標準規格担当バイスディレクターのRichard Brennan氏。標準化団体ETSIでは、インターネット関連技術の確立を目指すTISPANの副委員長も務める

大手通信機器ベンダーの中国Huawei Technologiesは、ネットワーク、端末、ITソリューションの3つを柱にグローバルなICTカンパニーを目指している。そこで重要な役割を担うのが標準化の取り組みだ。「商業成功で大切なことは、最高なアイディアがあるだけではなく、受け入れられるか」、Huaweiで業界標準の取り組みを統括するバイスディレクター、Richard Brennan氏は言う。

通信とITが融合するなか、HuaweiはEricssonだけでなく、Cisco SytemsやIBMなどITベンダーとの戦いも視野に入れている。大きな野望を実現するためにどのような戦略を強いているのか。標準化、特許の取り組みを中心にBrenann氏が説明してくれた。

Huaweiの主力事業

Huaweiは価格競争力を強みとする通信インフラベンダーとして、中国、アフリカ、アジアと少しずつ世界地図を塗りつぶしてきた。現在では、Ericssonのお膝元である欧州、北欧でも事例を増やしている。

通信インフラでは20年の歴史を持ち、現在のHuaweiを形作った事業となるが、これ以外には端末、それにITエンタープライズを持つ。

端末では、ポケットWi-Fi、データ通信カード、USBドングルに加え、Androidを活用したスマートフォンが急成長している。先にはAndroidでタブレットにも進出、「(コンシューマーが手にする)端末事業により、世界的に知られる中国のグローバルベンダーになりつつある。現在、第8位程度だが、3位、4位を目指している」とBrennan氏は目標を明かす。

※ ITエンタープライズについては、こちらの記事をご覧ください。

Huaweiのイノベーション戦略はITエンタープライズ(クラウド)、通信機器(パイプ)、デバイスの3つの柱を持つ

標準化に注力する理由

ではなぜ標準化が大切になるのか。「通信では、2つのオブジェクトが相手の端末、相手のインフラ技術、利用するサービスプロバイダ(オペレータ)を知らなくても、やりとりできなければならないという特性がある」とBrenann氏。モバイルの3GPP、固定ブロードバンドのBroadband Forum、IPプロトコルのIETF(Internet Engineering Task Force)、クラウドのDMTF(Distributed Management Task Force)などの標準化団体を挙げ、Huaweiは「単に参加しているだけではなく、リーダーとして牽引している」と続ける。加入する団体は123に達しているという。

具体的なプロセスとしては、顧客の意見、規制やポリシーなどの動きをベースに社内で研究開発を進め、これを標準化の前段階で提出する。その後、実際の標準開発段階に持ち上げられ、そこで採用されれば業界全体の合意となる。Huaweiは2010年第4四半期、2万4000件以上の標準提案を行ったという。

自社の提案がどれだけ標準に入るかが標準化では重要となるという

標準化とあわせて進めているのが特許だ。Huaweiは、1日最大19件の特許を申請しているという。特許協力条約(PCT)への申請件数を見ると、2010年は1692件で第4位。2005年には500件以下だったというから、3倍以上の数となる。

Huaweiの最新技術

Brennan氏はこの日、技術リーダーシップを示す例をいくつか紹介した。たとえばHuaweiが10年もの間リーダーを維持しているというDSL分野、ここでは2010年後半に多重化技術で既存のDSL技術を強化した「Super MIMO DSL」を披露。通信速度は700Mbpsを実現したという。

モバイル分野ではSmall Cell技術を説明した。キャパシティに悩むオペレータ向けの技術で、屋外向けのピコセル、屋内・企業向けのフェムトセルとなる。アンテナが増えることで、いつでもどこでも高速なモバイル通信が実現するという。このほかにも、USBドングルでは、挿入して10秒以内にネットにアクセスできるよう改善を続けていること、さまざまな情報を統合するIPTVなどにも触れた。

屋外、屋内向けの小型アンテナ

デモエリアでは、DLNPを使ってスマートフォンでIPTVを操作

このように、スマートフォン、モバイルブロードバンドデバイス、M2M時代をにらんだモジュール、ホームデバイスなどで構成する最新の取り組みが「スマートワールドイニシアティブ」となり、スマートフォン以外はナンバー1を目指しているという。

そこでも、これら端末が標準に準拠し、認定を得、他社の端末と相互に利用できることが大切、とBrennan氏は強調する。「社内のイノベーションと標準化への取り組みが、リーダーのポジションをさらに強くする」と述べた。