【レポート】

マイクロナノ 2011 - 震災の影響により災害対策ロボットが関心を集める

村田晋一郎  [2011/07/14]

MEMS分野およびMEMS応用・関連分野の総合イベント「マイクロナノ 2011」が2011年7月13日~15日の3日間、東京ビッグサイトにて開催されている。同イベントは、MEMS、ナノテクなどに関する国際見本市「第22回マイクロマシン/MEMS展」、第2回次世代ロボット製造技術展「ROBOTECH」、表面技術総合展「SURTECH2011」の3つの展示会と、第17回国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムをはじめとする7つのカンファレンスで構成されている。

マイクロナノ 2011が3展合同で開催

展示会の開催規模は、3展合計で9カ国・地域から292社の関連企業、団体・研究所、大学が出展しているが、昨年の347社を下回る結果となり、厳しい経済状況と東日本大震災の影響が窺えた。3展同時開催となったのは昨年からだが、22回を迎えるマイクロマシン/MEMS展の方が厳しい状況をより反映し、常連企業で出展を取りやめた企業も見受けられた。近年のマイクロマシン/MEMS分野は微細加工技術が応用できる半導体業界からの関心が高く、半導体分野で低迷するビジネスをMEMS分野への展開でカバーしようとする動きがMEMS分野の発展を支える一因となっていた。しかし今回の展示会を見る限り、現在の日本の半導体業界には他分野へ積極的に進出する余裕がなくなっているのかもしれない。

逆に東日本大震災に関連して、災害対策・救助ロボットを中心にROBOTECHへの関心は高いように感じられた。そこで今回はROBOTECHで注目を集めた展示内容をレポートしたい。

福島第一の教訓から災害対策ロボットの課題を紹介

初日のROBOTECHテーマゾーンでは、福島第一原子力発電所(福島第一)に投入された閉鎖空間探査用レスキューロボット「Quince(クインス)」と同型機のデモンストレーションが行われた。

Quinceはバンク角82°の瓦礫走行性能を有し、搭載カメラ、3次元スキャナや放射線スキャナなどにより環境モニタリングや3次元形状計測を行う。福島第一においては2号炉建屋の3階および地下まで移動し、放射線量などの状況調査を行った。

千葉工業大学 未来ロボット技術センター(fuRo) 副所長の小柳栄次氏は、実際に運用した経験から、今後の災害対策ロボット開発と実用化の課題として、

  1. 仕様書がない
  2. 災害現場が想定できない
  3. メンテナンスフリー

の3点を挙げた。事故に応じて災害状況は異なるため、実際に運用するまでロボットに対する要求が正確には分からない。また、そのための情報も不足しているため、事前に問題点が明確にならない。

例えば、福島第一では長年にわたり建屋の増築を重ねていたため、ロボットが移動する階段の幅が事前に聞いていた幅より狭かった。さらに過去の増築のデータが津波でサーバごと流されたため、未だに建屋の正確な図面データは入手できていないという。

また、メンテナンスフリーというよりはメンテナンスがゼロでなければならない。福島第一を探索した後のQuinceは3~10mSV被爆し、Quinceそのものが汚染源となっており、メンテナンスをすると作業員が被爆することになる。このため、現状では一度探索に投入したQuinceは手元に2度と戻すことができないという。

「Quince」のデモの様子

さまざまな災害対策ロボットが展示

テーマゾーンでは、その他にも災害対策ロボットの実機が展示された。千葉大学 大学院工学研究科 野波研究室は災害復興・危険作業支援ロボット「COMET-IV」を展示している。COMET-IVは6本の脚により、車輪やクローラでは入ることができない場所に侵入し、人の代わりに危険な作業を行うことを目的としている。レーザ距離計による障害物回避やインピーダンス制御による不整地歩行や斜面歩行などの歩行制御技術を搭載したもの。また、震災復興作業向けに脚先への作業用エンドエフェクタの装着なども検討されている。

「COMET-IV」

ハイボットおよび東京工業大学理工学研究科 広瀬・福島研究室は水中探索ロボット「Anchor Diver III」を展示している。Anchor Diver IIIは、母船と電源供給ワイヤで繋がった状態で運用するROV(Remotely Operated Vehicle)で、船体下部のハイビジョンカメラと2次元イメージングソナーにより水中捜索を行う。電源供給ワイヤをスラスタの推力のみで常に牽引することによりワイヤが障害物に絡まるリスクを低減している。また、縦長の船体により浮心と重心をずらすことで船体が傾いても復元モーメントの発生により姿勢を一定に保つことができ、姿勢制御用スラスタを統制することなく高い姿勢安定性を実現している。

東日本大震災では宮城県亘理町荒浜港において行方不明者の捜索を行った。

「Anchor Diver III」

ロボットによる高品質イチゴの摘み取り

農業分野ではロボットの導入による高品質化を実現する取り組みも見られた。

宇都宮大学大学院 工学研究科 計測・ロボット工学研究室は、開発中のイチゴ摘みロボットを出展した。画像認識によりイチゴの成熟状況を判別し、自走しながら完熟したイチゴだけを摘み取るというもの。

画像認識については、イチゴを栽培する温室では日当たりが良く照度が変化したり、イチゴの葉の影が生じたりする。このため、正確な赤色の評価に加え、照度変化に対して感度の調節を行う。また、摘み取る際にはイチゴの果皮に触れないようにイチゴの枝を切ると同時にホールドする。イチゴの枝の大きさに合わせてシリコンラバーで枝径を受動的に調節する。果皮に触れずに収穫することで高品質イチゴとして出荷する。

同研究は栃木県産学官コンソーシアム事業による成果であり、実際のイチゴ農場で導入試験を実施しているという。

イチゴ摘みロボット

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