会話が楽しくなる魔法の言葉とは?

-頭が真っ白になってしまったことってあるのですか?

八木:ありますよ。例えば、日本語に訳さなきゃいけないのに、英語で言った言葉を英語でそのまま伝えて、自分が何語をしゃべっているか分からなくなってしまいました。その時は、会場がざわついていたのですが、その状態も把握できず……。

でも、「私、いま、英語を英語に訳してしまいました。失礼しました」と謝罪すれば、会場も和むし、自分もリセットできます。その場をフォローする言葉っていうのは大事です。

-相手に「私は今英語を勉強中です」と正直に伝えてもOKですか?

八木:いいと思います。言葉が出ないときには、「Give me a second.」と言って、いま、言葉を探すからと待ってくださいと伝える。それ以外にも、助けてくれる言葉を幾つか用意したらいいと思います。

あと、「ゆっくり話してください」と何度もお願いするより、おうむ返し的に、「Do you mean~?」を使うのもいいと思います。1回目は「ゆっくり話してください」とお願いして分からなかったら、「Do you mean~?」を使って、「こういうこと?」と聞いてみる。

そうすると、「うん、そういうこと」、「ああ、分かった」みたいなコミュニケーションがとれます。分からないこともコミュニケーションにしてしまえばいいと思いますよ。

-言葉が出ないときに、すぐ日本人は謝ってしまいますが、どう思われますか?

八木:そうですよね。日本人は何でも「I'm sorry.」と言っちゃうんですよね。「I can't speak English.」とか、英語を話しているのに謙遜の意味で言ってしまう。

必要以上に謝るのではなく、こちらのスタンスを示しながら、自分の意思を伝えていきたいですよね。

-あと、日本人はジェスチャーも苦手ですよね。

八木:私も意識的に海外のドラマを見て、女優さんの真似をしています。「あ、これ使おう!」みたいな(笑)。「Roll your eyes.」といって、「呆れた」や「信じられない」という時に目をぐるっと回す仕草があります。

でも普段からジェスチャーを意識的に行わないと 、いざという時に出てこないので、練習しています(笑)。あと、会話中、両手でピースサインをつくり指を閉じた形にして、チョンチョンと指を折って表現することがあります。

これは「いわゆる」や「一般的に言われていることだけど」という意味です。英語で、こういった可愛い仕草などを発見したときに、「楽しいな」と感じますね。

-初対面の人との会話を楽しくするコツはありますか?

八木:初対面でも、女性なら「I like your clothes.」、「I like your jacket.」と服を褒めると、会話が広がります。「Thank you.」にはじまって、「これどこで買ってね~、生地はこうなの」と、楽しい会話がはじまるんです。

無理に話そうと思うのではなく、しっかり相づちを打って聞き手にまわるっていうのを心がけると、楽しく会話ができるし、相手の話も引き出せるし、一石二鳥です。

-語学の楽しさや魅力について詳しく聞かせてください。

八木:私は、「人と出会いたい」という理由からアナウンサーになりました。アナウンサーはマイクを持てば、相手と直接話しができます。通りすがりの方とも、普段会えないような方とも、マイクを持つことでコミュニケーションをとるチャンスが生まれるのです。

英語など、日本語以外の言語を話せるようになると、直接話のできる人が、無限に増えていきます。

通訳を介してではなく直接の会話には、その人と深くコミュニケーションができて、魅力的です。また、通訳を介さず会話ができれば、日本語にない表現を知ることもできます。

例えば、奥さんのことを「my better half」と普通に呼ぶ方がいます。要するに、自分と妻は二人で1つだけど、妻の方が自分よりbetterという意味です。日本の慣習とは大きく違いますよね。

あるいは、クォン・サンウさんの結婚会見で、「奥さんはどういう人ですか」と聞かれて、普通は「優しい」、「かわいい」と言うところを、「妻は、我が家の笑いの花になってくれます」と言ったんです。

そういった海外の方の表現力は、豊かで本当に素敵だと思うので、自分でもどんどん使っていきたいですね。

-最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。

八木:言語を学ぶと何気ない出会いを楽しむことができます。私がフリーになれて、多くの方と出会えるのも、英語と韓国語のおかげです。ただ、プライベートでいうと、エレベーターでたまたま会った外国人と、無駄な会話ができるのが楽しい(笑)。

例えば、「いい天気ですね」、「この後どうしますか?」、「ご飯に行きます」、「そう、楽しんでね」といった会話。自分の言葉で楽しめるところがいいんでしょうね。

あと、英語を話せれば、外国に行って好きなものが食べられる、文句が言える、行きたいところにも行けて何も怖くないという状況が、心地いいです。人と対等に話せることは、自分をとても充実させると思いますよ。

でも最初のうちは、言葉が通じないことを恐れず、勇気を持って「通じないコミュニケーション」を楽しんでください。そこで、違う自分が発見できると思います。

また、皆さんも、学生時代含めて10年ぐらい英語の勉強で、英語に親しんでいると思います。ただ、学生時代と同じように、一から基礎学力を復習となると辛いので、自分の好きな分野や、興味がある会話からはじめるのがオススメです。

全部を網羅しようと思わないで、何が自分に必要であるか目標をつくって取捨選択する。そして集中して学ぶ。「選択と集中」で頑張ってください。

-ありがとうございました。

●お話を聞いた方

八木早希(やぎ・さき)さん

アメリカ・ロサンゼルスで生まれ、大阪・阿倍野で育つ。小学校4年生~6年生の3年間、韓国・ソウルで過ごし、現地の小学校に通う。2001年、大阪の毎日放送に入社し、アナウンサーとして活躍後、2011年4月よりフリーキャスターに。日本テレビ系「NEWS ZERO」、関西テレビ「たかじん胸いっぱい」、東京FM「コリアンテナ」にレギュラー出演中。

著書に自身初の韓国ガイドブック「暮らすように旅するソウル」(ワニブックス社)、「八木早希のシンナヨ!ふれあう韓国語」「八木早希のチョアヨ!旅する韓国語」がある。