家庭用蓄電池、高効率太陽光発電、スマートグリッド……。そんなエコ社会への提言的コンセプトテクノロジーは従来、技術品評会等には毎回登場するものの、メインとなる花形の商材やサービスの裏側に隠れてしまうことが多く、世間に対しても「ちゃんとやってますよ」というアピールの域を出ることはなかなか多くなかったように思う。

だが、今年のCEATECではそれが明らかに一変した。多くの企業ブースのメインステージで地域単位のエネルギーコントロールや家庭内節電システムフローが提示され、多くのプロダクトが文字どおり製品化を前提に開発されており、中にはすでに販売されているものも少なくない。そして、メーカーやサプライヤーの動向に、どのブースでも来場者の熱い視線が注がれていた。

安全で長寿命なリチウムイオン蓄電池を開発 - ソニー

ソニーのブースでは、家庭用および業務用のリチウムイオン充電式蓄電池(エネルギーサーバー)を展示している。同社では、充電池の安全性と寿命の障壁を酸素と考え、この対策として、材料にオリビン型リン酸鉄リチウムイオンを採用。この素材は、酸素の放出を抑えるため燃えにくく、また強固な結晶構造を持つことから、劣化しにくい“安全・長寿命な蓄電池”を実現した。ちなみに、300Wの供給が可能な家庭用エネルギーサーバー「CP-S300」(東日本向けは50Hz仕様、西日本向けは60Hz仕様)の場合、毎日1回の充電・放電を繰り返したと仮定して、なんと10年もの寿命を持つという。300Wとは一般的に、ラジオなら25時間の使用、携帯電話なら50時間、ノートPCなら1.5~5時間の充電が可能な出力だ。非常時の家庭用補助電源として有効だ。

家庭用エネルギーサーバー「CP-S300」は、出力用コンセント1基を備える。価格は15万円と現実的に手が届くレベル

2012年3月から米国テキサス州オースチンで行われるスマートグリッド実証実験“Pecan Street Smart Grid Demonstration Project”(ピーカン・ストリート・スマート・グリッド実証プロジェクト)に参加するソニー。これは、そのプロジェクト専用蓄電池

太陽光発電パネルは単結晶、高集光効率の時代へ

ホームエネルギーシステムの入り口機器として、また単体製品として各社大きくアピールしていたのが太陽光発電パネルだ。そのトレンドは、高いセル変換効率とモジュール変換効率、そして発電力(ワット数)をいかに稼げるかがテーマとなっている。そこで、各社注力しているのが高効率化技術を結集した単結晶モジュールだ。さらに、ガラスの表面反射を防止したり、表面の電極を背面に回して集光面積を増やすバックコンタクト方式を採用したりと、配電設計を工夫して差別化を計っている。

太陽光パネル生産で世界のトップを走る「SUNVISTA」のシャープは、変換効率、設置効率、コスト効率のバランスを重視した「BLACKSOLAR(ブラックソーラー)」を展示。バックコンタクト方式による集光性能の向上加え、銀電極と銅配線が面接続で直接つながる配線シートで電流損失を小さくしている

「BLACKSOLAR」のエネルギー効率の良さがひと目でわかるデモ。同一の光源だが、「BLACKSOLAR」に繋がったモーターの方が明確に回転が速い

東芝の太陽電池モジュールは、シャープと同じくバックコンタクト方式を採用。さらにモジュールのセルを3%大型化(同社従来品)。量産モデルで240Wという世界トップレベルの発電力と、最大セル変換効率22.6%、最大モジュール変換効率19.3%と、世界一の変換効率を誇る

三菱電機は単結晶モジュールに、同社が業界に先駆けて開発した4本バスバー電極を採用。タブ線を細くして受光面積を増やし、従来2本だったバスバーを倍に増やしてタブ線間の距離を縮め、電力抵抗を軽減。結果として、210Wの出力が可能になった

パナソニックの新商品「HIT230」シリーズは、発電ロスを低減させるハイブリッド型モジュール。さらに、タブの細線化に加え、バスバーを従来の2本から3本に。タブ線間の距離を短縮することで電力抵抗を軽減して、230Wの大出力と17.9%のモジュール変換効率を実現

インテリジェントに電気をコントロールするスマートハウスに熱い視線

パナソニックが提唱するシステム「SEG(スマートエナジーゲートウェイ)」。蓄電された電力は曇りの日や夜間に使われるほか、非常時には冷蔵庫や居間の照明、情報家電など優先度の高い電力に割り振られる

スマートグリッドや太陽光発電も含めたオール電化の集中管理、ひいては電機自動車との連携が多くのブースで大きくプレゼンテーションされていたのも、今回のCEATECの特徴だ。

広いプレゼンスペースを設け、家庭用と業務用、地域に分けて、規模に合わせたエネルギーソリューションを分かりやすく説明しているブースが目立った。特に、シャープや東芝、パナソニックなどはプレゼンスペースに人が入りきれず、次回のプレゼンを待たなければならないこともあるほどの人気ぶり。白物家電メーカーゆえに馴染みが深く、オール家電がもたらすライフスタイルがイメージしやすいのも、多くの来場者が足を止める理由だったのだろう。

パナソニックの太陽光発電自立蓄電システム。太陽電池から充電、最大出力120W×3時間分のバックアップが可能

ホームで培った省・創・畜エネルギー技術を車載システムに展開した、パナソニックのEV(電気自動車)ソリューション

エネルギーを創る太陽電池やガスなどの燃料電池と、創ったエネルギーを貯めて必要なときに備える蓄電池をつなぎ、家全体のエネルギーを賢くマネジメントする……。たとえば、晴天時には発電した電力を生活に利用しつつ、余剰電力を蓄電、さらに余れば電力会社に売電する。夜や曇りの日には蓄電池の電力を利用し、不足すれば電力会社から購入する。また、人のいない部屋の照明や電気製品の稼働状況を監視、ムダを見つけて節電方法をアドバイス。さらに、スマートメーターを接続して地域スマートグリッドと連携、街全体でバランスを取りつつ節電を実現する。その基本的なシステムはどのメーカーもほぼ同じだけに、機器ごとの性能やソフトウェアの機能、独自のアイデアで差別化を図る各メーカーの工夫に今後、いっそう目が離せなくなりそうだ。

シャープが開発した、電力の使用状況がモニタからリアルタイムで把握できるシステム

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)用の充電システムと、EV/PHEVから家庭への電力供給の制御、太陽光発電システムのパワーコンディショナという3つの役割を統合した、シャープの「EVスマートパワーコンディショナ」

家電を外部からのAC電源系と太陽発電パネルや蓄電池を使ったDC電源系に分けてコントロールする東芝のデモ

そしてエネルギー問題解決のカギは宇宙に! 実は、三菱電気はマイクロ波を使った電気の無線伝達に成功済み。将来的には、宇宙軌道上に高効率のメガソーラー基地を建設し、地上に電力を無線送電することも可能になるかもしれないという