さくらインターネットの新たな石狩データセンターが15日に開所となった。開所式には、高橋北海道知事や田岡石狩市長らが列席。石狩市のホームページでは、田岡市長によるメッセージも掲載されており、同社への期待の高さが窺える。

田岡市長によるメッセージページ、全文はこちらから

開所式では、同社社長 田中氏から石狩の地を選んだ理由として、「札幌から車で約30分の立地、広大な土地、冷涼な気候、海底ケーブルの陸揚げ地になっていること、地震や津波、液状化のリスクが低い」といった点が挙げられた。実際のところ、災害リスクはどれほど低いのだろうか、それには石狩データセンターの建設地を知らなければならないだろう。

ということで、同社の公開情報などから同センターの建設地を紹介しよう。とはいえ、当然ながら建設地住所は公開されてはいない。同社からの発表内容に限定すると、田中社長が「広大な土地」の説明として「石狩湾新港地域」の名を挙げている。これが最初のヒントだ。

次のヒントは、センター建設中から公開されている石狩データセンターブログ。このブログの9月29日に建設途中の空撮映像が掲載されている。この画像を見ると、なにやら特徴的な建築がすぐ近くにある、ということがわかる。

同社ブログから。右下の建物を目印に探すと意外と簡単に見つけることができる

石狩湾新港地域には、大規模建造物がまだ少ないので、これらをもとにGoogleマップの衛星画像でちょこっと探せば、意外と簡単に場所がわかってしまう(なお、執筆時点のGoogleマップには、同センターの建物はまだありません)。2ちゃんねるの特定班なら、3分もかからずに特定できてしまうだろう。

さらに、ちょっとだけヒントを追加すると、この建物は「とある私設の美術館」だ。ちなみにだが「とある しせつの ミュージアム」などと読んでいただけると、筆者としてはとても嬉しい。

開所した石狩データセンター。センターの向こうに少しだけ見えるのがその美術館

さて、建設地が特定されたところで、同社が言う「低い災害リスク」が本当なのかを見ていこう。

まずは、地震だ。これは、政府の特別機関である地震調査研究推進本部の「地震ハザードステーションJ-SHIS」で、「今後30年間 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」などの分布図が公表されており、石狩データセンター建設地は 0.1~3%と、非常に低い確率となっている。

また今後50年間に10%の確率で揺れに見舞われる計測震度は、震度5強となっている。下図は、どちらも同サイトでの表示画面だ。なお、この情報は石狩に限らず、日本全国について見られるようになっている。

同センター近辺の今後30年間 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率

同じく、今後50年間に10%の確率で揺れに見舞われる計測震度

また、地震の揺れによる直接の被害のほかに、津波のリスクも考えなければならない。これは、北海道総務部危機対策局より、「津波シミュレーション及び被害想定調査業務(北海道日本海沿岸)報告書」がPDFで公表されている。

非常に見にくい資料なのだが、P81に石狩市地域に影響が及ぶと想定される3つの地震(報告書自体は6つの地震を想定している)での津波最大遡上高(陸上での最高到達点)が記載されており、石狩新港での最大遡上高は北海道北西沖(沿岸)の予想値で4.7mとなっている。

これに対し、同社の地盤高は発表によると5.5m以上。しかし、これが本当とは限らないので、調べてみよう(これもネットで)。国土地理院の「基盤地図情報 閲覧サービス」で見ると、敷地を囲むように5mの等高線(補助曲線)があり、測量点は5.6m~6.3mの範囲。どうやら、広報さんの言っていることは正しいようだ。

国土地理院 基盤地図情報 閲覧サービス Webサイト

また、液状化のリスクも見てみよう。石狩市が「石狩地域防災計画」発表しており、この中で「液状化危険度分布図」が掲載されているのだが…、みてもまったくわからないのである。スキャンしたと思われる図なのだが、不鮮明なため位置がまったくわからない。ネットでの限界がこんなところに。

なお、液状化危険度分布図はPDFのP10である。

ここは、同社の説明を引用しておこう。「地盤調査及び詳細解析を大成建設様に実施いただき、液状化発生の程度は少なく、また仮に発生した場合でも沈下量は小さく範囲も部分的であるとの見解がでております。石狩データセンターは二層構造となっており、高層ビルとは異なり建物自体の重量も比較的軽いため、深刻な沈下は発生しづらいといえます。また万が一にも地盤沈下が発生した場合に備え、電源や通信の配管部分にも配慮しております」とのことだ。

さて、次は洪水について。石狩川からそう遠くない同センター。石狩川は河川改良が進んだとはいえ、過去には大きな洪水災害も引き起こしてきた。

こちらは、国土交通省北海道開発局が石狩川浸水想定区域図を公開している。150年に1回程度起こる大雨が降ったことにより石狩川下流がはん濫した場合に想定される浸水の状況をシミュレーションしたもの。想定区域図によると同センター付近は、石狩川の洪水浸水も大丈夫なようだ。

さて、同社にとっては自然災害ではないが、火事や発煙事故も忘れてはいけないだろう。こちらは、最後にセンター内の火災警報機を写したもの。感知レベルが高くなっており、早期検知と対応が可能になっているという。

センター内の火災警報機

というわけで、石狩データセンターの立地についていかがだっただろうか。15日に始まった「さくらのクラウド」は、この石狩から提供されている。同クラウドサービスを利用している読者は、石狩方面に旅行する機会があれば、どこかにある石狩データセンターに想いを馳せてみるのはいかがだろう。

「さくらのクラウド」はこのD区画のラック群から提供されている