拝啓 鬱陶しい梅雨空が続きますが、皆さんお元気でしょうか? 少し晴れ間が見られるようになったと思えば、いきなり豪雨と熱帯夜……少し前には北海道で雹(ひょう)が降るなど、完全に異常気象ですね。ただでさえ食料自給率の低い日本。天候不順が今年もヤサイに影響するのは必至です。

西向きのベランダと豊富な土で、豊作間違いなしと思っていたのだが…

室内で育てた方が明らかによく成長しているのはナゼ?

我が家のベランダ菜園もご他聞にもれず、5月半ばにプランタに定植したナスは成長が遅く、室内で育てていた苗に追い越されるハメに。気温もさることながら、最大の原因は日照不足です。これを解決するには、蛍光灯やメタルハライドランプが定番ですが、どちらも植物用として販売されている製品は高価だったり、発熱が多く大規模になってしまったりと、気軽に試せないのが難点。最近は値段もこなれた電球型蛍光灯やLED電球が使えれば、電気代も安くて一石二鳥ですが、はたして植物の成長に役立つのでしょうか? どんな光源でも効果があるのかギモンです。

左から電球型蛍光灯とLED電球。節電機運で入手しやすい価格になりました

光を科学する

光は波打ちながら進む性質があり、色合いは波の間隔によって決まります。この波の間隔は波長と呼ばれ、一般的にnm(ナノ・メートル)であらわされます。赤と青では別物に思われるかも知れませんが、成分が異なるわけでは無く、音で例えると、赤は青より「低い」関係になります。また、波長の異なる光を混ぜることで、さまざまな色合いを作り出すことができます。3原色である赤・緑・青を合わせると白色になり、逆に、白色の光にはこれらが含まれていると考えられるので、蛍光灯や白色LEDが使えるのでは? と思った次第です。

色の違いは波長の違い。太陽光には可視光線以外にも赤外線や紫外線が含まれているのはご周知の通り

調べてみると、植物の成長には赤→青の順に効果的で、蛍光灯には両方が含まれるので有効ですが、白色LEDの光には赤は含まれず青が主体とのことで、残念ながら効果に期待が持てません。赤と青に焦点を絞るなら、蛍光灯を使わなくてもそれぞれのLEDが使えそうですね! 地下や建物内で栽培する植物工場でも、LEDを使って太陽光を再現しているぐらいですから、効果も期待が持てそうです。

赤のなかでも660nmが最適といわれていますが、一般的に「赤色LED」として販売されているものは625~630nmがほとんどでした。少々割高でしたが、植物用として紹介されている660nmが入手できたので色合いを比較してみたところ、肉眼では660nmの方がやや濃く黒味がかって見えたものの、デジカメで撮ってみると、ほとんど違いが分かりません……このビミョーな差によって劇的な違いが生じるのでしょうか……? そんなギモンを抱えながらも、入手性とくコストパフォーマンスに優れた一般的な625nm近辺のLEDを用いて、植物育成照明を作ってみることにしました。

一般的な625nm(上段)と660nm(下段)の比較。正直なところ、写真では違いが分かりませんでした……

ハンダ付けは4カ所だけ!

今回は、初めて電子工作にチャレンジする方でもカンタン&確実に作れることをテーマに、部品点数の少なさを優先します。また、原理の説明やウンチクも一切なし! で進めますので、興味を持たれた方は、以下のリストと同じ部品を購入し同じように作ってください。どちらのパーツ屋さんも通販可能ですので、秋葉原に行かなくてもOKです。

■用意するもの(※)

No. 品名 金額 数量 小計
1 放熱基板付3W赤色パワーLED(OSR5XME3C1S) 300 1 300
2 放熱基板付3W青色パワーLED(OSB5XME3C1S) 300 1 300
3 スイッチングアダプター5V3A(GF18-US0530-T) 750 1 750
4 放熱器(LSIクーラー・17F50BL50) 230 2 460
5 固まる放熱用シリコーン(サンハヤト・SCV-22) 920 1 920
6 酸化金属皮膜抵抗・3W・6.2オーム(青・赤・金・金) 30 2 60
合計 2,790
※No.1~3は秋月電子通商、No.4~6は千石電商で購入

主役であるLEDには3W・パワーLEDを使用します。パワーLEDは直視できないほどの光量が得られる反面、放熱器なしで使用すると自分の発熱で壊れてしまうのでご注意を。また、放熱器の取り付けは結構メンドウなので、あらかじめ放熱基板にハンダ付けされたものをチョイスし、基板裏のアルミ面を「固まる放熱用シリコーン」で放熱器に貼り付けることにしました。

放熱基板付きのパワーLED。裏のアルミ面に熱を逃がす仕組みになっている

その名も「固まる放熱用シリコーン」。熱伝導性の良い接着剤と考えてください

放熱器の取り付け方は至ってカンタン。接着剤の要領で基板裏面に薄く伸ばし、ペタッと貼り付けるだけ。貼り終わったら目玉クリップなどではさみ、密着させながら完全に固まるまで24時間放置しておきましょう。

パソコンではヒートシンクと呼ばれる放熱器。少し大きめの50ミリ角を用意した

熱の伝わりを良くするため、シリコーンが固まるまでLEDと放熱器を密着させておこう

固化し終わったら、いよいよハンダ付けに移ります。パワーLEDに抵抗を1つ追加するだけのカンタン仕様なので、慣れた方なら2~3分で終わる作業です。ハンダ付けには、少なくともハンダゴテが必要で、併せてラジオペンチ、ニッパーも揃えると3,000円位でしょうか。欲を言えばテスターも欲しいところです。わざわざ買い揃えるのはちょっと……とおっしゃる方は「はんだづけカフェ」などを利用すると良いかも知れませんね。

上からハンダゴテ、ラジオペンチ、ニッパー。電子工作の必須アイテムだ

抵抗には極性がありませんのでどちら向きに取り付けてもOKですが、LEDはプラス / マイナスが決まっているので、逆にすると点灯しません。基板に印字されている「+」「-」のマークをよく確認してください。

電源には5V(ボルト)・3A(アンペア)のACアダプタを、先端の丸いプラグを切り取って使用します。電源のプラス線→抵抗→LEDのプラス印字→LEDのマイナス印字→電源のマイナス線の順になるよう接続し、→の4カ所をハンダ付けします。赤と青を同時に点灯する際は、パワーLED+抵抗のセットが並列になるよう二股に配線してください。

点灯しない場合は、まずはプラス / マイナスが逆になっていないかをチェックし、その後、きちんとハンダ付けされているかを確認します。溶けたハンダが部品の隙間を埋めるようになっていないと、電気がうまく流れませんので、疑わしい箇所はハンダ付けし直してみてください。

LEDに流れる電流を制限するための抵抗。印刷されている4本のカラーコード(帯)が抵抗値をあらわしている

抵抗を取り付けた上体。左のマイナス側には、目印として余った抵抗のアシを付けておいた

完成した暁にはご覧のように、LEDの大きさから想像できないほどの光量が得られます。発熱を抑えるために2W程度に抑えてみましたが、それでも目がくらむ明るさで、ヤサイもきっと喜んでいることでしょう。個人的にはしばらく「辛味大根」の育成に使ってみたいと思います。効果のほどはまたの機会にでも。

まぶしさのあまり撮影中に目が痛くなりました(本当)。くれぐれも直視しないようご注意を!

もっと光をっ!

「植物」「光」「波長」のキーワードで検索すると膨大な件数がヒットし、赤外線や紫外線も効果がある、高速でON/OFFした方が良いなどの奥深い情報も得られ、まだまだ工夫の余地がありそうです。

写真は、以前作った660nm赤色LEDに赤外線と紫外線を追加したバージョンで、室内での育苗に使用しているものです。LEDが多いので製作の手間は大幅に増えますが、好みの波長を好みの割合で照射できるのが最大の楽しみ。さらなる効果を求める方は、波長や割合を変えながら"オレ的プチ太陽"を目指してください!

4種類のLEDと取り付けた発展型。基板には銀色のテープを貼り、反射光もムダなく使います

ナス in 建築用断熱材(スタイロフォーム)の育苗箱。いっぱい実が生りますように…

プロフィル : 関口寿(せきぐち ひさし)
1967年東京生まれ。2002年ライターとして活動開始。MYCOM BOOK「DOS/V SPECIAL」の「電子工作のススメ」をはじめ、改造PCや電子工作を中心に複数メディアで連載。代表作はMYCOM MOOK「自作PCユーザーのための電子工作入門」