日立アプライアンスは11月8日、IHクッキングヒーターの新製品「HT-Fシリーズ」に関して、報道関係者向けの説明会を開催した。

新製品の発売は12月1日で、ヒーターの種類や数、横幅などタイプの異なる21機種がラインナップされる。価格はオールメタル対応タイプの機種で35万700円(3口IH、オールメタル対応1口、幅60cm、レンジフード連動)から、鉄・ステンレス対応タイプの機種で25万7,250円(2口IH+ラジエントヒーター、幅60cm)からとなっている(価格はいずれも事業者向けの積算見積価格)。

オールメタル対応IHヒーターを2口備える「HT-F20T」シリーズの各ヒーターの内部分解展示

東日本震災以降、逆風が吹くオール電化市場。日立は、ライフラインとしての復旧の早さや、火やガスを使わない安全性といった、電気ならではの利点を改めてアピールしていく販売戦略を明らかにした。さらに、日立ならではのIH調理器具に対する付加価値として“適温調理”を謳い、消費者にアピールしていく構えを説明。

なべ底やフライパンの裏側は、同じ金属でも焦げ付きなどで状態が異なることを鍋温度センサーで計測して実証。日立のIHクッキングヒーターではセンサーで状態を読み取り温度を細かく制御する

日立が独自に行った意識調査によると、消費者からは低温域の火加減調整や温度設定への要望が多かったという。こうしたニーズに対し、日立が新製品で改良したのは、細かな温度制御技術だ。鍋底の温度を検知するセンサーに、「高性能サーモパイル式光センサー(光センサー)」「4温度センサー」という2つのセンサーを新たに装備。鍋種を判定する反射センサーと鍋底温度の検出をする赤外線センサーからなる光センサーと、鍋のズレや変形などを検知する2つのセンサーにより、鍋底温度の細かな自動制御を実現した。

また、設定温度を120~250度までと従来の140~240度から拡大。設定温度も10度単位で14段階に設定が可能となり、より細かに温度設定をして調理ができる。従来の機種では温度調整の最適化が必要なため、別売の専用天ぷら鍋に使用を限定していた揚げ物調理だが、センサー技術を向上させることにより、製品安全協会の「SG-IH」および「SG CH-IH」マークの付いた鍋の利用も可能になったという。

説明会では、卵焼き調理の例でIHクッキングヒーターの自動温度制御を実演。余熱後、食材を投入した後の一時的な温度低下からの温度上昇の速さや、その後の設定温度の維持の状態を、実際にフライパンに取り付けたセンサーからパソコンに出力したデータでリアルタイムに確認した。

最低120度の温度設定が可能なクッキングヒーター。低温を維持できるため、ホワイトソースなども失敗なく作れる

日立のIHクッキングヒーターでは、従来からオールメタルに対応した加熱ヒーターを採用している。今回のラインナップでは、最高スペックとなる「HT-F20T」(幅75cm、60cmの2機種)で、3口のうち2口をオールメタル対応型のヒーターにした。

最大火力は、左右のヒーターが各3kw、中央のヒーターが2kwで、総最大火力は5.8kw。日立によると、業界一の強火力とのことだ。説明会で行われたデモンストレーションでは、水の入ったヤカンで同時に湯を沸かす際の他社製品とのスピード比較実験も行われたが、スピードの速さ以上に目を引いたのは、表面が熱くならないトッププレートだ。日立のIHヒーターでは、鍋だけを発熱させる独自の加熱方式を採用することにより、トッププレートが鍋底温度以上に熱くなるのを抑えられるという。ふきこぼれの際の焦げ付きも防げるため、手入れの手間も省けるのがメリットだ。

一方、震災以降の消費者の節電意識に応え、「節電モード」も新たに備えた。これは総消費電力を制限するモードで、最大5.8kwとなっている工場出荷時の設定を、4.8kwと4kwのいずれかにボタンひとつで切り替えられる。

グリル部の構造の比較。新製品では手前のツマミをスライドさせるとヒーター部分が上に上がり、手入れがしやすい

グリルヒーターは、過熱水蒸気型のオーブンを継続採用。過熱水蒸気を利用して余分な脂や塩分を落とした調理ができるのが特徴だ。また、グリル庫内のヒーター前面にあるツマミをスライドさせると、下ヒーターが持ち上がる「下ヒーターはね上げ構造」を業界ではじめて採用。これにより、手が入りづらく掃除がしにくかったヒーター下面を簡単に拭けるようになるなど、手入れがしやすく改良されている。

グリル部の操作パネル。過熱水蒸気型のオーブンで、魚焼きの他にもグラタンやトーストの調理、揚げ物の温め直しなどにも使える