Intelのプロセサと言えば、デスクトップ、ノートPC用のCoreシリーズ、そしてネットブックやタブレット向けのAtomを思い出し、その次がサーバ用のXeonといったところである。ミッションクリティカルサーバ向けのItaniumは、「まだ、やってるの?」と思う向きもあるかもしれないが、健在で、Hot Chips 23では次世代Itaniumプロセサである「Poulson」の発表が行われた。

IntelのPoulsonを発表するSteve Undy氏

ミッションクリティカルというのは、そのシステムが故障で止まると業務が止まり大きな影響がある用途を指す。例えば、証券取引所のシステムや新幹線の運行管理システムなどはこれにあたる。また、銀行のオンラインシステムや、企業の基幹システムなども停止の影響の大きいミッションクリティカルシステムである。

これらのシステムが止まると、一般的には経済的にも大きな損失が発生するので、お金を掛けても、止まらないように万全の工夫を施す。この工夫はシステムを設置場所も遠く離れたセンターで2重化するとか無停電電源で停電に備えるとかいろいろなレベルでの対策が取られるが、ハードウェアの一番基本のレベルとしてはプロセサが故障や誤動作をしないようにすることが重要である。また、エラーが発生して計算結果が誤ったことに気が付かず処理を続行してしまうのが最悪で、誤った結果を使ってしまう前にエラーを見つけることが極めて重要である。

PC用プロセサはエラーが起こってもその影響は比較的軽微であるので、あまりエラー検出には努力が払われていない。サーバ用プロセサはエラーの起こりやすいメインメモリや大容量のキャッシュなどにはエラー検出や訂正の機能が付けられているが、プロセサの中のロジックには無防備なところが多く残っている。

これに対してミッションクリティカルサーバ用のプロセサではメモリやキャッシュに加えてプロセサロジックの殆どの箇所でのエラーが検出、あるいは訂正できるようになっている。

現在のTukwilaと次世代のPoulsonの比較

Poulsonは現在のTukwilaの2倍の性能が目標であり、コア数を4コアから8コアに増やしている。また、最終キャッシュ(Last Level Cache)も24MBから32MBに増加させ、メモリを接続するSMIや他のCPUチップやI/Oと接続するQPIリンクの速度も4.8GT/sから6.4T/sに高速化されている。

このようにコア数やキャッシュを増やしているが、現世代のTukuwilaは65nmプロセスで作られているのに対してPoulsonは32nmプロセスを使っているので、チップ面積は700平方mmから544平方mmに縮小し、消費電力も185Wから170Wと若干減少している。

Poulsonのダイ写真と主要コンポーネント

Poulsonチップでは、左右に4コアずつが配置され、中央にシステムロジックと32MBのLLCが置かれている。そしてチップの上辺にフル幅のQPIリンクが4本、下辺に半幅のQPIリンクが2本とSMIメモリリンクが2本とすっきりした配置である。そして中段の左右にディレクトリキャッシュが置かれている。これは自ノードのデータをキャッシュしている他ノードの情報を記憶し、キャッシュコヒーレンシ維持のためのスヌープを送る範囲を狭めてマルチコアスケーラビリティを改善する機構である。

Poulsonベースの8ソケットサーバの構成例

そして、この図のように8個のPoulsonチップをQPIで接続し、メモリとI/Oハブチップを繋げば64コアの大型サーバが構成できる。それぞれのSMIにはSMBチップを介して2ストリングのDIMMが接続できるので、このサーバ全体では32ストリングとなる。そして、各ストリングに2枚の8GB DIMMを接続したとすると512GBという大きなメインメモリのシステムとなる。