ボスポラス海峡を挟んでヨーロッパとアジアにまたがる街、トルコ・イスタンブール。昔から「東西の十字路」と呼ばれたこの街には、場所柄、様々な地方の料理が集まってきた。また、もともとトルコ人の祖先は遊牧民で、移動しながら中東やアラビア半島の食文化を受け入れてきた歴史がある。世界三大料理の一つにも数えられるトルコ料理は、庶民派グルメもおどろくほど多彩だった。

高いお金を出さなくても、リーズナブルに楽しめる庶民はグルメがいっぱい

イスタンブールには、日本人に有名でかつ訪れて満足できる観光スポットがいくつもある。その観光スポットに沿って味わえる庶民派グルメを食べ歩いた。

のびるアイスや紫のジュースの屋台

旧市街にあるアヤソフィア、ブルー・モスク、トプカプ宮殿は、歴史の教科書にも出てくるほど有名で、観光からははずせない三大建造物。しかも3つとも近くにあるため、効率よく見学できる。

キリスト教会からモスクとなり、今はミュージアムになったアヤソフィア

アヤソフィアのモザイク画は必見。最高傑作の「キリスト像」

アヤソフィアとブルー・モスクの入口・出口付近には、庶民派グルメの屋台が目白押し。伸びるアイスとして有名なドンドルマは必食。スタッフが金属製の棒でぐるぐると回す白い塊はまるで焼く前のパンかモチのようだが、食べてみると間違いなくアイス。ただし、キーンとした冷たさはない。そのアイスのあとにオススメなのがザクロ・ジュース。見た目は紫でイマイチだが、飲んでみるとても爽やかだ。

トルコ名物ののびるアイス「ドンドルマ」。注文すると、まずはパフォーマンス。客にコーンを持たせて、アイスを入れるふりをして取り上げるというお決まりのフェイントも。チョコレートやストロベリーのフレーバーもある。意外ととけるのが早い。5TL / 約250円

イスタンブールを象徴する「ブルー・モスク」。内部の装飾にこの青いタイルが使われているのが、「ブルー・モスク」と呼ばれるゆえん

街を歩いていると男たちがチャイ(紅茶)を飲んでいる姿をよく見かける。トルコではコーヒーよりチャイが好まれ、味も洗練されてクセがなく、何杯でも飲めてしまう。なるほど、男たちが始終チャイを口にしているわけだ。中でも、トプカプ宮殿にあるカフェはアルマラ海沿いの眺めが抜群のロケーション。ただでさえ飲みやすいチャイが、ここで飲むとまた格別の味わいである。

トプカプ宮殿内にあるカフェ。宮殿奥の隠れ家的な場所にある

トルコのチャイは、このカップで飲む。インドのチャイとは違い、ミルクと一緒に煮出さず、普通の紅茶に近い見た目と味。砂糖だけを入れる。アップルティーもある。4.5TL / 225円

「ロカンタ」でケバブをがっつり

ロカンタは繁華街のあちこちにある

トルコでは、がっりつ食べられる庶民派レストランをロカンタという。トルコ版大衆食堂という感じだが、大衆食堂といっても日本のそれのように常連客ばかりで入りにくい雰囲気はみじんもない。オープンテラスの席も多く、旅行者も大歓迎。

ロカンタには数百というレシピを持つ店もあり、トルコ料理の多彩さを実感する思いだが、有名なケバブ系料理は外せないだろう。羊、牛、チキンとどれも期待を裏切らない味。あまり辛くない香辛料もちょうどいい。ロカンタは街のあちこちにあり、酒類は置いていないので、観光や買い物の途中のランチで利用するのが正解だ。

シシ(羊)・ケバブ。皿からあふれんばかりに盛ってあるのがうれしい。羊独特の臭みは香辛料で見事に消され、やわらかく食べやすい

ラビオリのヨーグルトがけ!?

マントゥの1コはとても小さいが、具を包んだ皮は小麦粉のわけだから一皿だとかなりおなかがいっぱいになる

もう1つ、マントゥもがっつり系の庶民の味。トルコ風ラビオリとかトルコ風水餃子などと呼ばれ、さすが東西にまたがる国の料理という感じだ。ラビオリに近いか水餃子に近いかは店によるが、それはあくまで食感の話。味は強烈な印象で、しかも他の何にも似ていない。

羊肉やチーズなどをパスタで包んで揚げ、それにヨーグルトをかけて食べるのだ。さすが、トルコはヨーグルト発祥の地だというだけのことはある。お好みでビネガーをかけてもいい。"東西折衷"といった不思議な味だが、ヨーグルトがかかっている分、意外にさっぱり。一皿で満足できること間違いなしの量である。