洗濯機のスタートボタン以外を押したことがありますか?

今や一家に一台、当たり前の存在となった電気洗濯機。20世紀初頭に開発された白物家電の代表格の1つは、およそ100年をかけて進化を遂げ、多くの機能が搭載されてきたが、これをお読みの皆さんは、そのすべてを使いこなしているという自信はお持ちだろうか。残念ながら筆者は、この2月にドラム式洗濯機を買ったが、とりあえず電源を入れて基本状態のままスタートボタンを押す、というくらいで、到底使いこなしている自信はない。ドラム式になると10万単位の高い買い物であり、それだけのコストを払いながら上手く洗濯ができないと思うと実にもったいない。というわけで、どうすればその性能を生かしきれるのか、拙宅の洗濯事情も交えて、どの洗濯機でも役に立つであろう話題を踏まえて、その一端をお伝えできればと思う。

拙宅では現在、後述するとある事情にて三洋電機のドラム式洗濯乾燥機「AQUA AWD-AQ-4500」(2010年10月発売)を使っている。最大のポイントは「オゾン」を用いた洗濯機能。一般的な機能はカタログなり説明書を読んでいただければと思うので割愛するが、1つだけ特長ある機能を上げるとすれば、「洗剤ゼロコース」の存在。文字通り、洗剤を使わないで洗濯ができる機能だ。ただし、この機能、AQUAの売りの1つである風呂水をオゾンで浄化、殺菌してすすぎまで使うことで水道水の消費量を5lまで低減できる「アクアループダイレクト」との併用はできないのは残念なところである。

拙宅のAQUA AWD-AQ-4500

AQ-4500の操作コンソール。たいていの場合、電源を入れて、洗濯か洗+乾かのどちらかを洗濯して、そのままスタートを押すのがパターンだが、それではせっかくの高機能洗濯機の真の性能を引き出しているとはいえない。ちなみに左の教えてボタンを押すと、そのコースがどういったものであるかを教えてくれるが、あまり押す機会は実はない

洗濯機天板に記載されている各モードにおけるコースの紹介シール。これだけでも相当コースがある

これを選んだ理由の1つに筆者が色々なアレルギーを持っていることが挙げられる。例えばスギ花粉、銀歯にも使われるクロムやパラジウム、白金などの金属アレルギー(だが筆者の歯には銀歯がある)、そして洗剤、いわゆる界面活性剤対するアレルギーなどである。ということで、実のところ洗剤は使いたくないが洗剤を使わないと落ちない汚れもある。そこで洗剤ゼロかと思われるかもしれないが、さらにもう1つ理由がある。大人の筆者であれば、よくすすいで洗剤を落とす、つまり通常1回のすすぎを2回にするといったことでそれなりに洗剤アレルギーに対応することが可能で、10年以上使ってきた縦型洗濯機(日立製だった)でも、対処できていた。ここで感の良い方はお気づきになりつつあると思うが、大人でない存在、つまり子供がいるのである。アレルギーは遺伝することもあるし、年齢は関係なく発症する。洗剤ゼロコースなどの機能を期待して買ったのは、もし因子を持っていても、それが表に出るのを抑えたいと思う親御心もあった。

洗剤ゼロコースを洗濯したところ(左上)と、「おしえて」ボタンを押すと、洗剤ゼロコースの説明を表示してくれる(右上、左下、右下の順に表示)

洗濯と洗剤の意外な関係

とはいえ、洗剤ゼロコースも万能ではない。世の中、洗剤を使わないと落ちない汚れもある。いわゆる泥や砂のような無機物の汚れである(洗剤ゼロコースは軽い皮脂などの有機物汚れ向け)。また、多くの洗剤は汚れの再付着効果を持っており、一度落とした汚れを衣類に着かなくしているが、洗剤がなければそれもできないため、毎回使っていると汚れが徐々に付着していく。ということで、三洋電機に確認したところ、「汚れは着いたら絶対に落ちない」ので、何回かに1回は洗剤で洗ってもらえればとのことであった(ちなみに筆者は「注水すすぎ」を一緒に行うことを勧められた。すすぎについては後述)。

洗剤ゼロコースではオゾンで汚れ(有機物)を分解して洗浄する

では、その汚れを落とす洗剤だが、実は洗濯機ごとに相性がある。Aという洗濯機とBという洗剤が非常にマッチする、というレベルの話はなかなかないが、例えばドラム式の洗濯機には合成ではない粉石けん(液体粉石けんも含む)は推奨されず、洗濯機メーカーによっては使用しないでくださいと記載しているところもある。これは、粉石けんが、あちこちで溶けきれずに固まって、それが故障の原因や配管の目詰まりを発生させるためだ。例えば、洗濯槽の外側あたりで固形化してしまった粉石けんが、摩擦で熱されると、油分を含んでいるので、それが焦げた嫌な臭いになるという。また、横(ナナメ)ドラムの特性として、泡立ちの良い洗剤は避けたほうがよいという。というのも、泡の立ち具合を洗濯機で判断してすすぎが終わったか否かを一般的な判断方法としているため、泡が残っていると判断されれば、その分、すすぎの時間も水も多くかかることとなるためで、結果としてドラム式は「合成洗剤で泡立ちの少ないもの」との相性が良いという。

また、最近の洗濯機は洗濯物の量を自動計測して、「0.8杯」などと表示されるが、それがどのような洗剤(1回すすぎOKの濃縮洗剤や合成粉石けん)でも適用できる。ただ、気をつけないといけないのは、それぞれの洗剤についているキャップ(カップ)を使って、指定された量を投入するということ。洗剤Cのキャップを洗剤Dと似ているからといって使いまわすと、量が異なるので、期待される効果とは異なる結果がでる可能性がある(AQ-4500には「ECO標準」という洗濯コースがあるが、これはアタックNeoのキャップを元に洗剤量を計算しているとのこと。すすぎが1回だけなので時間短縮と節水につながる)。

この画像では0.6杯

ECO標準の基準となっているアタックNEO。左写真の0.6杯は、例えばアタックNEOを使うなら、上部についてるキャップの0.6杯分を投入するということとなる

洗剤の量も気をつけたいが、もっとも気をつけたいのは洗濯物の量だ。例えばAQ-4500は最大9kgの洗濯能力だが、ドラム式は叩き洗い方式なので、しっかりと上から下に洗濯物が落下しなければ、汚れは落ちない。なので9kgみっちりと入れるくらいであれば、7割程度(この場合は6kg)に抑えて洗った方が洗浄効果は高くなる。とはいえ、何度も分けて洗うと水道台と電気代が…、ということになるので、AQ-4500では上述しているが、風呂水をオゾンで清潔にして、2回すすぎにも使えるアクアループ機能を用いることで、単に風呂水をくみ上げると雑菌の繁殖などが怖いが、そういったことを気にせずに水道からの使用量を抑えることができる。

AQ-4500の6kg表示ライン。本来の使い方とはちょっと使うが、こうした洗濯機に記載されている容量表示を目安に洗濯物の量を調整するのも1つの手となる

ちなみに洗剤ゼロコースは、「ASW-HB700(2002年モデル」を用いて、滋賀医科大学の協力のもと、アトピー性皮膚炎患者の80%の皮膚の乾燥改善、ならびに乾燥性湿疹患者の60%改善を確認しており、皮膚の弱い人には強い味方になっているそうだ。