デルは6月22日、7月1日付けで、代表取締役社長がジム・メリット氏から郡信一郎氏に交代するのに伴い、記者説明会を開催した。メリット氏は同社の日本におけるビジネスと社長在職中の成果について、また、郡氏は今後のビジネスの方向性について説明を行った。

7月1日付けで米Dell 公共/ラージ・エンタープライズ事業 グローバル・セールス部門 プレジデントに就任するジム・メリット氏

メリット氏は在職中の成果として、「宮崎カスタマーセンター」、「ソリューションカンパニーへのシフト」、「キャパシティの拡張」を挙げた。「この5年半にわたり、コンシューマー向け製品と企業向け製品の双方においてカスタマーサービスのクオリティを上げることができたが、その原動力となったのが宮崎カスタマーセンター。現在では、650人の社員が宮崎で働いている」と同氏。「日本企業のベンダーに対する期待値は高いが、今ではそれにこたえられている」と、同氏は語った。

また、以前の同社のビジネスはマーケットにおけるシェアに主眼を置いていたが、同氏の手腕により、収益性を重視したビジネスにシフトした。今では、グローバルにおいて、デル日本の収益性はトップクラスだという。同氏は収益性の改善に大きく寄与した分野として、「サーバ」、「ストレージ」、「サービス」を挙げた。

キャパシティの拡張は2つの側面から行われた。1つは、顧客サポートの改善を目的とした拠点の増設だ。現在、同社の拠点は川崎本社のほか、東京・三田の東日本支社、大阪の西日本支社、前出の宮崎カスタマーセンターの4つある。同氏は、拠点が増えたことで、顧客に対するサポートが改善されたのはもちろんだが、社員にとって働き方の選択肢が増えたこともメリットと述べた。

もう1つのキャパシティの拡張は「人材の増強」だ。同社は、技術に特化したスペシャリストの雇用を増やしているという。加えて、社内の人材に対しては、「競争的なプロセス」を適用している。そのプロセスを通じて、郡氏が代表取締役社長に選出されたというわけだ。メリット氏は、郡氏について、「代表取締役社長としてデルを率いるノウハウと統率力があり、デルを次の高みに引き上げてくれる人材」と評した。

7月1日付けでデル 代表取締役社長に就任する郡信一郎氏

郡氏は、初めに「今年3月に東日本大震災が発生して厳しい状況ではあるが、第1四半期は堅調に推移しており、その理由はメリット氏が行ってきた変革の効果が出ているから」と述べた。

続けて、郡氏は同社の2011年の3つの戦略について説明を行った。3つの戦略とは、「イーデル(eDell)」「バリューチェーン」「ソリューション」だ。

イーデルとは、顧客とのインタフェースを強化するためにオンラインにおけるリーダーシップを高めるための施策で、具体例としては、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアの活用がある。バリューチェーンとは、柔軟で効率的な「バリューチェーンの構築」を意味し、「ダイレクト販売の強みを生かしながら強化していく」(郡氏)という。ソリューションは、デルが提唱する「Efficient Enterprise」を実現するためのソリューション強化を指し、「デル設立時にはなかった新たな側面」と、同氏は述べた。

郡氏は今後の強化点として、「デルがソリューションを提供できるベンダーであるという認知度を高めていく」ことを挙げた。「デルが自社ブランドのハードウェアを提供するだけでなく、すぐれた人的リソースを抱えていることをアピールしていきたい」

記者から出た「デルのエンタープライズビジネスにおけるアドバンテージは何か」という質問に対して、郡氏は「オープンなソリューションを提供していること」と答えた。「デルのサーバとストレージは他社製品との相互接続性を備えているほか、管理ツールもマルチベンダー対応だ」

さらに、メリット氏が「デルのエンタープライズビジネスは、中規模企業から大規模企業をターゲットとしている。その理由はこうだ。最初から超大規模企業にターゲットとしたソリューションにはカスタマイズが発生し、それをもっと規模が小さな企業に適用しようとするとスケールダウンしなければならず難しい。中規模・大規模企業をターゲットにしている場合はスケールアップすればよく、スケールダウンよりも簡単」と付け加えた。

また、メリット氏は同社の市場に対する機会について、「エンタープライズ分野、特にサービス分野において大きなチャンスがあると見ている」と説明した。同氏は"デル日本"がグローバルに対するすぐれた分野がストレージであり、「日本では、ストレージ製品の中でもEqualLogicシリーズが強い。また、先日買収したCompellent Technologiesはファイバ・チャネルベースの製品を抱えているが、すでに日本の顧客から問い合わせを受けている 」とした。

同社はここ数年、買収を積極的に行っているが、その中にストレージベンダーも多数含まれている。その結果、製品ラインアップも着々と広がっており、同社だけでローエンドからハイエンドまで幅広いレンジの製品を提供が可能になりつつある。郡氏の社長就任によって、同社のビジネスがどう加速していくのか期待したい。

がっちりと握手をするジム・メリット氏と郡信一郎氏