栗山氏の作品

アドビ システムズが開催したクリエイター向けのセミナー「デジタルフォト&デザインセミナー2011~トップクリエイターのテクニックとアイデア~」にて、CGクリエイターの栗山和弥氏による、「続・アイディアがビジュアルになる瞬間 (とき)、Photoshop + Autodesk 3ds Max でどのように作り上げるか」が行われた。セミナーでは、栗山氏が自身の作品を紹介しながら、「3ds Max」や「Photoshop CS5」などを使ったワークフローを公開した。

栗山氏が3ds Maxを使い始めたのは2001年頃。3ds Maxを選んだ理由は、ツールを使いたいからではなく、素材として販売されていた恐竜 プテラノドンのデータを扱いたかったからだという。それまで使っていた3DCGツールはKPTの「Bryce」だったが、この導入をきっかけに、より高性能で業界のスタンダードである3ds Maxに乗り換えたそうだ。栗山氏は「3ds Maxを使っていれば、世界中で販売されている大部分の3DCG素材を利用できる。他のツール用のデータも販売されていますが、3ds Max用データが最も信頼性が高い」と語った。なお、レンダリングには「v-ray」を使用しているとのこと。このレンダラーはフォトリアリスティックなCGを制作する際に適していて、ネット上にも大量のマテリアルデータが公開されているとのことだ。

プテラノドンを使った作品

栗山氏はレタッチャーとして、写真を加工するだけで作品を制作することもある。しかし、3DCGを組み込むことにより、素材となる写真の撮影工程がラクになるという利点もあるそうだ。業務でビジュアル作品を制作する栗山氏にとって、作業の効率化は重要。単なるレタッチではなく、「ちょっとした味付けに3DCGを使うのがプロのコツ」とのこと。

栗山氏の手掛けた作品

映画「252」のロゴ。KPTの「Bryce」と「Illustrator」で作られている

ドラマ「月の恋人 ~Moon Lovers~」で使われたCG

コカ・コーラのビジュアルは、実写では絶対に作れない液体の流れを表現

シャンプーの広告用ビジュアル

化粧品の広告では、水をランダムに波立たせることにより、リアル感を演出

九州新幹線は写真とCGの合成。当初は写真だけで制作しようとしたが、レタッチで消すのが困難な電線などが写り込んでいたためCGの車体と合成した

広告ビジュアル制作のワークフローを紹介

3DCGで作られた「TOKYO」の文字とモデルが合成されている

セミナーでは、ファッション誌 流行通信で使用したビジュアルの制作ワークフローが紹介された。この作品は、何人ものモデルが3DCGで作られたステージ上でポーズをとっているというもの。モデルはデジタルカメラ「PhaseOne」で撮影され、ステージは3ds Maxで作られている。

まず、撮影した写真を3ds Maxに読み込み、板ポリゴンに貼り付ける。それをステージ内に仮配置してバランスを取りながら、3ds Maxのカメラアングルを決める。カメラの設定が決まったら、ステージのグラフィックだけをv-rayでレンダリングして、人物モデルの写真とPhotoshopで合成している。

「PhaseOne」で撮影されたRawデータを、栗山氏自身が「Adobe Camera Raw」で現像

「3ds Max」で作ったデータにモデルを配置。モデルは自動的にカメラの方向を向くように設定

「Photoshop」でレンダリングしたステージにモデルを合成

地面にはうっすらとモデルが写り込んでいる

セミナーでは、テクスチャーで3DCGの凹凸を作成する「ディスプレースメントマップ」のデモンストレーションも行なった。栗山氏はテクスチャーでポリゴンの編集が行なえる利点を、「文字の3DCGを作るとき」だと語る。広告案件の仕事は作業開始後に文字の修正が入る場合もあるため、一般的なポリゴンモデリングで文字を作ってしまうと再編集に時間がかかってしまう。しかし、ディスプレースメントマップならばPhotoshopでテクスチャーを作り直すだけなので、比較的に簡単に修正が行なえるとのこと。

ディスプレースメントマップ用のテクスチャー。「Photoshop」フィルターの「ぼかし(ガウス)」を複数回かけている

「3ds Max」でディスプレースメントマップを行なった。テクスチャーの違いでポリゴンの凹凸も変化する

この手法で作られたテレビドラマのロゴ。放送開始日時が変更になっても、少ない作業で修正が可能