モバイル・アプリケーション向けマルチメディア・コンテンツの急増により、無線ネットワークの発展が促進されています。増大する音声およびデータ・トラフィックのニーズに対応し続けるには、高パフォーマンスのシステムを開発しなければなりません。

競争が激化する市場で優位を維持するために、システム設計者は最高のパフォーマンス、コスト、パワー、信頼性が得られるスケーラブルなインターコネクト規格を選択する必要があります。10ギガビットEthernet(10GE) が代替ソリューションと見なされる場合もあるとはいえ、Serial RapidIO(S-RIO)は、無線ベースバンド・プロセッシング・アプリケーション固有のニーズに対応する唯一のプロトコルと言えます。

10GEとS-RIOの違いを理解するには、これら2つの規格が開発された背景をたどる必要があります。Ethernetは、ソフトウェアのプロトコル・スタックを補強する強力なプロセッサを利用できることを前提に、大規模なLANまたはWAN型のネットワーク向けに設計されたものです。一般的にこの種のネットワークでは、膨大なペイロードを含む多量のデータ・トラフィックのストリームがやり取りされます。

一方、無線ベースバンド・プロセッシングには、これとは異なる要件があります。無線システムでは、コントロールプレーンとデータプレーン両方のトラフィックを伝送する高パフォーマンスのプロセッシング・エレメントが、高い信頼性のもとで迅速に相互通信を行う必要があります。S-RIOは、この種の要件をサポートするために設計されました。

図1 無線ベースバンド・システムでは、高パフォーマンスのプロセッシング・エレメントのクラスタにおいて効率的な通信を実現することが重要になる

パフォーマンスの重要性

3G+および4G無線プロトコルとAdvanced Antenna System(AAS)アーキテクチャでは、強力かつ予測可能なシステム・パフォーマンスが求められます。こうした要件に対応するために、RapidIOでは特にレイテンシとプロトコルの効率性に注力し開発されています。

RapidIOではレイテンシを最小にするために、小パケット・ヘッダで、Destination ID(DestID)に基づくシンプルなルーティング・アーキテクチャが採用されています。このシンプルなトランスポート層機能によって、カットスルー・モードでスイッチのレイテンシが100ns未満になります。また、送信中のパケットの「ストンプ」が可能であるため、スイッチ・デバイスではパケット全体を受信する前にパケットを転送することができます(ストンプは、部分的に伝送されたパケットをキャンセルするためにRapidIOプロトコルで使用する制御符号)。そのため、信頼性を損なうことなくシステム全体のパフォーマンスを向上させるというメリットが得られます。転送中のパケットにエラーが検出された場合には、RapidIOポートで、伝送中のパケットに対するストンプが行われます。ここにはソフトウェアが介在する必要はありません。

これに対して、10GEパケットはヘッダが非常に大きいため、他のプロセッシング・エレメントとの通信時にレイテンシが増大します。LANやWAN型のネットワークでは、パケット・サイズが大きければ、ヘッダのサイズとそれに付随するオーバーヘッドが大きくても相殺されます。しかし、無線アプリケーションにおけるトラフィックは一般的にサイズが小さく、LAN/WANモデルの場合のトラフィックよりも頻度が高くなります。

ペイロードが小さいこの種のトラフィックでは、10GEのようにパケット・ヘッダが大きいと、各トランザクションの効率に影響を及ぼし、システム全体のパフォーマンス低下につながります。10GEレイヤ2スイッチのレイテンシもS-RIOの場合のレイテンシよりもはるかに大きく、最も条件のいいシナリオであっても200nsを大幅に超えます。Ethernetでは送信中のパケットに対するストンプを行うことはできません。代わりに、パケットを「ベストエフォート」として送信し、レイヤ3または4のソフトウェアを使用してパケットのコンテンツの整合性を検証します。