港』 - 「香港にワインを運べば、どんどん売れる」

「香港編」の第3回は、香港で盛り上がっている新しいビジネスをテーマに、中野氏と石田氏の対談が行われた。石田氏は、「今の香港政府が、一番力を入れているのは、ワイン」と説明。

その理由として、中国人のライフスタイルがものすごく変化していて、中国人がワインに興味を持ち始めたことを挙げた。今世界で見ると、ワインの消費の伸び率は世界では年約1%だが、香港・中国だけに限ってみると、約40%。香港政府は2年前、中国の人達がワインを飲むようになったことに目をつけ、それまで80%あった酒税を完全に撤廃。この結果、「香港にワインを運べば、どんどん売れるようになった」(石田氏)。

世界中の良質なワインが香港に集まり、そのワインを安く飲める街に香港は変わったという。「香港でワインは、値段が高い順に売れていく」(石田氏)。サザビーズやクリスティーズなどのワインオークションも香港で行われるようになり、その出来高総額は、ロンドン・ニューヨークを追い越すまでに至っている。

談笑する石田氏と中野氏。香港に世界中のワインが集まる状況について、話が盛り上がった

その結果、ワインだけでなく人も集まるようになり、香港のホテル・レストランも潤うように。「香港政府は、80%の酒税をゼロにしたが、その分もとをとって、海外からお金を落としてもらえるようにした」(石田氏)。

中野氏はこれを聞いて、「これこそが成長戦略だ」とし、石田氏も、「日本ももっとアイデアを出すべき。香港ではブドウを輸入して香港ワインを作るようになったが、日本も港区の倉庫を利用して『東京ワイン』とか『六本木ワイン』とか作れるのではないか」とのアイデアも披露した。

中野氏は、3回にわたる石田氏との「香港編」の対談について、「香港がなぜ人を集められるのか、その魅力が分かった」と述べ、「そうした仕組みを、日本でも試したくなった」と話していた。

『中野晴啓世界一周の旅「香港編(3)ワインハブ香港」』の動画はこちら→http://www.worldinvestors.tv/products/detail.php?product_id=1132